表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
芳桜妃伝 〜 お仕事妃は、夢叶える 〜  作者: 悠月 星花


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/97

第22話 私にだって叶えたい夢があります

「なんのために勉強を? この国では、女子が官吏にはなれない。勉強などしても無駄であろう? それよりもよい嫁ぎ先を考えておいた方がいいのではないか?」


 私は彼の「よい嫁ぎ先」というのを聞いて、睨んでしまった。さっき、嬉しそうにしていたのは、嘘だったのかと内心がっかりした。


「……よい嫁ぎ先ですか?」

「あぁ、そうだ。女子は、そのために、自身を磨き、その家族も娘に金をかけるのは、そういうことだろう?」


 ……彼のいうことは正しい。どこの貴族をとっても、皇帝の隣に立てる娘を育て上げ、権力を握りたいと願うものが多いのは確かである。皇族の一員となれるであろう娘は、ことさら大事に育てあげられる。

 こことは無縁であった私とは違い、同じ年ごろの貴族の娘たちは、それぞれの家で、父の出世の道具として扱われるものも少なくない。


 私は、にっこり笑いかけると、つられて、彼も優しく微笑みかけてきた。その姿を見れば、普通の令嬢なら恋に落ちるだろう。彼の妻になりたいと願うものがたくさんいるのは、この人の外面で騙されている令嬢が多いからだ。

 この皇宮で生まれ落ち、後宮で育った彼が、裏の顔がないはずがない。純真無垢な笑顔を向けるのは、ある種の処世術のようなものだろう。

 ページを1枚めくり、私は指でその文章をなぞった。その指先を見つめる彼は、不思議そうに視線をこちらへと移動させてくる。


「……無駄かどうかはわかりませんが、私にだって叶えたい夢があります」

「夢?」


 おかしなことをいう私に興味を持ったのか、茶色い瞳を真ん丸にしている。彼の目を私はじっと見つめたあと、ふいに視線を逸らした。ツンとした表情を作り、取り替えたカップへ自分のためにお茶を淹れる。

 その様子を見逃さないとばかりに見入っている彼が、面食らったように驚いていた。


「あなたがさっき飲んでしまったから、淹れ直さないといけないわ」

「あぁ、さっき飲みかけていたからな。まぁ、お茶の一杯くらい、いいじゃないか」


 彼がニッコリ笑うと全てを許してしまいそうになるが、騙されてはいけない。恨みがましく一睨みし、入れ直したお茶を飲んだ。


「さっきの一杯は、私の侍女が、私のために心を込めて入れてくれたものです。お茶の一杯くらいで片づけないでください」

「それは悪かった。もう一度、その侍女を呼んで入れてもらうとしよう」

「いいえ、こんなことくらい、手を煩わせるわけにはいきません」

「侍女なのだから、当然の仕事であろう?」

「そうですね。でも、さっきの一杯と今度入れてもらう一杯は、きっと味が違うでしょう」


 私の意図することがわからない彼に私は首を横にふり、もう一口、お茶を飲んだ。明明が疲れている私への心遣いに選んでくれたお茶は、とても美味しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ