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運命を変える者たち  作者: 紳羅 修羅
第一章 少年
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第五話 〜桜咲さん〜

第一節 不運な運命

太陽そらが泣き疲れて寝てからしばらく経った

四時ごろを過ぎた頃に太陽そらは目を覚ますと、桜野刑事に抱きついて眠っていたことに気づく

桜野刑事は目が覚めた太陽そらをみて


「目が覚めたみたいだね

寝てた時のことは気にしなくていいよ太陽そらくん

ところで少し話があるんだけど、寝起きのところ悪いけどいいかな」


と自然な流れで、寝ていた時のフォローと別の話題を振った

太陽そらはそのすごく自然な流れに違和感を感じることなく


「いえ、本当にすみませんでした

お話ですよね、大丈夫ですよ」


と普通に謝罪をして、話のしやすい所に移動した

桜野刑事は〝本当に気にしなくていいよ〟みたいな笑顔で笑いかけながら、話す準備が出来ると話を始めた




話の内容は遺産などの事についてだった

太陽そらは叔父さん夫婦から虐待を受けていた際、遺産に手をつけている事を知っていたようだが、警察の人達が調べた所どうやら借金返済に使用したらしく、ほとんどの遺産が無くなっていたらしい

手元に残っているのはほんのわずかで、あんな莫大な遺産をどうしたら三年半近くで使い果たせるのか、太陽そらは〝はっきり言って驚きもある〟ようだがそれ以上に〝呆れて物も言えない〟ようだ


生きていけなくもない額だが、その遺産だけでは生活が苦しくなることは目に見えていた

それでもこの家を離れたくないのか


「そうでしたか

遺産はもうほとんど残ってないから、生活するのは苦しくなると…

それでもやっぱり出来ればここは離れたくないんです」


太陽そらは素直に伝える

すると桜野刑事はそれをいう事を予想していたかのように


太陽そらくんが家を離れたくないことは分かってるから安心して

でもまだ中学生だしね

かといって虐待を受けていたから、知らない親戚に君を任せるのもアレだから

もう少し待っていてくれるかな、多分そろそろだから」


と優しくそういった

太陽そらは『もう少し待っていてくれる』とか『そろそろ』とかいっている意味が分からないようだが、すぐにその答えはやってきた




「ピンポーン」


その話が終えると同時にまるで計ったかのようなタイミングで玄関のインターホンが鳴る

太陽そらが出てみると一人の刑事が目の前にいた

太陽そらの中でどこか見覚えのあるその刑事は


「桜野さんいる、電話もらったんだけど」


と気力のない感じに問いかけてきた


「奥の居間にいますけど」


と答えると奥から桜野刑事が出てきて


「やっと来たみたいだね」


と待ってましたよと言うように言い放つ

桜野刑事は玄関にいる太陽そらに近づき肩に手を乗せて


「この子、覚えてるだろ

君の親戚の空道くどうの息子さんだ

葬式で見てるよな

これからこの子のこと頼めるか」


といきなりそんな事を言った

その会話を聞いて太陽そらは、目の前の知らない刑事の事を思い出した


「おじさんってもしかして、葬式の片付けを手伝ってくれた人ですか」


と一応確認のためそう問いかける

するといきなり笑顔でこめかみに手を当て


太陽そらくんだっけ」


と呟くと思いっきり頭をグリグリした


「いたたたた」


その叫び声に対して


「誰がおじさんじゃボケ〜、これでも俺は三十のお兄さんじゃ!」


とつっこみながら頭をグリグリし続ける

しかしその手を刑事はいきなり止める


「お前泣いてるのか」


その問いを振られた太陽そらは、初めて自分が泣いてることに気づいた

どうやら笑顔で痛い事をする行為に虐待を受けた、トラウマが反応してしまったようだ…




〝バチコン〟


その時ものすごく鈍い音が響く

どうやら桜野刑事がさっきの刑事の頭を、近くにあった雑誌で叩いた音らしい


「アホかお前は、いきなり頭をグリグリするバカがどこにおるねん」


と少しおかしな口調になってる桜野刑事に


「口調おかしくなってるぞ」


とさっきの刑事さんが笑いながらつっこんで、また桜野刑事に一発叩かれていた


「すまないな、これは私の知り合いで、ものすごい偶然なんだが空道くどうの親戚だっていうことが分かったから…」


と今までの口調に戻して説明を始めた

一応ここまで聞いて太陽そらも理解はした

つまり親戚で刑事仲間だったから頼んだということらしい


「そうだったんですか、それはありがとうございます」


とお礼を流れるように言う

そうした空気に割り入るように


「というわけで、君の身元引き受け人になりました

刑事の桜咲さくらざき海晴かいせい〝お・に・い・さ・ん〟ですよろしく」


とやたらお兄さんを強調しながら自己紹介をした

そのやる気のなさそうな口調に少しいたずらをしたくなったのか


「これは丁寧にありがとうございます

僕の名前は空道くどう太陽そらです

よろしくお願いしますね、刑事の桜咲…え〜と、お・じ・さ・ん♪」


と笑顔で太陽そらはおじさんを強調して自己紹介と挨拶をした

それを聞いて桜咲刑事がプルプルと拳を握って震える横から、桜野刑事が


「まー、そー言う訳なんで、太陽そらくんのことよろしくお願いするよ、お・じ・さ・ん」


と手で口を押さえて笑いを押さえ込みながら火に油を注ぐように太陽そらのことを頼んでいた


「な、バカにしやがって、だいたいお前だって」


と桜咲刑事が少しキレ気味な口調で桜野刑事に突っかかると軽い言い合いになっていた

その姿を見て太陽そらは〝桜野刑事もこう言う冗談で笑ったりしてからかう事があるのか〟と始めて桜野刑事の気を抜いた姿を見て、少し憂鬱だった気が晴れたような気がした




「それじゃ後よろしく、仕事戻るわ」


と桜野刑事はその後すぐに仕事に戻って行った

太陽そらは改めて


「さっきは生意気言ってすみませんでした

これからよろしくお願いします

桜咲のお兄さん」


と挨拶をした

桜咲さんは


「ああ、こちらこそよろしく」


と愛想のない返事で返したが、桜野刑事が信用して身元引き受け人を頼んだだけあって

さっきの様子を見てても親切な人である事が伝わってくる

だからだろう、さっきのいたずらのお詫びも含めて今できる、一番の笑顔で太陽そらは返事を仕返した

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