表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
芳桜妃伝 〜 お仕事妃は、夢叶える 〜  作者: 悠月 星花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/97

第87話 桜妃のことを愛しているんだね

 その晩、私は連珠に頼んで部屋を別室へと変えてもらうことにした。父の使っている執務室に寝床を移動させ、科挙の勉強をしていた。自身の部屋とは少し離れているので、微かに風で冬嵐が私の名を呼んでいるのが聞こえてくる。私の部屋は、私がいると見せかけるように、蝋燭をたくさん使って明るくしていたので、その部屋の前にいるのだろう。

 連珠が私の部屋で一晩過ごすことになっているので、私は、一人、父の執務室に居ることになった。

 コンコンと扉を叩く音がする。連珠なら、今、冬嵐が部屋の前にいるだろうから、出られないし、屋敷の使用人は、すでに休んでいるはずだった。


「桜妃、いる?」


 聞き覚えのある声に、私の筆が止まった。どうやら、訪ねてきたのは、煌蔣のようだ。私は、扉に近づき、こっそりと話した。


「その扉を開けるわけにはいきませんので、煌蔣様には申し訳ないですが、裏側の窓から入っていただけると、とても助かります」

「わかった。ちょっと待ってて」


 しばらくして、裏側にある窓から煌蔣が入ってきた。どうやら、冬嵐が私を呼ぶ声が、煌蔣の滞在先にまで聞こえていたようだった。


「心配になったから、夜分に……」

「いえ、勉強をしていたところなので大丈夫ですよ。それより、どうかされましたか?」

「えっと、怜家の……」

「冬嵐ですか? 私の部屋の前でずっと私を呼んでいますね。誰が渡したのかお酒が入っているようで……」

「それで、こちらに移ってきたのか?」

「こうなる予想はしていたので、冬嵐の部屋を用意した時点で、移ってきました。明日には、都へ帰るように言ってあります。誰かを護衛に付けて、戻させます」


 私は深いため息をつくと、煌蔣は心配げにしてくれた。立ち話をしていたので、椅子に掛けるよう促し、お茶を用意した。私の勉強時の眠気覚まし

用にと濃い目のお茶なので、少し渋いかもしれない。


「それで、怜家のは何て言っているんだい?」

「……私がいなくなったことを心配してきてくれたようです。この忙しい時期に」

「単騎で来るくらい、桜妃のことを愛しているんだね」


 私は、それには答えず、苦笑いだけする。何をおいても私の元へ駆けてきた冬嵐のことをどんなふうに捉えたのかはわからないが、揺れる蝋燭に照らされた煌蔣は、羨ましいというふうであった。


「科挙試験のことや婚姻のことで揉めただけですから、お気遣いなく。いつものことですし、これからは冬嵐を幼馴染であっても、私の好敵手として扱うことにしました。婚姻を断ったことも……」

「そのことで、あぁなっているわけでは?」

「わかりません。私に好意があることは昔から知っていましたし、怜家と懇意にしていましたから、今更、距離を取ることは難しいかもしれません。ただ、父も婚姻については、白紙にしてくれると言っているので、冬嵐が何と言おうと、いったんはなかったことになります。

 今、手を伸ばせる目の前に夢があるのですから、それにかけない手はないと思っていますから、怜家の望むような生き方は、私はしたくありません。それに……」

「わかっている。桜妃が望む人生を勝ち取るために、今すべきことに全力を注げばいい。私は、いつまでも待っているから」


 微笑む煌蔣に私はうなずく。煌蔣という人は、どこまで私を甘やかす気なのだろうか? 夢を叶えたい、やりたいことがある、そのうえで煌蔣との婚姻も諦めない。私はとても欲張りな気持ちになったが、それもこれも、科挙に合格しないと、何事も始まらない。「もう少し勉強をしますので」と声をかけ席から立つと、「わかった」と言って、煌蔣も席を立ち、帰っていった。煌蔣が座っていた場所には、私の好きなお菓子が置いてあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ