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利害関係合致



 ドラゴンナイトに飛ばされたノムさんのロングソードを回収して地上への道のりを歩む。僕としては女装が簡単にバレたのが気になったのでノムさんに聞いた。そうしたらノムさん曰く




「もし女の子だったらダンジョンでスカートなんて履かないよ。」




 とういうことらしい。今までソロで探索していたからその点は疑問に思わなかったな。妹もまだ高校生なのでダンジョンに来ていくのに適した女装服を見たことがない。それだけか、と聞いたら服はただのきっかけのようだ。肩幅や声の出し方に違和感を感じたらしい。帰るまでの道のりはいつも通りでノムさんとそんな話をしていたらあっという間に地上に着いた。








「こちらドロップアイテム持ち帰り申請書です。」




 ギルドの受付嬢にオークナイトの肉の持ち帰り申請書を頼んだ。ダンジョンは本来21歳未満は入れないことになっている。しかし、"適正"が出た者はその限りではなくて国が特例でダンジョンへの入場許可証を発行する。その代わりドロップアイテムは国に回収されることになる。ただそれだとダンジョンに潜る人が少なくなるので助成金という名の給料が振り込まれるのだ。




「書き終わりました。大丈夫だとは思うんですけど不備がないか確認お願いします」




 未成年でダンジョンに潜るやつなんてろくな家庭環境の子供しかいない。給料はあるといっても多くはない、なのでダンジョンでドロップした食料品は申請書さえ出せば持ち帰ることができる。毎回書かなければいけないから利用している人は少ないが僕は妹も養わなければいけないので助かっている。手続きが終わって外に出たらノムさんが待っていた。できれば配信の件の話は忘れてていて欲しい。




「ひまわり?ちゃん、もしよければこの後ご飯行かない?お礼もしたかったし奢りますよ。」




 僕は帰りたかったので逃走しようとしたらノムさんに掴まれ有無を言わさずお高そうな焼肉に連れて行かれ、気づいたら個室のテーブルに座らされていた。




「よし、これで外に音は漏れないね。配信者の件、考えてくれた?」




 残念なことにノムさんはバッチリ覚えていた。僕としては全く持ってやりたくなかったがさきほど携帯を確認したら僕が戦っている動画がバズってしまっていて取り返しがつかない。それに今女装なんて情報が追加されたら余計盛り上がってしまう。素直に従うのは癪にさわる。なので




「ボクが受けるとしたらやらないことのデメリットの回避以外にどんなメリットがあるんですか?」




 お姉さんは微笑みながら言う。




「そうだね、大切なことだ。まずこれはメリット以前の話だけど配信に必要な機材は私がすべて用意しよう。それに私のネックスから広報もするよ。」




 なるほど、一番始めるに当たってネックな初期費用と集客を任せられるのは大分大きいだろう。しかしこれは"僕"にとってのメリットではないと伝えるとお姉さんは顔を近づけて―




「君、未成年でしょ。それも国の特例に入っている。」


「申請書出していたでしょ。あれ持ち帰りのやつじゃない?」




 これに僕は驚いた。なぜなら持ち帰りの申請書は僕以外使っている人を見たことがないくらい化石となっているシステムだ。冒険者なりたての当時の僕がガイドの本を読み込んでこのシステムについて知った。なのでそこから僕が国の特例青年だと推測したノムさんの博識ぶりは講師にも及ぶのではないのだろうか。




「もし、配信者になってくれるのであれば私が無償で寄親になってあげるよ。」




 もしノムさんが無償で寄親になってくれるならば僕も話が変わる。ダンジョンでの寄親は制限、手続きが面倒な上にほとんど寄子の稼ぎを当てにしている人たちしかいないので僕は今まで利用してこなかった。思わず




「本当にボク達の寄親をしてくれるの!?」




 と叫んでしまったくらいだ。




 何故こんなにも僕が寄子、寄親を重要視するのかというと寄子になることで寄親名義で未成年でもドロップアイテムを売ることができるからだ。信頼する関係の人でないと簡単に金を持ってかれてお陀仏のうえ"特例"は一度しかなれないので解約するなら覚悟をしないといけない。




 その後ノムさんと話をまとめて――


 僕は配信をしてみることになった。ノムさんが何故こんなに配信者を勧めるの聞くと、元々配信業界のファンらしくていい素材がいるとついつい勧誘してしまうようだ。ノムさん曰く僕は今まで見た中でも最大の原石らしい。




「ノムさん、よろしくお願いします。」




 僕が手を出して握手をしようとすると




「自己紹介。仮にも親子になるんだから。私は野川紫苑のがわむらさき、むらさきお姉ちゃんと呼んで。」




 ノムさんの本名は紫苑らしい。むらさきお姉ちゃんと呼んでというのは寄親制度でちゃんとした家族名で呼ぶことが規則で決まっているからだろう。




「むらさき姉、よろしくね。ボクの名前は日向葵。妹の名前は百合ゆり、今度家に来てくれれば紹介するね。」




 自己紹介が終わった後もノムさんの奢りで焼肉を頬張った。


 その代わり家に帰った後にゆりに妬まれたが。






 時間とは早いものでゆりにノムさんを紹介したり、配信をすることを伝えたら驚かれたり。さらにはノムさんが合計100万は超えるような配信の機材を買ってくれたのもあって初配信までの2週間はあっという間に過ぎていった。




 今日は僕のダンジョン初配信。ノムさんにダウナー系のキャラクターにしたらギャップ萌えするのではないかとありがたい助言をもらったのでボクはそれになりきる。


 まぁ元々ダウナー系に近いと言われてたけど




 ノムさんが宣伝を頑張ってくれたおかげで配信待機中の人は1000ほどだ。新人としては異常に見てくれる人が多いだろう。いくらダンジョンでモンスターと命のやり取りをしていても人前に出るのは別種の勇気だ。




 震える手を抑えながら配信開始のボタンを押す。


 心のなかで決めていた魔法の呪文を唱える。




 さぁ、演技の始まりだ。







「こんばんはぁ、後輩諸君。ボクの名前はひまわりだ。今日はてきとーにダンジョンで配信するから見てってくれよぉ。」



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