第59話 私の叶えたい夢を聞いてくれますか?
私は、父の言葉に背筋を伸ばす。私にとって、進みたい道をきちんと示しておきたい。 今回のことで、私の周りは大きく変わりつつあるのかもしれないと悟ったからだ。
煌蔣から聞いたとおり、皇太子からの婚姻の申し出もあったと父も認めている。冬嵐が、今日、屋敷を訪れたのは、怜家との婚姻を進めるためであった。私は、『三々』が、煌蔣だと知ったばかりで、この簪の存在を知り、煌蔣の気持ちも知った。
そのうえで、やはり、私の夢も追いかけたいと心の内で私が叫んでいる。
「お父様、お話があります」
「なんだ? かしこまって。言いたいことは、予想がつくが、聞いておこう」
父の視線は私を射抜くのではないかというほど、厳しいものになった。皇族に関わる選択が増えたうえに、冬嵐との婚姻を反故にするのは、私の目を見てわかったのだろう。親の決めた結婚で、幸せになってほしい、苦労しないでいてほしいと、父の願いもわかるのだが、私が自分の道を決めたなら、譲らないことも父は知っている。
だからだろうか? 親子としての会話というより、どちらかと言えば、皇宮で仕事をしている父に近い雰囲気を出している。大官を前に、新人官吏が吠えるというような構図に私は、負けそうな気持ちになる。
……ここで、折れるわけにはいかないわ。
「私の叶えたい夢を聞いてくれますか?」
「もちろんだ。桜妃の考えを聞こう」
私は、うなずき、自身のこれまでの話をした。もちろん、父は私のことなら、そのほとんどを知っている。連珠だけでなく、侍従たちも父への報告はしっかりしているからだ。
私は、夢を語る。我が家以外で話せば、笑い飛ばされるだろう。理想で飯は食えないと馬鹿にされるかもしれない。始まりの地点にすら立てない私に、この国の人は、まず、賛同しないことは、わかっている。
「それで、官吏になりたいという夢は諦めない。結婚するなら、冬嵐でも皇太子でもなく、煌蔣殿下がいいと?」
「はい。そうです。私にできることは、ないかもしれませんが、官吏になれないのなら、煌蔣殿下のもとで支えたいと思っています」
父は目を瞑り、深く考え込んでしまった。私は、父の答えをじっと待つしかない。答えを急いでいるわけではない。叶わない夢ならと諦めたこともあったが、ここひと月、皇太子と勉強をしていく中、やはり、官吏になるという夢は諦めきれなかった。私が官吏になったからと言って、何かを成し遂げることができるかは、まだ、わからないが、私ができることがあるのではないかと、日に日に胸に宿ったものがあったのだ。
そこに、煌蔣との再会もあり、彼の置かれている立場も含め、私ができることをしたいと願った。
それが、今度、どのような争いごとに巻き込まれていくのかはわからないが、乗り越えるという強い気持ちがある。




