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第41話

「あぁー、マジかよ。何でよりにもよって俺が粛清班の時なんだよ、ちくしょう」


「やだなぁ…粛清ってことは人殺すんだろ?誰やる?」


「誰やるってそんな気楽に。もっと緊張感とか持てよ」


南エリア粛清班は放送が流れ、仕方なく武器庫に重い足取りを動かし、その道中で何度もため息を吐き、辺りからは愚痴や不平不満がこぼれ続ける。

そんな暗い雰囲気を漂わせる粛清班の耳に唐突に流れたスピーカーの放送が聞こえてきた。


『しゅ、粛清班!南エリア粛清班!絶対に武器庫には近づくな!

そして、武器庫周辺を封鎖しろ!誰も近づけるな!』


いくら文句を言ったところで変わらない、そう思っていた現実があっさりと覆り、粛清班はその場にキョトンと立ち呆けてしまう。


『何をバカみたいに突っ立っている!?とっとと道を塞げ!』


そんな粛清班にスピーカーが苛立った声をショッピングモール中に響かせる。

どうやらスピーカーは今までにない程に冷静さを欠いているようで、ショッピングモール中に流れる放送で堂々と苛立った声を響かせていた。


「おい。とりあえず言う通りにしよう」


「………わかった。俺はあっちを見張る」


「見張るって言ってもどうすんだよ?誰か来たら?」


「そりゃ封鎖しろって言われてんだ。通さなきゃいいだろ」


「通さなきゃいいって具体的には?スピーカーは粛清班も武器庫に近づくなって言ってた。丸腰で何ができる?」


「丸腰って向こうも同じだろ」


「その向こうが何人いるかもわからないんだぞ」


『何をくっちゃべっている、早くしろ!』


「………スピーカーが怒ってる。とりあえず、手分けして封鎖しよう。

もし、何か来たら各自の判断で。危ないと思ったらすぐ逃げる。

それでいいか?」


その言葉に異議を唱える者はおらず、こくりと頷いてから再びどやされる前に動き始める。

途中で武器庫の前を通ろうとしてスピーカーがヒステリックに叫ぶなんてこともあったが、その間は特に問題が起きることなく持ち場につくことができた。


そして、即興で決めた各自の持ち場にバラけた粛清班はそれぞれ武器庫へ続く道に誰か来るかを見張りにつく。

スピーカーの様子がおかしいことから何か良からぬ事が起きたとことを察し、粛清班はおっかなびっくりといった様子で見張りについていた。

もしかしたらスピーカーをあんな状態にした何者かが襲ってくるかと思うと湧き上がる恐怖を止めることはできない。


だが、大方の予想を裏切り、いくら待っても誰一人として武器庫に近づこうとする者は現れなかった。


















































『なんだ、しつこいな。今は緊急事態なんだ。

まさか、くだらない要件じゃないだろうな?』


西エリアの某所にあるインターホンからしつこく呼び出した末にようやくスピーカーが反応を示した。

先程のショッピングモール中に響かせた怒声と比べると、かなり落ち着きを取り戻しているが、それでも苛立ちを言葉の節々から感じる。


「察するに緊急事態ってのは南エリアの武器庫が占拠されたというところでしょう?」


『………何故、そう思う?』


「最初に放送で南エリアにいるデニスっていう男の粛清が流れたが、その後すぐに武器庫に粛清班も含めて武器庫に誰も近づくなと命令した。

武器庫に誰も近づけたくない状況といえば、武器があんたの管理下から外れた状況」


『つまり、その状況は武器庫が占拠された状況というわけか。まぁ、ここでなんと言ったところで信じてくれないだろうし正直に言おう。

正解だ。確かに南エリアの武器庫は占拠された。

だが、それが何だ?君には関係のない話だろ』


「いや、関係ある。正確には関わろうと思う」


『どういう意味だ?』


「今回の件、西エリア粛清班に任せてもらえませんか?」


『ほぅ、それはありがたい。だが、君が言った通り南エリアの武器庫は占拠されてるわけだ。

つまり、今の南エリアは武装し放題、そんな状態で1チームでなんとかなると?』


「大丈夫です。俺の考えが正しければ敵の数はそう多くない。

実際に武器庫が占拠されてから事態は動いてない。違いますか?」


『………違わないな』


「タイミングから考えてデニスと武器庫を占拠した犯人はまず間違いなく共犯だろう。なら、何が目的か?

もし、デニスに充分な仲間がいれば武器庫を占拠したらすぐに武装して南エリア全体も占拠すればいいだけだ。こんな回りくどいことする必要ない。

だが、なぜこんな方法にしたのか。それは、デニスに仲間がさほど多くないからだ。


デニスはまず自分が粛清対象になることにより、粛清班を動かした。そして、次にデニスの仲間が武器庫を占拠する。

するとあんたは武器庫に近づく粛清班の中に敵がいることを危惧し、焦って粛清班を止めようとする。


それが、デニスの目的。放送はショッピングモール中に響き、その放送であんたが醜態を晒せば自然とあんたの信頼度が落ちる。

デニスはそこに付け込んで南エリアの人間を扇動するつもりなんだよ。扇動して動いた者には武器庫の武器を渡し、南エリアを占拠する。

デニスのシナリオはこんな所だろう。


なら、対策は簡単だ。あんたが素早い対応で武器庫を取り返せばいい。

その役目を西エリア粛清班に任せてほしいってわけ。


デニスに何人の仲間がいるかは知らないが、武器庫を占拠している人間さえ粛清できればデニスの作戦は破綻する。

それなら、1チームだけでも何ら問題ない」


『………なるほど。確かに、それなら色々と説明がつく』


「だけど、1つだけ条件。南エリアにいる家族に会わせてくれ。他の粛清班はこれが俺の提案ではなくあんたの命令ってことにすれば黙って従うだろう。


それで、どうする?今この瞬間もデニスは扇動をしているはずだ。決断は早い方がいい。

もし、俺がデニスと繋がってることを恐れてるなら安心してほしい。俺は牧場作戦には参加していない」


『………わかった。こちらとしても悪くない話だ』


「ありがとう。じゃあ、西エリア粛清班の出動を命令してくれ」


『最後に1つだけ。名前はなんて言うんだ?』


「………チャック・ギネス、それが俺の名前だ」


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