第一話 〜邂逅〜
第五節 謎の青年
太陽は自殺しようとここに立っていた
いよいよ飛び降りる、まさにその瞬間
そんな太陽の足を止めるように後ろから
「死ぬなんて勿体ないよ」
と若い男の声が聞こえてきた
その声に振り返ると、まるで太陽を見下ろすように岩の上で青年が座っていた
太陽はその彼の言葉に〝自殺〟の瞬間を止められた事による、不愉快な〝気持ち〟を込めて〝運命〟に対し吐き捨てるように
「お前は誰?」
と特に興味のないような口調で問いかけた
その言葉を言いながら振り返った瞬間だった…
太陽の目に映った光景は『空』だった
それはとても青く透き通った綺麗な空だった
そう太陽は青年に対して、吐き捨てるような口調で答えた瞬間足を滑らせたのだ
立っていた位置がすぐ崖だった事もあるだろう
太陽は吸い込まれるように落ちた
それに対してただ冷静に口から
「あ、、、死ぬ」
と溢しながら重力に逆らう事なく、身を任せるように眼をつぶる
すると次の瞬間、さっき声をかけてきた青年だろうか
「ちょ、ちょっと待て!」
と叫びながら太陽の手を慌てて掴み、力一杯に引き上げた
「ゼェ、ハァ、ゼェ、ハァ」
引き上げた青年の呼吸だろうか、横ですごく息を上げているのが聞こえる
太陽はそのうるさい呼吸音がする方向へゆっくり目を向けた
どうやら太陽は青年に助けられたらしい
目を向けた先にいたのは、今にも死にそうですと言わんばかりに、大げさに胸を押さえながら呼吸している青年がいる
「・・・」
青年のその姿に太陽は、かける声が見つからないでいた
この場合普通は〝ありがとう〟と言うべきなのだろう…
しかし太陽は少し青年に対する声掛けに困っていた
それは〝助けてください〟とお願いしてもいないし、死のうとしてやっと崖から落ちた所を助けられたからだ
しかも青年は当事者の太陽が冷静であるにも関わらず、まるで自分の事であるかのように、太陽以上に慌てふためいている
…挙句このザマである
〝ゼェハァゼェハァ〟と息を上げながら横で倒れて、、、いやうずくまっている
よほど体力がないらしい青年を横目に、太陽は〝呆れすぎて〟何も言えないでいた
そんな太陽が呆れている間に、青年も落ち着いたらしい
ゆっくりと体を起こしながら口を開く
「お、お前、バカなのか
会話始める瞬間に
いきなり落ちる奴がいるか」
そんな怒鳴り口調で説教じみた事を叫ぶ
「・・・そんな事言われる筋合い無いんだけど」
と冷静に太陽は青年に返す
すると青年は呆れたように
「飛び落ちる時もそうだけど、お前なんでそんなに冷静なんだよ
こっちは肝が冷えたって言うのに」
と胸に手を当てながら、ため息まじりに答える
それを見ながら太陽は〝僕には関係ないんだけどなぁ〟とどうでもいい視線を送りながら体を起こした
それを見ていた青年は
「おぉ、もう起きられるのか!元気いいなぁ」
と笑顔を見せながら呟く
〝お前の方が元気だろ〟と心で突っ込みながらも、太陽は今一度、崖へと足を運んだ
それに対して青年は
「ん、どうしたんだい、また崖の目の前なんかに立って」
と問いかけてくる
もう構う気も出ない様で、無視して太陽は今一度気持ちを落ち着かせると、そこから一歩を踏み出した




