第74話 一応、科挙も部科も通っているからね
私たちが寺院から出てくると、斉と連珠が話をしていた。合流できたようだ。私たちは、領地までの経路を話し合い、一緒に行動することになった。
「煌蔣様は、私と一緒に領地へ向かわれてもよいのですか?」
「もちろんだけど、なぜ?」
馬車の隣を並行して馬を歩かせている煌蔣に尋ねると、逆に不思議がられた。煌蔣は国境を警備する任を負っているのに、私に付き添って迷惑ではないかと考えたので聞いたのに、当の本人は、のんきに構えている。
「実は陛下から休みをもらってきた。長年、勤めたから許しが出たんだよ。各地に旅に出ようかとも思っていたんだけど、桜妃が科挙を受けるなら、その手伝いをしようか?」
「私の手伝いですか?それって……」
「科挙試験の勉強を見てあげる。一応、科挙も部科も通っているからね」
「あっ、あれって煌蔣のことだったのですね? 皇族でどちらも合格したというのは」
少し得意げにしている煌蔣であるが、どちらもそれ相応の力がないと合格はしない。たしか、両方の試験を一発合格だけではなく、状元、武状元だったはずだ。多才な煌蔣に頭が上がらない。
「お忙しいのにいいのですか?」
「もちろん。拠点を桜妃の屋敷の近くに構えよう。そのうえで、時折、旅に出るけど、屋敷に滞在中はいつでも頼ってくれて構わない」
煌蔣の申し出は、とてもありがたい。私は一人で勉強を続けるつもりだったので、行き詰ったらどうしようかと密かに悩んでもいた。皇太子妃として過ごす日々には講師がついていたので、わからないことがあれば聞けたし、皇太子もかなりの知識を持っていたので、勉強をするうえで困ったことはなかった。不安を抱えながら、領地で勉強をすると言ったのだが、女性の科挙受験のお触れがそろそろ出るので、都では騒動が起こっているころだろうと見込んでいた。
……騒動が起こって1番初めに動くのは、冬嵐だわ。でも、私が遠く離れた場所にいれば、追いかけてくることもないはず。冬嵐には、冬嵐の進むべき道を進んでほしいだけだもの。
私は、都での騒動を思いながら、屋敷の手配や使用人の手配などを芳家で引き受けると約束した。
「いいの?」
「もちろんです。私の面倒を見てくださるのに、それくらいの手配はします。使用人については、思うところがあるかもしれないので、斉殿は」
「なんでしょう?桜王妃」
「……王妃はさすがに、やめない?」
「いいのですよ。もう、決まっていることですから。使用人のことですよね。数人の料理ができるものと下働きができるものがいれば、こちらの兵で何とかしますから、あまり気を使わないでください」
「わかったわ。あとは任せるわね?」
「お任せあれ」と丁寧に馬上で礼をする斉にくすっと笑っていると、私の後ろから、少し不服そうな連珠がいた。どうやら、斉の軽口が気に入らないらしい。馬車の中にいるので、その様子は外には出ないが、寺院で斉たちが合流したときに、もめたのかもしれない。




