第11話 いつもの戯言よ
馬車に乗り込み、外を歩く連珠と話をする。
「連珠、お父様のことをよく見てやってね?」
「もちろんです。お嬢様の言いつけがなくても、私の役目だと思っています」
「そう、それならよかった。お疲れのようだから、気遣ってもらいたいの」
「かしこまりました」
「……お父様も、後妻をもらえばいいのにって、いつも思うのよね」
私はため息をつくと、連珠が驚いた表情でこちらを見てくる。初めて漏らした心の内だったとしても、そこまで驚くことはないだろう。
「お嬢様は、そんな風に思われていたのですか?」
「えぇ、お母様が亡くなってからずいぶん経つし、お父様を労わってくれる人が必要だと思うのよね。連珠、あなたが、私のお母様になる?」
「め、滅相もないです! それに、年が離れすぎていますし、身分的にも旦那様に悪い噂が立ってしまいます」
「そこまで否定しなくてもよくないかしら? 私は、父も私のこともよく知るあなただと、気心も知れていいかなって思っただけだし。気にしないで、いつもの戯言よ」
なんだかホッとしている連珠ではあったが、想像をしてみる。連珠が私の養母となったとしたらどうだろう? と。今と変わらない部分もあるが、家族となった連珠というのは、少し居心地の悪い気がする。提案はしてみたが、こればかりは、本人たちに委ねるしかない話なので、進まないだろう。
「お嬢様、今日は裏口からの参内になるそうです」
「そうなのね。正門から堂々と皇宮に入るのも変な話だものね。私はお仕事妃なのですから」
クスクスと二人で笑っていると、皇宮の裏門が見えてきたらしい。連珠は、侍女らしくキリっと居ずまいを正して、背筋を伸ばしていた。
「私は皇宮へついていけませんが、お嬢様もどうかご自愛ください」
私は連珠にうなずくと、御簾を下してもらう。これから、皇宮の中に入るのだ。何のために後宮へ入るのか、誰かに見られると困るのだろう。
見送りに来てくれた連珠に気を付けて帰るように伝えると、私も表情を引き締める。
ふと目に着いた普段着の襦裙を見て、私は苦笑いをした。後宮につけば、それらしいものに着せ替えられるので、わざわざ洒落ていく必要はない。望んで行きたいわけではないと気持ちの表れでもあったので、着慣れた襦裙を少しだけ整えるくらいにしておいた。




