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チートスレイヤーズ!!  作者: 堀井ほうり
鈴村龍之介の思考/不幸/虚構
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第22話「俺もうやめるわ。」

 

 寅宗の姿が完全に見えなくなった頃、いつもと同じようにまだらの渦が現れた。

 ジャッキーではなく寅宗の力で連れてこられた異世界だったが、たぶん、待機用異世界「バーガーランド」に向かうんだろう。


 俺もアリスも無言だ。寅宗に与えられた傷は触れる間もなく、最初から存在しなかったかのように癒えていく。



 やっほ~! お疲れ様だね~。


「バーガーランド」のジャクバ本店に呼び出された俺達に、ジャッキーは普段通りの言葉を掛けてきた。


「他人事みたいに言うなよ……。お前、何も知らなかったのか?」

 俺の身体は、寒気もないのに震えていた。恐怖か、怒りか、寂しさか……わからないけど、いつもと変わらないジャッキーの態度を見て、問わずにはいられなかった。

「知ってたんだろ、寅宗のこと! この前の『 ブラックリッパー』の時から!」

 ジャッキーは数秒、沈黙してから答えた。


 うーん、大体当たりだね。ちょっとだけハズレかな~。


 俺の向かいに座るアリスは、フライドポテトに手をつけることもなくうつむいたままだ。ジャッキーの話を聞いているのかどうかもわからない。


「ちょっと、ハズレ?」

 どこがだよ、と訊ねる俺にジャッキーはケラケラと笑った。


 もっとも~っと、前からだよ~。君達が『ブラックリッパー』を訪れるよりもずっと前から、ボクは灰崎寅宗のことを知ってました~!


 ぞっとして、俺は自分の両腕を抱きしめるようにつかんだ。

 なんだ、今の台詞。それじゃあ、俺が想像していたよりもずっと前から、寅宗とのことは仕組まれていたのか……?


 うーん、灰崎寅宗以外にも、色々あるけどね~。

 まぁ、これからも気にせずどんどん殺っちゃってよ!

 願いならちゃーんと、叶えてあげるからさ~。

 けらけらけら!


「……くんは、どこ行ったの?」

 ジャッキーの不愉快な笑い声の後から、アリスが振り絞るように声を出した。

「灰崎くんは、どこへ行ったの?」

 うつむいたまま、スカートの裾をぎゅっと握っている。

 ふと、アリスが髪を結んでいないことに気づいた。結ぶ気力がなかったのか、それとも、戦いは終わってない、ってことか……。


 ん~? 気になる? 気になっちゃう~?


 意地の悪い思念体は、ピエロのぬいぐるみの姿でアリスの顔を覗き込む。


 教えてあげませーん! って言うか、知らねーし! いなくなった奴のことなんて気にしてられないよ~。

 ほらほら、「来るもの拒まず、去るもの追わず」って言うじゃん! いいことわざだよね~!


「うるせぇ!」

 俺は怒鳴るようにしてジャッキーの言葉を止めた。

 小さなぬいぐるみ、壊すのは簡単だ。けれど、どうせこいつはまた何かを容れ物にして現れる。思念体そのもの、意識そのものを倒さないと話は終わらない。


 けど、もういい。もう、終わりにしよう。これ以上、誰かを傷つける前に。


「すっげースキル貰っておいて悪いけどよ、俺もうやめるわ。『チートスレイヤーズ』」

「あ、あたしも……」

 やめます、とアリスがびくびくした声音で続いた。

 え~!? と、ジャッキーは楽しそうに、驚いた振りをした。


 やめちゃうの~? いいよ、いいよ、好きにしなよ~。

 あ、じゃあ最後に……残ってたコレ返すね。

 テケテテーン! 「ざいあくかん~!」


「うわ、ぁ……」

「きゃっ、あ、あぁ……」

 今まで自分達が殺めてきたチートスキル所有者達の悲鳴や呪いの言葉が、次々に浮かんで来る。

 世界を救おうとした勇者、村を守ろうとした魔術師、独りぼっちの魔物……。悪い奴ばかりじゃなかった。明らかに英雄と呼ばれるべき奴だっていた。

 それなのに、俺達は自分達の願いを叶えるためだけに、チートだからと言うだけの理由で殺し続けてきた……。


「ごめんなさい……」

「ごめん、ごめんなさい……」

 頭を抱えたまま、俺達は渦に包まれて現実世界へと帰されていく。


 けらけらけら、けらけらけら~!


 ジャッキーの笑い声がいつまでも響いていた。まるで、これからまた何かが起こるのを知っているかのように。

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