第78話 桜妃との時間を過ごしてみるといい
「仲がいいのか悪いのか……」
煌蔣は斉と連珠を見ながら笑い始めた。どうして笑っているのですか? と言わんばかりの煌蔣を睨んでいる連珠の袖を私は引っ張った。
「何ですか? お嬢様」
「そろそろ、機嫌を直してほしいわ。もうすぐ、領地につくことだし」
「機嫌は悪くないですけど……」
「そうなの? ずっと、私とも話さないし、どうしたのかと思って」
連珠はチラッと斉を見ながら、「夕食をご用意しますね」と、また、部屋を出て行った。私は小さくため息をついて、そんな連珠の後ろ姿を見送った。
「ずっと、こんな感じなんですよね。連珠殿に何かあったのですか?」
「……斉殿が悪いのですよ。ほら、連珠の機嫌を直してください。私も困っているので」
今度は、斉が私を見つめてくるので、扉の方を指さした。しぶしぶ、扉の方へ向かい出て行った。
「あの二人、どうなるんですかね?」
「そればかりは、本人たちにしかわからないから、自然に任せるとして……、領地についてから、しばらくは時間があるけど、すぐに勉強に取り掛かる?」
「そうですね。少しわからないことがあるので、教えてくださいますか?」
「もちろんだよ。しばらくは、何もすることがないからね。領地を散策するくらいかな?」
「どれくらい、休暇があるのですか?」
「桜妃が、都へ戻るまで」
「えっ?」と煌蔣を見ると頷いている。皇帝から休暇を得たというので、驚かずにはいられない。
「婚姻の許可はまだ下りてないけど、桜妃との時間を過ごしてみるといいと言われたんだ。皇太子は、一月一緒に過ごしたのだから、不公平がないようにって」
「それじゃあ……」
「民の暮らしを見て回る旅にも出て報告をしないといけないけど、それでも、桜妃と半年くらいの時間があるかな」
過去の思い出で私と結婚をしたいと言っているのだと、皇帝に言われたらしい。それをしっかり確かめてくるようにとのことだ。私たちが出会ったのは幼かったし、約束もそのときのものだ。私なんて最近まで忘れていたのだから、皇帝の言うことは正しいのかもしれない。大人になった私たちは、考え方も変わっている。その埋め合わせをする時間だと思えば、この期間はちょうどいいのかもしれない。
「旅はどのくらいの期間行かれるのですか?」
「一回に行く期間は2週間から一月を予定している」
「わかりました。私は、勉強も兼ねて領地に来ていますが、領地の視察もありますし、母や妹の供養もありますから」
「勉強がというより、その他の方が忙しそうだね」
私が頷くと、扉の向こうから斉と連珠が言い争いをしながら部屋に入ってきた。食膳を持ちながら、怒っている連珠に油を注ぐような斉。一時期に比べると、その言い合いも少し和らいだような気がしたが、まだまだ続きそうであった。




