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メアリーの恋4

作者: WAIai
掲載日:2026/09/26

「…ふう」

大広間のソファに横たわり、メアリーは息を吐いた。

今日は朝からいい天気で、金色の光が窓を通して差し込んでき、メアリーの元に届く。

まるて癒してくれているような温もりに、メアリーは光を掴まえようと手を伸ばす。

「ーメアリー様?」

メイドのジュリーが側に控えており、声をかけてきた。

心配そうな、不安そうな表情の彼女。

申し訳ないと思いつつ、メアリーは無理に笑ってみせる。

「大丈夫よ。私はいつも通りですわ」

強がって言ったのがまずかったらしく、ジュリーが痛々しそうな眼差しを向けてくる。

そんなに心配しなくてもいいのにと思いつつ、ジュリーの優しさがありがたかった。

ー…私、自分でもよく分からないのよね。

頭に浮かぶのは、ダニエルの姿のみ。

どうして彼に固執するのか、分からなかった。

ーこれは何? 胸が苦しくて、痛くて、悲しくて…。

伸ばした手を胸に当てると、ケントがやって来る。

「メアリー、ちょっといいか?」

「どうしたんですの、お兄様?」

身体を起こそうとすると、ジュリーが手伝ってくれる。彼女の親切な心に甘えながら、ケントに聞く。

「お兄様? 私に何の用ですの?」

「いいから、目隠ししてくれる?」

「め、目隠し…?」

訳が分からず、首を傾げると、ケントが布を差し出してきたので、ジュリーが庇おうとする。

「メアリー様は今、その、危ない状態で…」

「ー分かっている。大丈夫。メアリーにはプラスになることだから」

ケントの真摯な言葉に、ジュリーは頭を下げ、控える。

メアリーはじっとしていると、ケントが側にやって来て、布で目隠しされる。

「お兄様…? 何も見えないのですが…?」

「それでいい。俺を信じて」

「は、はい…。お兄様を信じますけれど…」

手を取られ、メアリーは立ち上がる。

ジュリーも手伝ってくれているらしく、少しずつ歩いていく。

見えるのは眩しい光のみで、まるで五感に蓋をしたような、不安感が募る。

ーどうなるのかしら、私…?

ゆっくり歩いていくのはいいが、どこがゴールなのか見えない。

今、手を放されたら、命に関わりそうで、ケントの手をぎゅっと握りしめる。

後ろにはジュリーの気配を感じ、前と後ろで挟まれ、守ってもらっているのだと実感する。

ゆっくり進んでいくと、ジュリーが「え」と声をあげる。

それをケントが首を振ることで阻止したようで、メアリーは気になってしょうがなかった。

「お兄様、お兄様。どういうことですの?」

「あともう少し。…いいよ」

急に手が放され、メアリーは不安から宙をかくと、別の人物の腕に支えられる、

メアリーはとっさに掴むと、力強いものが返ってくる。

「この…!!」

「ジュリー…!! いいから、控えろ」

ケントの命令に、ジュリーが悔しそうに、メアリーの背中を支える。

メアリーは意味が分からず、じっとしていると、耳の下に口づけられる。

「き、きゃあ!! な、何ですの…?」

パニックになって暴れようとすると、掴んだ手が引き寄せられる。

ふわりと漂う香り。

まるで青空に浮かぶ雲のように、軽くて心地のよい香り。

メアリーは「え」と声を発しようとしたが、できなかった。

ーこれは…。まさか、まさか…!!

胸がどくんと大きく動く。

ケントが側にやって来て、目隠しを取ってくれる、

「もういいよ、メアリー」

「…?」

最初は眩しくて、よく見えなかった。

視界の隅に入る光景から、玄関ホールに来たのだということは分かるのだが、メアリーは目を細めると、じっと目の前の人物を見ようとする。

それを察したのか、相手が静かに声を発してくる、

「ーメアリー」

「!! そんな…!!」

メアリーははっとし、目の前に集中する。

すると相手が泣き笑いしそうな表情で立っている。

ーそんな、そんな…。

メアリーはパニックを起こし、荒い息を吐きながら何故か涙が溢れてくる。

その量は少なくなく、まるでメアリーを襲う豪雨のようだった。

「…っ…!!」

涙は自分の唇に触れ、塩のような味がする。

それは苦しいような、甘いような感じがして、メアリーはいつの間にか、号泣していた。

「メアリー、メアリー」

相手が抱き寄せようとするのを、メアリーは反射的に拒み、相手の胸を叩きつける。

「だ、ダニエル様…!!」

名前を呼ぶと、ダニエルが嬉しそうに笑い、メアリーの殴打を静かに受け入れてくれる。

会いたくて、会いたくて、しょうがない人物だった。

「この…!! この…!!」

メアリーは今までの悶々とした日々を、鬱憤させようと、ずっと叩きつける。

ダニエルは黙って受け入れ、髪に触れようとしてくる。

「さ、触らないでくださいませ…!!」

逃げようとするのを気づかれ、引き寄せられてしまう。

抱きしめられると、慣れた感触に安心してしまう。

ー私…。

メアリーは自分の気持ちに気づいたが、今は封印することにした。

それで楽になるかと思いきや、苦しさは募り、顔は酷いものだろうと自覚する。さらにダニエルを叩こうとする自分がいて、もうぐちゃぐちゃだった。

「うう…。だ、ダニエル様…。どうして?」

「ちょっと忙しくて。待たせてごめん」

素直な彼の言葉は、メアリーの身体に伝わってくる。

涼やかな風が吹いたように、メアリーの中のもやもやが晴れていく。

それを知らず、ダニエルは苦しそうな表情で言ってくる。

「落ち着いて、メアリー。僕を拒まないで」

「こ、拒みますわ…!! だ、だって、ずっと待っていたのに…!!」

ダニエルの背中に爪を立てると、彼は軽いキスを髪や頬にしてくる。

嫌悪感はなく、むしろ欲しがっていたかのように、メアリーは受け入れる。

「ずっと待っていてくれたの…? ありがとうね」

「ひ、卑怯ですわ!! 私ばかりが振り回されて!!」

憎まれ口を叩くと、ケントが手招きし、ジュリーを伴って去っていく。

2人っきりになったメアリーとダニエルは、眩しい光に満ちた玄関ホールで抱き合った形となる。

ーああ、ダニエル様ですわ…!!

ぐすりと鼻を啜ると、瞼にキスをされる。

顔をわざとずらそうとすると、追いかけてきて、涙をなめらる。

「く、悔しい…!! あなたなんか、あなたなんか…!!」

「ごめんね、メアリー。ごめん」

ぎゅっと抱きしめられ、メアリーから離れまいとするようだった。

その力強さにメアリーは安堵し、少しずつ落ち着いていく。

「だ、ダニエル様の馬鹿!! 馬鹿!! 馬鹿!!」

「そうだね。メアリーを1人きりにしてごめんね」

罵倒しているのに、ダニエルは穏やかな声を返してくる。

背中を撫でられ、メアリーはゆっくりと息を吐く。

「大丈夫? 僕のメアリー」

「だ、誰が、僕のメアリーですの!! もう!!」

「僕のものだ。メアリーが何を言っても駄目」

頭を抱きかかえられ、メアリーは身動きがとれなくなった。

ダニエルの胸に頬をつける形となり、しっかりと彼のシャツを掴む。

「メアリー、メアリー。僕を拒絶しないで」

「き、拒絶しますわ…!! わ、私はずっと、ずっと、その…もう!!」

もう涙は流れず、首に軽く噛みつくと、ダニエルの身体が反応する。

彼もどうやら平然ではいられないらしく、脈が速く打っているのが伝わってくる。

「馬鹿、馬鹿、馬鹿!! もう嫌い!!」

「…嫌い? メアリーは僕が嫌いなの?」

一瞬、不安そうな声に、メアリーは気づいて黙り込む。

もうメアリーの負けだった。

ー受け入れなければ。私、ダニエル様のことを…。

もう封印するどころではなく、ようやく大きなものを咀嚼した感覚に、メアリーは顔を動かそうとしたが、ダニエルの腕が拒み、聞いてくる。

「メアリーは僕が嫌い…?」

「き、嫌いですわ…!!」

そう言いつつ、彼の身体に触れていく。

ダニエルの身体も弛緩し、メアリーの気持ちに気がついたようだった。

「ー愛しているよ、メアリー」

「あ…!! もうダニエル様!!」

メアリーは顔を真っ赤にし、口を閉じる。

もう彼には言いたいことが思いつかず、自然と身体を預けると、ダニエルが穏やかに言ってくる。

「僕のメアリー、僕のメアリーだ」

「ぼ、僕のメアリーと言うのでしたら、もう少し私の気持ちも分かってくださいませ!!」

「ごめん、メアリー。それとありがとう。僕を拒まないでくれて」

「し、知りませんわ」

ふふとダニエルは笑い、心地のよい息が耳に当たる。

メアリーは自分がどこにいて、誰に抱かれているのか、しっかり把握し、身体を放そうとするのだが、ダニエルが許さない。

「た、ダニエル様…?」

「僕だって我慢したんだよ、メアリー。僕だって辛かったし、悲しかった。身体が焼けるくらい痛かった」

「…。ダニエル様…」

彼は嘘を言っていないと判断し、メアリーは頬をこすりつける。

すると少し束縛が緩み、ほうと息を吐く。

「大丈夫、大丈夫。僕は絶対に離れないから。絶対に」

「だ、ダニエル様…」

2人は身体を放すと、ダニエルがメアリーの肩を掴んでくる。

「メアリー、僕を受け入れて」

「…も、もう受け入れてますわ!! そうじゃなければ、身体を預けたりしませんもの!!」

「メアリー」

すごく嬉しそうな顔をし、ダニエルが再び抱きしめてくる。

メアリーも正直な気持ちになり、素直に身体を託す。

2人は何も言わず、姿を重ねたままとなる。

それを祝福するように、多量の光が2人に注がれ、金色の影を作り出す。

「だ、ダニエル様。その…」

「しっ。もういい。何も言わなくて。このままでいい」

ダニエルに抱きしめられ、メアリーはゆっくりとうなずく。

2人の姿はしばらく動かず、誰も干渉する者はいなかった。

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