第十一話 構造改革提言と殿下の抵抗
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リリアーナ夫妻が王城で最初に行ったのは、『王室業務の構造改革提言書』の作成だった。
アルクは全公務員に対し、『一日の業務時間における感情論と実務の割合に関する申告書』の提出を要求。その結果、殿下の側近たちの業務の80%が、『殿下への感情的な配慮』、『無駄な社交辞令』、『非効率な会議』という感情論に分類された。
「殿下への提言であります」
アルクは王太子の執務室でディオン殿下に対し、グラフと数値を示しながら冷静に告げた。
「殿下の公務遂行時間は一日平均三時間。一方、『不必要な浪費と、それに伴う財政リスクの拡大』に費やす時間は平均五時間であります。このままでは『国家の運営者としての資質評価』が、不可避的に最低点となります」
ディオン殿下は怒りに顔を真っ赤にした。
「ヴェイン(旧補佐官)、聞け! この男は愛も情熱も知らぬ、ただの機械だ! 僕のカリスマを否定するのか!」
リリアーナは冷ややかに殿下の隣のソファに腰かけた。
「殿下、カリスマとは持続的な実績によって裏付けられるものです。殿下のカリスマは『刹那的な感情』に基づいており、持続可能性が極めて低い。わたくしどもの提言は、殿下のカリスマの『持続可能性』を高めるためのリスクヘッジに他なりません」
リリアーナは殿下の愛する『カリスマ』という感情論まで『持続可能性』という事務的な尺度で切り刻んだ。
ディオン殿下はリリアーナの冷徹さに恐れをなしたが、彼の周りには、感情を武器とする勢力が結集し始めていた。
「ルイーザ夫妻は人間性を否定している! 彼女たちは愛と情熱を失った機械だ!」
大貴族連合は自分たちの利権(感情的なコネや特権)を脅かすリリアーナ夫妻に対し、感情的な扇動という、最も非効率で、かつ最も強力な手段で抵抗を開始した。
◇
リリアーナ夫妻の次の業務は『税制改革』。
アルクは現行の税制が、地方貴族の*感情的な特権』や、『コネ』によって優遇されている、『非効率なシステム』であることを示す『税制不透明度レポート』を作成した。
「この税制では真面目に納税する平民の『公正さへの信頼』という、国家の『安定的な基盤』が崩壊します」
アルクはグラフを突きつけた。
リリアーナは、そのレポートに基づき、『国民番号と資産データベース導入計画』を提案する。
目的は税を公平かつ確実に徴収し、国家の安定的なキャッシュフローを確保すること。
この改革は感情的な利権をむさぼる大貴族連合にとって、死活問題だった。
「彼女たちは国民のすべてを番号で管理しようとしているのだ! 国民を家畜と見なしているも同然だ!」
大貴族連合のリーダーであるゼクス伯爵は、国民に『プライバシーの侵害』という感情的な恐怖を煽り、ルーク夫妻への憎悪を向けさせた。
そんな中、ルーク夫妻の私的な感情を揺さぶる、最大の事件が発生した。




