第七話 〜覚悟〜
第四節 太陽の覚悟
結局一時間以上その場から動けずに、ただただその場でうずくまっていた
しかし太陽はそれでも諦めずに、また心を落ち着かせては崖の前に足を運んだ
そしてその都度足が竦み、またその場にただただ倒れ込むのだった
何度繰り返しただろうか
もう心は擦り切れ疲弊しきっていた
太陽はそんな心を落ち着かせるように、荷物を置いた岩の陰で休んでいた
「僕は所詮、こんなちっぽけな人間で、やっぱり、何をしてもダメダメなんだ」
そう愚痴を溢しながらその場で、空を見上げる
そこには〝どんなに人が苦しんでいても〟常に照り続け人に〝確かな光〟を示し続ける〝太陽〟があった
「太陽、君からしたら所詮、僕ら人様の悩みなど、本当にちっぽけな物なのだろうな」
その太陽を見つめながら太陽はそう溢した
それが太陽にとって何かのきっかけになったのか、ふと心の中にあった〝言葉にできない感情〟が〝消えていく〟のを感じた
太陽はその時もう一度だけ〝自殺する〟ための〝死ぬ〟覚悟を決めた
「よし、もう迷わない、今度こそ、今度こそここから飛び降りよう」
そう言葉にしてようやく決心が決まった
その手は拳を握り締めていたが
そこにあれ程抱いていた〝不安〟や〝恐怖〟の感情はなかった
代わりに〝日常からの解放〟と〝安らかな気持ち〟などが確かにあった
そうして太陽はゆっくりと、崖のすぐ目の前にたった
「・・・」
とても心が落ち着いている
そこに吹き抜ける心地よい風を感じなら
〝今なら飛び降りられる〟
そう確信し、これまでに無い、とても安らかな気持ちでそこに立っていた
こうして本当に死ぬ直前になると、人は色々思い出すらしい
ただ太陽の人生は、どれも散々なものだ
両親が死んでしまった…
優しい親戚のお兄さんに裏切られた…
その後来た叔父さん夫婦に虐待された…
学校では今の時代では当たり前な、どこにでもよくある、いわゆる「いじり」の標的になった…
家では桜咲さんと暮らしているが、どこかよそよそしく接している事もあって最近では〝自分の居場所じゃない〟とそんな気さえしていた…
こうして客観的に見てみると本当に〝不運な運命〟というものだ…
そんなこれまでを太陽が振り返り終える頃には、とても強い意志でその場所に立っていた
そしてやっと、いざ飛び降りる為にその一歩を踏み出そうと動かした…その瞬間だった
そんな太陽の後ろから
「死ぬなんて勿体ないよ」
と若い男の声が聞こえてきた
その声に振り返ると、岩の上に青年が座っていた
それを見て太陽は少し驚いた
『ここは〝あの乱狂山〟で
この崖も〝あの必ず死ねる自殺の名所〟だ
まず興味本位で入る人はいないだろう
…では彼はなぜここにいるのか?
死にに来たのだろうか、いやそれはない!
もしそうなら、他人の自殺を止めるわけない
ここにくるのは死にたい奴だ
他人の死に同情するなんてありえない
なら彼はなんなんだ?』
そんな疑問が頭に浮かんだ
そんな疑問とともに太陽は
「お前は誰?」
と特に興味のないような、吐き捨てるような口調で問いかけるのだった
その言葉は太陽の中で〝自殺〟の瞬間を止められた事による、不愉快な〝気持ち〟を込めて〝運命〟に対し吐き捨てたものだった




