表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
芳桜妃伝 〜 お仕事妃は、夢叶える 〜  作者: 悠月 星花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/97

第89話 女性の顔を見て笑うのは失礼ですよ?

「見事な手刀だったね。流石に……」

「煌蔣様ならできると思いましたよ。それに冬嵐が煌蔣様に気を取られていたから成功したわけですし。助かりました」


 私は煌蔣に深々と頭を下げると、「いいんだ」と頭を上げさせた。私が顔を上げると、煌蔣は少し困った顔をしたあと、クスクス笑い始めた。


「えっ?」

「桜妃……」

「女性の顔を見て笑うのは失礼ですよ?」

「そう思うなら、鏡で顔を見た方がいい。朝から何を食べたんだい?」


 私は煌蔣に言われたことがわからず、首を傾げたが、「何を食べた」と問われたことに、ピンときた。


「煌蔣様にいただいたお菓子を食べました」

「じゃあ、それだね?」


 手が伸びてきて、私の頬を手で撫でた。ザラっとした質感があったので、何かついていたのだろう。恥ずかしさのあまり、頬が火照った。


「人前に出るときは、少し気をつけなさい」

「ありがとうございます……」


 消え入るような声でお礼を言ったあと、自室へ駆けた。恥ずかしさのあまり、その場にいられなかったからだ。


「桜妃、何かわからないことか私が必要な場合はいつでも呼んでくれ」

「ありがとうございます。朝から、お騒がせしました」


 扉を挟んで話すしか、今の私にはできない。恥ずかしすぎて、煌蔣の顔が見られなかった。「帰るから」と言葉を残し、煌蔣は屋敷へ戻っていった。私はふぅっと大きく息を吐いてその場に座る。


 ……冬嵐には悪いことをしたな。でも、はっきり言わないと伝わらないし、たぶん、今も伝わっていないよね。


 さらに大きなため息をついたあと、私はゆっくり立ち上がる。部屋から出て連珠を呼んだ。


「お嬢様、大丈夫でしょうか?」

「冬嵐のこと? 大丈夫だって思うしかないわ。私は私のできることをするしかないし、今は勉強続けるだけよ」


 勉強道具を自室へ持ってきて欲しいと連珠にお願いして、私は机にある本を読み始めた。


 あれから半年の時間を領地で過ごした。母と妹の命日に供養をし、領地の視察をしたり、科挙の勉強をしたり、忙しく過ぎていく。指折り数えて試験の日を考えながら、過ごしたこの半年は、あっというまであった。

 冬嵐もあれ以降、領地へ来ることもなく、音信不通となった。私はこれでよかったんだと、幼馴染がいなくなった寂しさを感じた。


「もうすぐ、都だ。長旅大変だっただろ?」


 科挙試験が行われる都まで、私は煌蔣に警護されてきた。この時期、科挙試験に滞在する費用を持った受験生が多くなるので、盗賊に狙われやすい。

 領地から三人が受けることを知ったので、受験生を含め、一緒に戻ってきたのだ。


「煌蔣様にはよくしていただいて、なんてお礼をしたらいいのか。ありがとうございます」

「いいよ、これくらい。他の受験生も、科挙試験、頑張りなさい」


 私たちは、芳家の屋敷の前まで送ってもらった。煌蔣も都の屋敷へ戻ると私たちに別れを告げて去っていく。

 領地にいた間のことを振り返り、私は煌蔣の背中に深々と頭を下げる。

 これからが本番だ。屋敷へと振り返ったら、出迎えに来た父に「ただいま」と笑いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ