第二話 〜発覚〜
第一節 小さな変化
学校に行く道すがら〝憂鬱な気分〟が太陽に押し寄せていた
家を出る時の〝晴れやかで清々しい気分〟はどこに行ったのかと疑いたくなる程である
それ程に学校に行く事が、太陽自身にとっての苦痛だと改めて思い知らされる
それを感じながらも太陽は重い足を進める
それは太陽にとって行く事が〝義務〟と等しく〝呪い〟のように逃れられず、課せられた〝使命〟とも言えるものだからだろう
そんな思いを感じながらも太陽は、古い通学路を通り過ぎて学校へと着いた
学校に着くと早速いつものように、決まった数名のクラスメイトが太陽を取り囲むように集まって来る
太陽はそれに反射的に下を向いて、やり過ごす〝受け身の構え〟を取る…
しかし今日はいつもと違い、いきなり襲ってくる気配を感じ無かった
不思議に思った太陽が目線を上げると〝いじり〟に来た彼らの〝あの嫌な目線〟を一切感じなかった…するとその瞬間だった
「太陽すまん」
一人の〝いじり〟に来たクラスの男子が謝罪をしたのだ
とっさの事に、今日はまた変わった〝いじり〟が始まるのかと〝ビクビク〟していたが彼らの表情は真剣だった
そんな表情を見て心做しか〝安堵〟の気持ちが押し寄せてくる
しかしそれと同時に何が起きているのか分からない〝不安〟な気持ちにもなっていた
そんな太陽を囲む彼らはその一人に続くように
「僕らさ、太陽の事いっぱい傷つけたけど、本当に悪かったと思っているんだ
だって〝あれほど辛そうな表情を見てきたんだよ〟」
「そうそう、それに雪から毎回お前が帰った後に〝人を傷つけて自分が助かろうなんて最低な奴らだ〟とかいろんな事言われて、、
最初は気にしなかったんだけど、だんだん悪いと思い始めてきたんだ
本当に〝最低だったんじゃ無いか〟ってさ」
「そうなんだよ、それで悪いと思ったんだ
だからこれまでの事はすまなかった、、、
〝許してくれるよね〟〝お互い水に流そうよ〟」
「僕は最初からこんな〝いじり〟は嫌だったんだよ
でもね、君を庇えば次は〝クラスの嫌われ者扱い〟の僕らに飛び火するかもしれないのが怖くて
それで〝参加せざるを得なかったんだ〟
本当にごめんね、謝って済む話じゃ無いとは思うけど・・・」
そう口々に謝罪の言葉を並べ始めた
しかし太陽はその謝罪を聞きながら〝自分の保身〟ばかりを気にしているような、彼らの〝口調〟や〝態度〟に〝怒り〟がこみ上げていた
「なんだよそれ、、、」
そう太陽の口から冷たく低い声が溢れる
それを聞いた周りの〝いじり連中〟は一斉に謝罪をやめた
それから数秒程度だろうか、とても冷たく静かな時間が流れる
するとクラスの〝いじりの主犯格〟の一人が
「お前、何様なわけ、わざわざ謝ってるのに!
こんな沢山の人がよ!何が気に食わないの?」
と怒鳴るように言い放つ
それを聞いていた周りの〝いじり連中〟も
「そうだ、そうだよ
謝ってやってるのに何だよその態度は
〝素直に喜んどけよな〟」
「ほんと、空気読むべきじゃない」
と口々に騒ぎ始める
その言葉に再び〝怒り〟がこみ上げてきた太陽は
「謝れば僕を〝いじめ〟ていいのかよ・・・」
と小さく消えそうな声で溢す
すると周りの一人が太陽の発言に、不思議そうな表情で
「・・・俺らは何も〝いじめ〟てないだろ?
ただ楽しく遊んでただけだろ、なぁみんな?
〝いじってた〟のが度を越しただけで
そもそもこれは〝いじり〟の範疇だと思うぞ
ただそれでも〝少しは〟やり過ぎた感じだから謝ってやってるんだよ?」
と首を傾げながら悪気のない口調で、淡々と返してきた
その〝口調〟や〝言葉〟を聞いて太陽は
「あれが〝いじり〟だったって、、、はぁ」
そう〝不愉快〟な気持ちと〝怒り〟の混ざった太陽の思いが〝荒々しい口調〟として出てくる
それを太陽は止める事が出来ないまま〝ただ感情の赴くまま〟に口が開くと握りしめた拳で同時に机を叩きながら
「ふざけるなよ、お前らこそ何様のつもりだよ
あんだけの事しておいて〝いじり〟でしただぁ
人のこと舐めるのも大概にしろよ!
〝いじり〟ならあれかよ〝朝、意味もなく殴ったり〟〝面白半分でBB弾打ってきたり〟罰あり鬼ごっこゲームとか言って〝一人を追い回して一方的に暴行などを与える〟など…
〝ただひたすら痛めつける行為〟を正当化出来るって言うのかよ!」
と強く訴えかける様に答える
その後、太陽は急に俯いて
「ふざけるな、、、ふざけるなよ…」
と溢した最後の言葉は弱々しく、泣きながらその場に倒れ込んでしまった
その泣きながら倒れ込むその姿を見た〝周りのいじり連中〟は
「だからさぁ、謝ってるだろ、いい加減にしろよ」
「そーそーいい加減さ、許してもいいんじゃね」
と責め立てる
その挙句に最後は
「てかさ、お前のそう言う所が〝いじられる原因〟なんじゃねぇの?」
と言い放った
その時二人の影が〝太陽〟と〝いじり連中〟の間に割って入る
「お前らいい加減にしろよ」
そう先に叫んだのは雪だった
その横で太陽に駆け寄り
「大丈夫、落ち着いて」
と優しく雪が声をかける
その瞬間だった、すぐ横から
〝ガラガラガラ〟
教室の扉を開く音がする
みんなが振り返ると、そこには担任の先生が立っていた
「一体これはどう言った状況か、説明してもらおうか」
と言いながら〝いつも温厚そうな態度〟が一変、とても不機嫌そうに不適な笑顔を浮かべながらそこにいる
それを見た一部の〝いじり連中〟が
「い、いやー何でもないですよ」
「ちょっとした喧嘩みたいなもんす」
「そーそー、だってうちら、すごい仲良しのクラスですしー」
と言い逃れを答え始める
しかしその発言に担任の先生は
「それ本当の事だろうな?
嘘偽りない本当に信じていい〝事実〟でいいんだよな?」
と、あの不敵な笑顔を浮かべたまま、首を傾げて尋ね返してきた
するとその横で雪が
「先生違います、実はそこにいる皆んなが太陽の事を〝いじめ〟てて…」
と大きな声で答えようとするが、その言葉を最後まで聞く前に
「そうか…」
と呟く先生の顔からは笑顔は消え、ただ冷たい視線だけがクラス全員に向けられていた
しばらく続いた沈黙の後、再び口を開くと
「今日のホームルーム、全員残れ
話し合いするぞ、異論は認めない」
と淡々と告げる
みんなはそのいつもとは違う担任の先生の、言葉や態度に何も言い返す事が出来なかった




