蒼いカノン
枯れ果てた
くたびれた涙みたいな
蒼い月を
呼んだよ
泣いてないって
笑ってるでしょって
季節ごとにカンタンな嘘を
恥ずかしげもなく
ついたよ
だからわたしは
悲しいことも寂しいことも
幸福みたいなんだと
ひたすら信じ込もうとしていたよ
わたしたちには
わたしたちの春があったしね
わたしたちのクリスマスもあったしね
雪はもう
いやと云うほど降るかもしれない
枯れ木にイルミネーションより清い
純白の雪が白い虚言を装うとき
動き出す記憶のたとえば笑顔とかが
血管を巡る尖ったガラスだったりするから
べっつにね
現実なんて直視なんてしなくていいよ
過去の悲しみだけが
心にも頭にも
痛みをあたえるのだもの
マジで?
ほんとうなんて
しらねぇよ
終わらない月面の謎に手を伸ばして
過去の罪深さを問いたいのだけれども
時がゆくことだけが
悲しみを癒す手段だなんて
くだらない自慢みたいに
瞳をキラキラ煌めかせた
君を
慕うよ
生きることの阿呆らしさや苛立ちや
死ねば楽になれる咆哮を胸に押さえ込んで
蒼いカノンを奏でる君の横顔に
かつてこころの深いところまで癒された
命の七色の虹色を
こころの火の粉のような気持ちまで
くつがえすようなさまざまな
虚空の夢をあつらえたというのなら
その
最後の空っぽみたいな希望を
わたしが今度こそ
いだいて深い海の底に君を連れてゆき
静かに静かに
愛し合いたい




