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第5話

『長い間待たせてしまったがひとまずは今この時間をもって名前の提出を打ち切らせてもらう。

まだ、名前を出していない者で気が変わったら歓迎しよう。

ショッピングモール内にある電子ロック扉の脇にあるインターホンを押せばここと繋がる。


さて、名前を書いた者はひとまず私の支持に従うと判断して話を進める。

まず、君達を4つのグループに別れてもらう。

ショッピングモール内の各地にあるモニターにグループ分けを表示する。


東西南北と名前が書いてあると思うが、自分の名前が該当する方角のエリアの1階にある室内広場に向かってくれ。

もし、家族・友人・恋人・知人などと別エリアになったとしても心配しないでほしい。

このグループ分けは名前を書いた者の顔を確認するために1箇所に集めたいが、この人数を1箇所にまとめられる空間がこのショッピングモールにないので便宜上のグループ分けだ。

確認が終わり次第すぐに合流できる。

一瞬でも離れたくないみたいな輩もいるかもしれんが、あまり渋るようなら私の協力者が何をするかわからないし、私にはそれを止められない。


では、よろしく頼む』


これが今朝に放送されたスピーカーの内容だ。

実際にショッピングモール内に各所に設置してあるモニターには名前と方角が表示されていた。


ジャックはその表示に従い西エリアの1階広場にやってきている。

マイアとソフィはここにはいない。あの二人は東エリアの所に名前があったのだ。

もちろん、ジャックは最初は別行動を嫌ったが、近くで文句を喚いていたカップルがスピーカーのいう協力者とやらに撃ち殺されるのを目の当たりにしてすぐに合流できると自分に言い聞かせて渋々と行動したのだ。


西エリアの広場には大量の人がおり、これで四分の一となるとこのショッピングモールにどれだけの人数を抱えているかがわかる。

そんなことをぼんやりと考えたり、マイアとソフィの身を案じたりして時間を潰していると再びスピーカーの声がショッピングモールに鳴り響く。


『さて、名前を書いた者は全員が移動したと信じよう。

顔の確認といったが、そんな面倒くさいことはしない。

気付いてないと思うが、ついさっき東西南北中央全てのエリア同士を繋ぐ道を封鎖した』


あまりにも自然に伝えられたその事実に人々は言葉の内容を理解するまで時間がかかった。

だが、すぐに伝えられた事の重大さに気が付き集まった群衆が怒声を上げた。


「はぁ?」


「おい、どういうことだよ!ふざけんな!」


「家族が別エリアにいるんだぞ!すぐに会えるって話じゃなかったのか!」


「ほら、やっぱりだ!信用ならないと思ってたんだよ!」


「くたばれ、ペテン師が!」


人々は立ち上がり見境無く怒鳴り散らす。ジャックもその中の一人だ。

このまま放っておけば群衆は暴徒と化して封鎖したという道を力任せで開いてしまうだろう。

だが、広場の数ヶ所から銃声が響き渡り、騒がしかった群衆がピタリと静かになる。


「ピーチクパーチクうるさいぞ!有り難い言葉の真っ最中だろうが!」


銃声がしたということは銃が存在し、その引き金を引いた人物も存在するということだ。

銃声の発生源でもある幾人の人物の中から代表して一人の女が静かになった群衆に言い放った。

女は清楚という雰囲気でありながらその口から出た言葉は外見からは連想できないものだった。


「あ、あの女。西エリアの食料を取り仕切ってた女だ」


ジャックの近くにいた奴が呟く声がジャックの耳まで聞こえてきた。

どうやら、筋金入りの狂信者のようだ。

そんな、女の発言で静まり返った群衆の中から一人の男がおもむろに立ち上がり、周りの制止の声も聞かずに女の方に向かって行った。


「なぁ、お姉さん。

威勢のいいのは結構だが、そちらさんは銃持ちとはいえたったの数人だ。

この人数全員をどうにかできると思ってるの?」


銃持ちの女は対して気にした様子を見せずに持っていた銃を近づいてくる男に向けると、男の足はピタリと止まる。


「そんなこと思ってないわよ。

でも、それはあなた達が私に捨て身で向かって来た時の話でしょ?

勝ち目はないけど先頭にいる数人は確実に仕留める。

死ぬのは怖いから誰も来ない。

もし、犠牲覚悟に向かって来るような人間ばかりなら銃乱射事件なんて直ぐに解決するでしょうね」


「わ、わかってる!それはわかってる!

俺が言いたいのは隙を見て逃げ出した奴がいるかもしれないってことだ!」


「ふふ、ご心配どうも。

でも、そんなことをしても無駄。各エリアを分断した防火シャッターはテロ対策も兼ねてかなり頑丈な物よ。

それに、私達の仲間が各エリアの境界線を巡回してる」


「…巡回?おいおい、こうなるって知ってたみたいだな?」


「その通り、知ってたわよ。

今朝の放送の最初の件。

あれはレジスタンスの勧誘じゃなくて私達にインターホンの存在を知らせるため」


「チッ、こそこそと動いてたってことか」


「ふふ。でも、勘違いしないでよ。

あの方はここに楽園を築くためにやってるのよ。

最初は強引な手を使うから反感を買うかもしれないっておっしゃっていたわ。

あぁ、自ら憎まれ役を演じるなんて素晴らしいじゃない」


女が頬に手を当てて照れたように頬を赤らめさせて、体をもじもじさせながら言った。

一見、恋する乙女に見えるが恋する相手は顔も知らない教祖様だ。

さすがの男もこれには奇妙な物を見るかのように顔を引きつらせた。


『各エリア落ち着いたようだな。

騒がしかったようだが、私は音は拾えないので、君達が何を言ってるかわからないのだよ。

何か直接言いたいことがあるならばインターホンを使ってくれ』


「あぁ、来た!来た!来た!さあ、私を導いて!」


スピーカーから再び声が響くと、興奮したように膝に足を付き、手を空にかざしながら女が叫ぶ。

これには女の仲間であるはずの他の銃持ちも苦笑いを浮かべる。


『家族と別れて憤慨してる者もいるようだが、両者が望むなら面会の場を設けることもできる。

それと、何度も言ったか私は支配したいわけではない。

いずれ、君達も分かってくれると信じている。


さて、広場に設置してある大型モニターを見てくれ』


ジャックを始めとした西エリア広場にいる人々が大型モニターに目を向けると、モニターにはA.B.C…とアルファベットが縦に並んでおりアルファベット横には人の名前が書かれている。

1つのアルファベットに対して10人程の名前が並んでおり、この10人が恐らく1つのチームなのだろう。


『自分の名前がどのアルファベットにあるかと、同じアルファベットの名前も確認しておくように。


基本的に家族・友人等は分けるようにしたが、15歳以下の子供に関しては人数にカウントせず親がいる場合は親の名前の所に入る。

両親が共に健在の場合は母親を優先させてもらった。

両親が共に亡くなってた場合は仕方ないので、適当なチームに組み込むことにした。


私はここを楽園にするといったが、現実というのは悲しい物で、働き手が必要だ。

そこで、このチームだ。


食材管理班・食材チェック班・調理班・食材開発班・武器管理班・武器チェック班・ボディチェック班・粛清班・技術班・見張り班。

これらを各エリアに1つづつ、見張り班のみ3つ必要となる。

各班の説明は後ほどするが、一度担当したチームがずっとその班を担当し続けるわけではない。

1週間ごとに次のチームに移るようにしようと考えている。


例えばAチームが食材管理班、Bチームが食材チェック班、Cチームが調理班を担当したとしよう。

そしたら、次の週はBチームが食材管理班、Cチームが食材チェック班、Dチームが調理班となる。

Aチームはそのエリアの一番大きなアルファベットが担当した班が回ってくる。

班の数よりチームの数の方が多いと思うが、担当がない班は休みだ。ショッピングモール内のテレビでゲームでもしててくれ。


それと、技術班だけは例外でこの中に組み込まれない。

職業に依存する仕事を頼む予定だ。


班の説明の前に1つ大切な事を伝える。このチームは連帯責任だ。

チーム内の誰かがこの楽園を乱すような行いをしたら、チーム全員を粛清する。

ただ、チーム内の反逆行為を教えてくれればその者だけは粛清対象外とする。

粛清などと物騒に言ってるが、皆が平和に暮らしてくれれば何も問題はない。


改めて言おう。

皆の協力を期待している』


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