表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/9

菜の花の目覚め




「願わくば人を守るために!『堅牢』展開!」




結菜が大きく声を上げる。大盾の周囲に半透明な結界を展開させ、ドラゴンロードのブレスが当たり火花が散った。




「はぁぁぁっ、先輩、見て、ください。止めきったら、パーティ組んでもらいますからねぇ!」




結菜が叫ぶ。まさかとは思うが本当に僕とパーティを組むためだけにドラゴンロードと対峙してるのではないだろうか。僕にとって結菜は仲のいい隣人、もしくは背中を任せられるに値する助っ人でしかないが結菜にとっては違うのかもしれない。




「くっ、先輩!背中を、背中を支えてくれませんか!?」




僕としたことが戦闘中に関係ないことを考えてしまった。背中か...結菜は精神的な支えを求めているようなので一段階上のものを用意してあげよう。僕をブレスから助けてくれた恩もあることだしね。




「ああ、思い描くはミレーの晩鐘。他と交わる事で逆境を超えることがあるだろう。結菜!僕はサポートに回る、絶対耐えきろよ。」




ダンジョン内で底上げされる力を全て結菜に渡す。渡し切った僕の身体は結菜の背中に崩れるように倒れ込む。




人に任せるなんて何時ぶりだろうか。今は他人に寄りかかるのが心地よい。




「あぁ、これが先輩の見ていた景色ですか。この万能感はたまりません。今なら――"拡大解釈"『金剛力』 愛は万物の中で一番硬いのです。」




はは、嘘だろ。いくら四文字の世界を貸したとしても"拡大解釈"それも"昇華"に成功するなんて何かのバグだろ。ああ、認めよう。こいつ―白坂結菜は天才だ。それも僕なんか軽々と凌駕するほどに。




僕は不覚にも――結菜の行く先を見てみたいと思ってしまった。




結菜は今回、討伐出来たら僕とパーティを組みたいと言っていたがこちらからお願いしたいくらいの才能だ。ゆくゆくはS級冒険者の上位ランカーにすらなれる可能性を秘めている。




そんなことを思いながら、僕の意識は白く塗りつぶされた。






SIDE 白坂 結菜




ドラゴンロードのブレスを防ぎ切り、再びドラゴンロードと向き合う。ドラゴンロードはブレスを吐いたのと先輩が大きいダメージを与えてくれた影響で瀕死の状態だ。




―パン、パン、パン!




ドラゴンロードの残っている目を撃ち抜く。




ドラゴンロードは動く気力もないのか撃ち抜かれても再生すら開始しない。弾丸に『金剛力』をかけて強化する。これで鱗も貫通するはずだ。




射線をドラゴンロードの眉間に合わせ残弾全て撃ち尽くす。


良かった、貫通したようだ。




巨体が青い粒子となり崩れ落ちた。




「先輩、ドラゴ――」




討伐出来たことを伝えるために振り返る。葵が倒れているのが結菜の目に写った。




「先輩っ!」




急いで脈を確認する。良かった、呼吸も脈も安定している。もしかしたら私に能力アビリティを貸したから力尽きたのかもしれない。




結菜は葵を担ぎ、上層へ向かう。階層主ボスを倒した場合、強力なモンスターが新しい階層主になろうと争いを始めるからだ。





「…それにしても先輩カッコよかったなぁ。流石私が見込んだだけある。」




発せられるのは結菜の春風に揺られるような柔らかく弾む声。2メートル超えの金属塊から音が出ているので光景はシュールなのだが。




「先輩の能力アビリティもすごかった。多分だけど狂気を注入して時間制限で各種能力を底上げするやつじゃないかな。いつも気だるげだからギャップ萌えが良かった。それに勝ったのだから先輩とパーティ…ぐふふ」




私は笑いが止まらない。たまたま先輩よりも前に先輩に依頼が行くことを知っててラッキーとか思ってたけどここまで進むと思わなかった。先輩が高校の頃からずぅっっと見てたけど先輩は気付かなかったのだね。まぁマンモス校だし仕方ないことなのだけれど。




結菜の足取りは軽い、そこらのモンスターでは追いつけないくらいに。普通の冒険者は何層まで到達したかでよく競い合ったりもする。しかし結菜にとってはそのようなことは葵に比べれば全て些事だ。




上層に近づくにつれすれ違う冒険者が増えてくる。その速度に目が追いつく者は結菜の姿に驚きを、認識すらできない冒険者はダンジョンで吹くはずのない風に驚いていた。




***




「ふぅ。ようやく着いた。少し迷っちゃったな。先輩をギルドに預けておきましょうか。」




迷っちゃったけど下層の3層より下の階層自体行くの初めてだししょうがないよね。本当は先輩も私の家に連れて帰りたいのだけどダンジョンから出たら私もただのか弱い女の子だしね。




結菜が呼び鈴を鳴らし、支部長を呼ぶ。本来は支部長を呼ばなくても対応に問題は無いのだが支部長なら面倒事でも引き受けさせられるからだ。いそいそと支部長が奥の方から出てくる。




「ああ、白坂さん。どうし――って、それ日向さんじゃん!どうしたの?」




支部長は驚きの声を上げる。スタンビードの調査がA級冒険者でも倒れるレベルなのかと想像し、支部長の顔が青くなる。




「あぁ、力試しにドラゴンロード倒してきまして...あ、先輩は多分マナが切れただけなので数時間寝かしておけば大丈夫だと思います。では。」




「うんうん、ドラゴンロードねぇ。たしかにトカゲを退治してこいとは言ったけども。ああ、白坂さん逃げないでくれたまえ。日向さんがそんな危険犯そうとするはずがないじゃないか。君の発案だろう?」




支部長が立ち去ろうとした結菜の肩を掴む。支部長のこめかみには青筋が立っており、顔が赤く染まっている。




「まあまあ、まだ昼時じゃないか。少し話をしていこうじゃぁないか。」




「あ、あの。私...用事―」




「そんなつれないこと言わないでよ。君が日向さんとの探索のために1日空けておいたのは平井さんからも聞いてるから。さぁおいで。」




「あ、あわわ...」




***




SIDE 日向葵





頭の奥で鈍い痛みが脈打ち、世界が滲んで見える。




―そうだ!結菜は?ドラゴンロードは?




「っー。いてぇ。」




身体もだるいうえに頭まで痛い。見渡す限りダンジョンではないし死後の世界でなければ無事に地上に戻れたみたいだ。




「起きたみたいだね。君、半日も寝てたんだよ。もう夜だしもうひと眠りいったらどうだい?」




「3日じゃないんですか?」




支部長が大きなため息を吐いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ