表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
芳桜妃伝 〜 お仕事妃は、夢叶える 〜  作者: 悠月 星花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/97

第93話 できる限りはって感じ

「終わった……」


 私は、筆記用具を置いて、試験官に目配せした。同じ回答をもう一つ作り、1枚を提出する。


「これにてあなたの試験は終わりますので、お帰りください。試験の結果発表は、10日後になります。門に張り出されますので、そちらで確認を」


 若い試験官は、私に丁寧に説明をしたうえで、回答用紙を受け取ってくれた。私は必死に回答用紙へ記入していたから気付かなかったけど、結構な不正があるようだ。周りを見渡すと、お金のやり取りをしているのが、チラチラと見える。


 ……入る時点からお金を積まないといけないなんて。この国の行く末が、心配になるわね。


 私は片付けて立ち上がる。冬嵐の席はすでに空になっており、退出したのが見て分かった。試験前に私に絡んできた男性は、まだ、必死に解答用紙に書き込んでいた。パッと見ただけでも、すでに7人ほどは、退席しているようだ。私は、他の受験生の邪魔にならないように、静かに試験会場を出た。

 早く終わったので、誰も迎えに来てくれていなかったので、屋敷まで歩いていく。女性が科挙を受けられるとふれが出てからのことを考えていた。コツコツと勉強をしてきた、諦めていた未来を夢見ることができた、私の中でくすぶっていたものが、今日、初めて小さな火が灯った気がした。


「10日後か……。楽しみにしておかないと」


 終わったことを思いながら、家に向かうと黒影が駆けていく。私は振り返ると、ちょうど、その馬も止まった。振り返ると、それは、煌蔣だった。


「主、待ってくださいよ……って、桜王妃ここにいるじゃないですか!」

「斉殿、私に何か用事でしたか?」

「いえね? 主が、桜王妃の試験が気になって執務にならないから、迎えに行きましょうってことで、今駆けてきたところだったんですよ。どうでした?」

「それは、ありがとう! 試験は、できる限りはって感じ。でも、手ごたえはあるわ!」


 斉に向かって話していると、煌蔣が戻ってきた。馬から降り、私と斉の話を聞いて何度もうなずいている。


「桜妃ならできると思っていた」

「まだ、結果は出ていませんから、10日後が楽しみです」


 往来で話をしているので、邪魔になるだろう。芳家の屋敷へと招待すると、煌蔣が私を抱きかかえて馬に乗せる。自分も私の後ろに乗り、ゆっくりと歩き始めた。

 馬に乗っている間も、試験の内容や試験会場での出来事など話は尽きず、あっという間に屋敷についてしまう。

 中から慌てて連珠が駆けてきて、今から迎えに行くところだったようだが、様子が少しおかしい。門前には見知らぬ馬車が止まっていたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ