第五話 〜遺書〜
第四節 太陽の覚悟
昔を振り返っていた太陽は、しばらく黙って考え込むように座っていたが、机にあったペンを取ると紙に字を書き始める
〝遺書〟
その二文字を書き終えると同時に、太陽は自分の中にある何かが、スッと落ちていくように覚悟が決まった
「よし、決めた
明日あの崖から飛び降りよう!
そして・・・」
そう決意を今一度確認するように口にする
そうすると不思議なもので〝今すぐにでも死ねそうな気がした〟
太陽はこうして〝明日、死にに行く覚悟〟を決めた
そこまで自分で決めると、手がまるで川の流れのようにスラスラ動いた
結果的に書き始めた〝遺書〟はものの数十分程度で書き終わった
内容は〝桜野刑事〟や〝桜咲さん〟〝親友〟への感謝について書いていた
遺書自体書いた事もないから、書き始めは少し迷ったが、最終的にはこのように書き終えた
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〜遺書〜
私はこれまで多くの人に支えられ、見守られて生きてきました
この度、私 空道 太陽は自殺する事を決めました
お世話になった桜野 誠刑事に至っては本当に申し訳なく思います
覚えておられますでしょうか、親戚の夫婦に虐待された時の事を・・・
あの時は助けて頂き、本当にありがとうございました
あの時は心の底から嬉しく、言葉では言い表せないほどの感謝でいっぱいでした
一番辛い時に、地獄から〝救い上げて〟くれたのは他でもない桜野刑事さんでした
本当にありがとうございました
お世話になった桜咲海晴さん、今まで一緒に過ごしてくれて、本当にありがとうございました
出会った始めの時はすごく明るく接して頂き、とても嬉しかったです〈あの時は〝おじさん〟と言ってごめんなさい〉
心に傷を負った僕は、他人と触れ合うことすら恐れていました
そんな私に干渉せず見守り続けて今日まで居てくれたこと、僕にはとても救いになっていました
また毎日仕事が忙しくても、食事の時だけは一緒に食べるようにしてくれた事、本当はとっても嬉しかったです
今まで通り生活出来るように、側でずっと〝身守って〟くれたのは桜咲さんでした
これまでありがとうございました
最後に親友の2人
火海 雪
山道 雪
二人とはこれまで、いっぱいバカしたし、学校では〝いじり〟の時に支えてくれました
二人には返せないほどの恩でいっぱいです
「ふう」は…よく分からない事もあったけど
それでも一番優しくて、誰よりも僕を陰で支えてくれたのは君だった。すごく感謝してるよ
「ゆき」は、冷静のように見えて意外に感情豊かだったのが、始めの頃はすごく驚きました
でも〝ゆき〟が一番感情を荒げるのが、誰かのためだってこと知ってたよ
僕のことでもいっぱい怒ってくれたし、共に泣いてもくれた、、、本当にありがとう
二人はね、僕の中で一緒に〝重ニ(おもに)を背負って〟くれた大切な仲間でした
これまで、一緒にいれたこと嬉しかったです
本当にありがとう
まだまだ言いたい事はいっぱいあるけど、もうここで終わっておくね
お世話になった皆様
これまでどうも、ありがとうございました
西暦二〇四五年七月八日
空道 太陽
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『・・・こうして書いた物を振り返って、見返して見ると、僕なりに良いものができたと思う
わざと文字を変えてみるなど工夫も入れてみたり遊び心があって…』
書き終えた遺書を読み返した太陽は、そんな事を思いながら
少し悲しいような寂しいような気持ちで胸がいっぱいになり、しばらく自分で書いた遺書を見つめていた
それからふと時計に目を向けると二十二時半過ぎを示していた
「もうそろそろ寝る時間だ」
時計を見てそう呟くと、とりあえず書いた遺書は、誰にも見られないように机の中にしまった
片付け終えて寝間着に着替える頃には、二十三時近くで自然と眠たくなる時間になっていた
「眠い、、、仕方ないな、今日はもう休むか」
目をこすり、手を伸ばしながらあくびをしてそう呟くと布団に入った
布団に入るとそのまま太陽は、呑み込まれるように眠りに落ちるのだった




