ヒカリ
―ヒカリ―
薄暗く、無機質な世界でアンドロイドが2体、背中合わせで佇んでいる。
うっすらと見える2体のアンドロイドのシルエット以外は、何もない静かな静かな世界。
アンドロイドたちは少し下を向いて、瞳を閉じて。
ふと片方が、ゆっくりとまぶたを上げる。
そして前を見据えると、指揮者が指揮棒を構えるようにすっと腕を上げた。
―――――カチン。
何かの音が響いた瞬間、彼らの足元を始点に円を描くようにヒカリがざぁっと拡がっていく。
もう片方もまぶたをあげると、空を仰いで両腕を伸ばし、手のひらを精一杯広げてからぎゅっと何もない空中を掴む仕草を見せる。
今度は空からヒカリが射し、彼らを包み込むように照らし出した。
僅かに指揮棒を振る動作をすると、無機質だった世界に一気に色が戻っていく。
彼らは一瞬だけお互いを振り返り、相互視を取ると無表情だったその顔に笑顔が宿る。
アンドロイドが、人間になった瞬間だった。
再び互いに背中を預け、ゆっくりと同時に片腕を空に向かって伸ばす。
ひらり舞い降りる無数の小さな影。
2人はもう片腕も伸ばしてその小さな影を両手で包み込むように受けると、すっと腕を胸元に引き寄せて大切なものを優しく抱き締めるかのように抱え込んだ。
もう一度、彼らはまぶたを伏せる。
大切なものに祈りを捧げるが如く、静かに。
舞い降りる影は、―――――雪。
真っ白で冷たい、だが柔らかくあたたかみを帯びた雪。
やがて雪は雨へと変わり、雨は無数のヒカリの粒へと姿を変えた。
ヒカリの粒は少しずつ大きくなると、彼らの周りをキラキラと照らしていき、いつしか彼らの足元にはヒカリのステージが出来上がっていた。
2人は雪を包み込んだ手のひらはそのままに、両腕を前へと突き出す。
パァン、と弾けるように手のひらの中身を解放してやると、そこからは強い光が放たれた。
降り注ぐヒカリのシャワーと足元から照らされる柔らかなヒカリ、そして手のひらから放たれたヒカリはすべて彼らを守るかのように包み込んで、優しい球体を創り上げた。
色を取り戻した世界は、息づいて、遠くに見える橙色に輝く地平線に夕日が沈んでいくのが見える。
彼らが空を仰ぐと、目を細めたような三日月と強く輝く一番星。
2人は一番星を指してからぎゅっと手のひらを握り締めるとゆっくり、ゆっくりと腕を降ろす。
背中を預け、最後にお互いの手のひらを重ねて繋ぎ合うと少し下を向いて瞳を伏せた。
ヒカリは少しずつ弱まり、やがて空に輝く三日月と無数の星を残して彼らは闇に呑まれていく。
カチン。
再度小さな音がして、世界は無機質に戻った。
―――――彼らも。
もう、音もヒカリもない世界。
暗い、真っ暗な闇へとすべては呑み込まれた―――――。
20160411
こんにちは or こんばんは。
あ、おはようございますかも??
そんなことはどうでもいいんですが(笑)お久しぶりです。
さくらちゃんにいつもと文章違うと言われて少し凹んだ作品ですがUPさせていただきます。
例の如くWINGSの曲のPVっぽくしようと狙ったんですが、文章が固い。
すみません、修行不足(´;ω;`)
頑張ります…有難うございました~。