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運命を変える者たち  作者: 紳羅 修羅
第一章 少年
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第二話 〜お兄さん〜

第一節 不運な運命

葬儀が終わると親戚達は片付けを始める


あらかた片付けが終わる頃に〝親戚の大人達〟は家の大広間に集まり〝ある話題〟について話し合いを始めた


それは〝太陽そらの今後について〟だった


話し合いは当事者の太陽そらを交えて行われたが〝気味悪がる親戚〟の視線のせいか太陽そらの居心地は悪い様に見える

そんな〝気味悪がる親戚〟の発言は一言一言、太陽そらを責めるような言い方をしていた

それを言いたいだけ言ってるものだから、周りの親戚に


「言い過ぎじゃないか?両親が死んだばかりなんだぞ」


などと責められていた

すると


「なんで責められないといけない訳?」


などと逆上してその場から次々と出て行った・・・




…結局、良心のある人だけしか〝その場〟には残らなかった

仕方ないので残った親戚同士で話し合い

『いくら遺産があって生活出来ても、まだ八歳になったばかりの子どもだから

大人びていても、ほっとく訳にはいかない』

と意見がまとまり〝身元引き受け人〟となって面倒を見る人を探す事になった

しかし太陽そらに親戚のおじさん達が


「うちの家に来て一緒に暮らさないか?」


と聞くと首を横に振り、一切育った家を離れようとしない

さっきの大人気ない親戚の言い合いも〝見られていた〟事もあって、親戚の人達はみんな一度断られるとそこまで踏み込もうとしなかった

そんな中一人の遠い親戚のお兄さんが


「私がここに引っ越してくるよ」


というと太陽そらに近づき問いかける


太陽そら

お兄さんも一緒にここに住んでいいかな」


すると太陽そら


「…いいよ」


とだけ言い残し仏間の方へと歩いて行った




それからしばらくして、遠い親戚のお兄さんが越して来た

家の中は、引っ越しの荷物が運び込まれて、それから数日は慌ただしい時間が続いた


引っ越ししてきてくれたお兄さんは、太陽そらと話し合って周りの家事を引き受けてくれる事となった

お金の面もお兄さんが


「すごい大金だからもし良かったら、お金の事はお兄さんが管理しておくよ」


と提案したのに対して


「お願いします」


といって太陽そらは任せている

必要な時は、額をいって銀行から降ろしてもらっているようだ

ただお兄さんとは引っ越してきてから、まともに話をしていない

食事を用意してくれて一緒に食べる


「ありがとう」


といつも食事を作ってくれた事にお礼を言う、それくらいしか言葉を交わしていない

お兄さんも話しづらいのか


「気にしなくていいんだよ」


とどこかよそよそしく笑顔で返すだけだった




そんな関係から少ししたある日、太陽そらは両親との楽しかった時間の夢を見て目が覚めた


「お父さん!」


と叫びながら起き上がると慌てて一階に降りる

そしてお父さんの書斎だった場所の襖を開いた

・・・しかしその場所には誰もいない、死んだ時のまま残された書斎を見て


「なんだ、夢か…」


と一言溢すと同時に一粒の涙が流れた

そこから感情が溢れ出したのか太陽そらは子供のように泣いた

それに気づいたお兄さんが隣の客間から駆け寄り


「どうしたの太陽そらくん

こんな時間にここで」


と声をかける

それを見た瞬間、太陽そらはお兄さんに抱きつきながら


「お兄さん、お父さんはなんでいないの

どうして僕だけを置いて行ったの」


と泣きながら叫んだ

それにお兄さんは困った表情をしながらも、強く抱きしめ返した

それに対して太陽そらはいっぱい泣いた

その日からだろうか少しずつ話す会話も増えて行き、次第に太陽そらとお兄さんの距離も縮まっていった




それから少し経った十月十三日水曜日、太陽そらが生まれた日を迎えた


今日で太陽そらも九歳になる

朝から少し笑顔が浮かんでいるのがすぐ分かる

それもそうだろう、毎年誕生日の日はどれだけ忙しくてもお父さんとお母さんが、いつも盛大にお祝いしてくれるからだ

いくら大人びた太陽それでもやっぱりまだ子ども、その嬉しい気持ちを抑え込めるはずはない

そんな気持ちを胸に太陽そらは一階のリビングの扉を開ける


「あ、おはよう太陽そらくん

今日は嬉しそうだね、何か良い事でもあったの」


そう声をかけて来たお兄さんの顔を見て、太陽そらは我に返った

そう、もうお父さんとお母さんはいないのだ

こうして改めて感じる喪失感、、、

〝そうか、もう会えない…〟

その思いが太陽そらの中に広がっていった


「どうしたの太陽そらくん急に泣き出して」


と慌てて駆け寄ってくるお兄さん

それを聞いて太陽そらは咄嗟に頬に零れ落ちる涙に触れた

〝今僕は泣いているの?〟とそんな不思議な感覚と、感情がどんどん押し寄せてくるのが伝わってきた

お兄さんはそんな姿を見て何かに気づいたのか、笑顔を浮かべると


「そういえば今日は誕生日だったよね?

お誕生日おめでとう太陽そらくん」


と言った

その言葉を聞いた太陽そらは、自然と笑顔がこぼれ少し嬉しそうな表情を浮かべた

その日初めて太陽そらはお兄さんと家族になれた気がした

それからは、とても楽しい日々を過ごしていた




筈だった…

誕生日から少ししたある日のこと


「コンコンコン」


家の扉を叩く音が家に響く

どことなく家の周りも騒がしい

それに動く人影がチラチラ見えている

何事かと不思議に思った太陽そらは階段を降りると、お兄さんが玄関を開いて立っていた

それを見て太陽そらは何かを感じながらも


「どうしたの?…お兄さん」


と話しかけるとお兄さんはこちらを見る事なくただ


「すまなかった」


とだけ溢した

その瞬間警察がお兄さんを連れて行くと同時に、偉い人だろうか太陽そらに近づいて


「少し話があるのだけど、いいかな」


と問いかける


「大丈夫ですけど何があったんですか、それにお兄さんは一体…」


そう太陽そらが聞こうとすると


「今から話すから落ち着いて話せる場所に、案内してもらえるかな」


と言われ太陽そらは、その人を近くの客間に案内した




客間に着くと太陽そらは慣れた手つきでお茶を用意し、その人に出すが〝おかまいなく〟という感じに手を立て


「目の前に座ってもらえるかな」


と言われる

言われるがまま目の前に座ると、その人は早速話を始めた


「えっと、まずはこんにちは、私は刑事の桜野さくらの まことと言います。

空道くどう 太陽そらくんで良かったかな」


と自己紹介の後に自然な形で名前の確認をする


「はいそうです」


と答える太陽そらに少しびっくりした様子で、桜野刑事は話しを始めた


「驚いたな、さっきは混乱しているように見えたから、まさかこんな落ち着いた対応ができるなんて…今何歳だっけ」


と聞いてくる態度に、太陽そらは少しムッとした表情を浮かべながら


「九歳になったばかりです」


と答える

それに対して


「そうかまだそんな年か…

いや、何、偏見があるわけではないが、親をこんなにも幼い時に無くしているから

もしかしたら今から話すことにショックを受けるかもしれない

特に大人びた君の様子を見ているとね?

私たちの話す内容の理解も早そうだしさ」


と少し言いにくそうに言葉を濁して、話題を振るがそれに対し太陽そら


「僕は特に大丈夫なので、何があったか話してくれますか」


と桜野刑事に面倒くさそうに言った

すると桜野刑事は


「あぁ、すまない本題に入ろうか」


と少し気まずそうな雰囲気で本題を話し始めた




桜野刑事の話をまとめると

『引っ越してきたお兄さんには借金があり、その金を借りたところがちょうど、警察の追っていた暴力団関係の闇金だったらしく

そこでお兄さんが借金で脅されながら、麻薬の売買役をさせられていた』

という説明を受けた

それを聞いて太陽そら


「つまりお兄さんは悪い事してたと言う事ですか

それを聞いてるともしかしたら、借金の返済をするのに、、、

ははは、上手いこと騙されてた訳だ」


と言いながらもそんなにショックでは無いようだ

もともと周りから気味悪がられていた所に引っ越してくるほどだから、何かあるとは思っていたからだろうか?


「そうでしたか」


と言いながら淡々とした表情で桜野刑事に答える

桜野刑事はその様子を見ながら〝本当に驚かされるな〟と言った表情を浮かべたが、すぐにそれが失礼な事だと気づいたのか咳払いを一回すると表情を元に戻した

そのあと話を終えた桜野刑事は


「また後日、今後のことも踏まえてお話をしにきます」


とだけいって警察署の方へと帰っていった

その後、太陽そらは疲れていたのか自分の部屋に入ると横になって、そのまま眠りに落ちるのだった

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