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勇者は資格で取る時代  作者: ひいらぎ
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勇者たちのほのぼのライフ

第一章~初めての勇者~


 勇者。それはゲーム、特にRPGでは重要な役割で、魔王を倒したりすることが主な仕事だったりする。しかし、それはあくまでもゲームの中での話であり、僕の住むこの世界ではその何もかもが違っていた。もちろん魔王はいるが、そいつは悪い奴なんかではなく、同じくこの世界にいる大天使のおかげでこの世界の力のバランスがとれている。だが、そのバランスをとるためにどうしても魔王から出てしまう謎の粒子によって発生してしまう魔物(モンスターとも呼ばれる)が原因で大きな国も崩壊、小さな国になってバラバラになってしまった。その中でも一番大きい国『メキア』、この国に僕は住んでいる。

 そんなメキアにあるのが勇者団本部。この時代、勇者になるには資格を取る必要がった。勇者団本部は工業、政治などなど色々な点で世界のトップに立っている。そんなわけで僕、フーリ・ルベルトは今日、勇者団本部に所属するための第一歩として、資格をとる最終試験に行く。一週間前にやった筆記試験は見事合格できた。なので今回は実技試験である。

 そんなわけで本部まで来た。周りにある高層ビルも真っ青なほど高い建物で、中はどこがどこなのか覚えられるか心配なほど広く、非常に神秘的だった。そんな広大な建物の中、僕が案内されたのは地下一階にある、学校の校庭ほどあるんじゃないかと思うほ広いオフィスのようなところであった。冷静になってみれば学校の校庭ほどあるわけないのだが、それほど広いのだ。

 そんな広い部屋の隅にズラリと並んだ椅子に腰かけるように言われた。窓際にある長いテーブルに座っているのは二人の偉そうなおじさんとリーダー代理と書いてる板のところに座っている二十歳ほどの若く細い人が座っている。ちなみにリーダーとは、その名のとおり勇者団本部のトップに立つ人で、政治的な権力も政治家よりも持っているほどの立場の人だ。きっと代理なのはそれほどの立場ゆえに忙しいのだろうと、まだその時はそう思っていた。

試験が始まった。厳密にいえば試験前の開会式みたいなものだ。そこで初めて知ったが、横にいる二人は元勇者で、今は勇者の指揮役をしているらしい。

 二人の次はリーダー代理の人の発言だ。

 「初めまして。私はリーダーの側近である軍曹であり、代理であるシューレ・ウィルキットと申します。」

 ちなみに軍曹とは、いえばリーダーと一日を共にして補助をする役割である。軍曹の話を聞いていて、リーダーの話になった時、僕らは耳を疑った。

 「そのリーダーですが、今日はラーメンと寿司を食べに行くので今回は不在となっております。」

 その言葉に僕、いや、僕たちは仰天した。なんだよ!ラーメンと寿司って‼たしかにラーメンと寿司が美味いのは認めるが、勇者の資格を取る最終試験とも言える実技試験よりもラーメンと寿司をとるなんて...。

 そのことを告げた軍曹は小さくため息をつくとその後も発言を続けた。

 一通り今回の試験の進め方がわかった。いま全員の前にある魔物を模したロボットの首、腹、足などの部位にあるセンサーを武器で刺激すると、その部分が本当に負傷したかのような動きになるという。

 そうして試験が始まった。まだラーメンと寿司のことで動揺はしているが、目の前の試験のことの緊張のほうが勝っていた。

 試験開始から一時間ほどたったころ、あと二組で僕の番だった。それと、ほかの人の武器を見ていてきずいたのだが、ほとんどが叩き斬るのが目的である剣を使っていた。対して僕は、肉を削ぐことが目的となっている刃渡り四十センチほどの双剣だった。もちろん、剣以外でも杖だったり斧だったりと色々とあるが、双剣使いは僕なようである。

 さぁ、ついに次の番である、心臓がバクバクしすぎて胸の辺りが痛い、手汗も出ていた。このときはまだ、この手汗がフーリを救うことになるなんて思いもしなかっただろう。

 「試験番号64、フーリ・アルベルトさんどうぞ。」

 きたぁぁぁぁぁ‼

 緊張でがちがちになった体を動かして指定された場所へ向かう。


 ◇


 若者たちが頑張っている間、リーダーこと、ルーバ・リグは町中をブラブラしていた。町ゆく人は決して思わないようだろう。青がかって遊んだ髪に、チャラチャラした格好の私服をきた人をリーダだとは思わないだろう。町を歩きながらルーバは先に食べるラーメンのことで頭がいっぱいだった。いつもは味噌ラーメンなのだが、たまには醤油や塩もいいだろうと、唾液を口いっぱいにしながら町を歩いていた。

 一時間後、今のルーバは非常に上機嫌であった。気分を変えて醤油にしたのが正解だった。さらに、餃子も付けたのも正解だった。だが、いまのルーバには次の獲物である寿司のことが頭の中を巡っていた。初めに食べるのはいつもどうり光物にするべきか、それとも、マグロにするのか。そんな問題は今のルーバにとって海の底からドックフード一粒を探すくらい難しいのであった。

 答えが出ないまま寿司屋についた。行きつけの回転ずしで、いつもどうりカウンター席に座った。悩み続けた末、ルーバが出した結論は、いつもどうり光物から食べることであった。

 寿司を頼もうとした時、店の後ろから叫び声が聞こえた。その大柄な男は大声でこう言った。 

 「お前ら!命が惜しかったら伏せろ!勇者団に言ったら即座に殺してやる‼」

 この時、店にいたほとんどの人が恐怖に陥り、床に伏せた。だが、こんな状況でも微動だにしない男が一人いた。そう、ルーバだ。今のルーバにとってこの男は自分の優雅な時間を台無しにした奴にしか見えないからだ。

 「おい、そこの青髪!さっさと伏せろ‼」

 「...めんどくさ。」

 そしてゆっくりと立つと、懐から鞭を取り出した。この鞭は、あくまでも護身用でしかないのだが、まさかこの鞭を人間に使うことになるとは自分自身でも驚いていた。

 (まだ誰も傷ついていないからこっちもあまり強くはやれないな...)

 基本的にルーバは力の加減を知らなかった。ただの護身用でしかないはずの鞭で十メートルほどのドラゴンを五体も倒しているのだから、ルーバに力加減という概念は存在にないといっても過言ではないのだ。

 相手に死んでほしくはないので、ルーバは防御の魔法を展開させた。防御魔法は、自分に使うだけでなく、誰にでもかけることができる。なので、今回は犯人に魔法をかけた。多分こうまでしても相手は大ダメージを受けることになるだろう。

 「なんなんだお前は‼ええい、死ねい‼‼」

 牛のように突進してくる犯人はいい的だった。まずは、とりあえず回し蹴り。ただの回し蹴りなのに犯人は吹っ飛ばされる。そして、手に持っていた鞭を勢いよく床にぶつけ、『ピシィ』という音で完全に犯人は腰を抜かしていた。薄い笑顔を犯人に向け、鞭を振る準備をする。ついでに、犯人のHPを確認したところ、まだ三分の二ほど残っていた。自分の回し蹴りをまともにくらってこれしかダメージを受けないとは、そこはルーバも感心した。だが、正直早く寿司が食べたかったので、犯人のところまで歩いていき「さようなら」とつぶやいた。

 その後は簡単だった。左腕で振った鞭は高い音をあげて犯人の腹部に直撃する。犯人は店の窓まで飛ばされて、強化ガラスおも突き破った。ちょうど時を同じくして、勇者団から勇者が車で駆けつけていた。車から降りた勇者は驚愕の表情をしていた。

 「な...なんですかこれ?」

 そう思うのも当然だろう、強盗がいると聞いて駆けつければもうぐったりと店の外で倒れているのだから。よく見ると、HPのゲージはもう赤くなっていて、ひん死状態だった。驚きを隠せないまま立ち尽くしていると、中から人が出てきた。

 「大丈夫で...!?」

はじめは、被害者の若者が出てきただけだと思っていたが、その髪の毛と綺麗な顔立ちには見覚えがあった。

 「リ、リーダー!?」

 ルーバは思った、寿司は食べられなかったが、今日も町は平和だと。そして、リーダーは知らなかった、この後軍曹に膨大な量の書類を読まされることを..。


 ◇ 


 指定された場所から約五メートルほど離れは所に十体のロボットが堂々と立っていた。

 「それでは、試験を開始します。」

 軍曹がボタンを押すと、ロボットが不規則な動きを始めた。

 その中には床を這うものや、立って歩くものなど、様々な魔物を想定された動きをしていた。

 さぁ...、はじまった...。

 開始して五分。十分ほどの試験の中で半分たった今、僕が倒せたのはたったの三体だった。

 この試験は別にすべてのものを倒さなくてもいいのだが、その技術や、スピードなども重視されている。 

 だが、僕にはスピードが無かった。技術は一撃で倒すための首筋にあてる攻撃などを見事披露できたのだが、状況は絶望的。

 「...くっそ。」

 そうつぶやくと、もうどうにでもなれと言うように双剣を適当に振った。すると、奇跡が起きた。手汗でヌルヌルになっていた手から双剣が抜けていったのだ。

 (終わったな...。)

 そう思ったまさにその時、手から放たれた双剣はもの凄いスピードで見事なほどに一番奥にいたロボに当たった。ことはそれだけにとどまらず、あたったことで跳ね返った双剣がその前にいたロボの腹部に直撃した。

 まさかの事態に審査員のおじさん二人だけでなく、自分自身も驚いている。...えっ!?マジかよ‼と心の中でとりあえず喜び、その後前を見る。

 横たわっているのは五体のロボ。足を負傷したような動きをした二体のロボ。

 話によれば、五体以上倒すか、五体以上と負傷者を出せればこれは数の面では十分だった。その後チラっと審査員を見ると、こんなことは初めてなのか、目を丸くしたおじさん二人。ひょとすると、リーダーがラーメンと寿司を食べに行ったと聞いたときよりも驚いているかもしてない。

 そして軍曹は、前まで座禅しているときのような目をしていたが、今は、しっかり目を開けて吸い込まれそうなほど真っ黒な瞳がこちらを見ている。時間を見ると、残り三十秒だった。(もう少しやるか...)残りの三十秒は踊るように戦った。

 試験の最後の番。今の自分には早く帰りたいという言葉が呪文のように脳内を巡っていた。さすがに眠気は襲ってこなかったが、非常に退屈である。

 「試験番号100。マルセル・サイガさんどうぞ。」

 その人は紺色のローブを着ていた。武器らしきものを持っていない。格闘家という可能性もあるが、ローブは戦ううえで邪魔になる。指定された場所に立った時に手のひらを確認したが、魔法陣らしきものも無かった。———こいつは何者だ?———

 大体の人がそう思っていたらしい。

 軍曹から試験開始の合図があった後は早かった。例のごとくロボットが不規則に動き出すと、彼は左腕を前に出し、人差し指をロボに向けると、その指が真っ赤に光り輝いた。その後、凄まじいほどの音と熱風が容赦なく襲い掛かった来た。目が開けられるようになった後、ゆっくりと目を開けると、そこには無残にも倒れたロボ。それだけではなく、美しい白だったはずのロボは、真っ黒ですすを被ったような無残な姿になっていた。よく考えてみれば、大剣を上から振られても傷がつくだけだったはずのロボが表面が少し溶けているのだ。

 恐ろしいの一言だ。

 試験が始まって約三時間、終わりと始まりの言葉を入れてだが、思っていたより早く終わった。軍曹によれば、結果は三日後に家に届くという。正直、三日と聞いたときは、(はやっっっ!?)と思ってしまった。

 終わった。疲れた。全身がだるい。早く帰りたいと、ぶつぶつ呟きながら家へとむかった。

 フーリの両親は二人とも勇者で、フーリが生まれてすぐに出現したベヒモスの群れによって亡くなっていた。なので今は、元勇者であり、武器屋を経営しているレヴェルの家に住ませてもらっている。

 「お、おっかえり~。」

 と、店の奥からトコトコ出てきたのは、背は180センチほどある高身長で、少し品のある黒髪に、整った顔、黒縁のメガネ、そして紺色の服を着ている。いつものレヴェルだった。

 「ちゃんと俺が言ったとおりにやったか?」

 ちゃんとはやっていないが、取りあえずうんとうなずく。だが、筆記試験に一発合格できたのはレヴェルのおかげである。

 レヴェルは、見た目的には普通の二十代前半なのだが、勇者現役の時に一つの伝説をつくっていた。

 それは、年に何回かある百体程のモンスターが攻めてくることがある。普段は種族を超えると全く協調性のない奴らなのだが、この時だけは奴らも力を合わせてくるので、国が総力を挙げて対処するのだが、それをレヴェルはたった一人で、しかも左手でネットを使いニュースを見たり、SNSでつぶやいたりしながら百体すべての魔物を倒したのだ。

 そして、レヴェルには秘密が色々ある。そのうちの一つが、メガネだった。このメガネは伊達眼鏡で、僕がかけても度が入っている訳でもないのだが、レヴェルはこれをかけていないと全く見えないらしい。

 色々な伝説や不思議があるレヴェルの家は代々勇者団本部に所属していたらしいのだが、レヴェルはまだ二十四歳という若さで勇者団本部を引退してしまった。もちろん、本部を引退しただけであって、勇者の資格はまだもっているため、魔物を狩るための武器を購入したり、魔物のドロップアイテムを本部の研究施設に売ったりすることもまだできる。まぁ、今のレヴェルは武器屋だから武器は買う必要が無いけどね。

 はぁ、早く三日目にならないかな。と思いながらベッドに入った。

次の話はなるべく早く出せるように頑張ってみたいと思いまぁす。

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