第96話 三人の誓い
今回はヒカリ達の誓いです!
零夜達は地下通路を通りながら、次の部屋に進んでいた。そこは最初に通った時と同じ様な景色だが、慣れていると問題なく進めるだろう。
「地下の通路ってなんだかジメジメしそう……」
「私、怖くて震えそうかも……」
日和と椿は辺りを見回しながら震えそうになり、ヒカリ達も思わず同意してしまう。しかしエイリーンは平然と進んでいて、問題なく歩いているのだ。
「私はこういう雰囲気はへっちゃらです!鉱山でよく働いて……キャッ!」
エイリーンは笑顔を見せるが、また床に滑って転んで尻もちをついてしまった。それを見たりんちゃむはため息をついた後、エイリーンに近付いて彼女を支えながら立ち上がらせる。
「よく転ぶけど、大丈夫?」
「いつもの事ですから……」
りんちゃむの心配な表情に対し、エイリーンは苦笑いしながら答える。そのまま先に進もうとしたその時、いきなりヒカリのスマホに着信が入る。
「あっ、確認するね。もしもし……」
ヒカリはスマホの着信に応じ、すぐに通話を始める。するとその内容に彼女は驚きを隠せず、俯きながら頷いた。
そのまま通信が切られたと同時に、ヒカリは一斉に零夜達に視線を移す。その目には涙が浮かんでいて、今にも泣きそうになっていた。
「皆……刈谷君だけど……病院に着いたのはいいけど、このままだと死んでしまうって……」
「「「ええっ!?」」」
ヒカリは涙を流しながら、刈谷の現状を説明する。その内容に零夜達は驚きを隠せず、誰もがざわついてしまうのも無理なかった。
刈谷は陽炎によって大ダメージを受けてしまい、そのまま病院に搬送される事になった。そのダメージは深刻で命に関わる事もある為、できる限りの治療を行うとの事だ。
仮に治癒ができるトワや倫子、日和ならこの治療を治せると思うが、現在は地下迷宮にいるので任務を放り出せる事ができないだろう。
「ここはクローバールに連絡して、モーリスという治癒師を呼ぶ必要があるみたいだな」
「取り敢えず彼に連絡しておくわね!」
ヤツフサの真剣な提案に対し、トワは了承しながらすぐにハルヴァスにいるモーリスへ連絡する。トワ達が任務でいない分、彼の力を借りるしか方法はないだろう。
「あとは逃走ロワイアルについてだけど、私達はエリア外に出たから失格だって」
「そうですか……でも、後悔はしていないのですか?」
ヒカリの更なる報告を聞いた零夜は、心配そうな表情で彼女達に質問する。それを見た三人は失格になったにも関わらず、ニッコリと笑顔で返していた。
「大丈夫。私達は後悔していないから」
「逃走ロワイアルよりも、そっちの方が楽しいしね」
「それに日和が戦いで頑張っているし、サポートをすると決意したから」
三人の意見を聞いた零夜は笑みを浮かべた後、彼女達に向けて手を差し出す。するとヒカリも零夜の手を握り、笑顔で応えていた。
「では、この任務のサポートを宜しくお願いします!」
「任せて!」
零夜とヒカリが笑い合った直後、椿とりんちゃむも自身の手を二人の握手に重ねていく。このサポートは最後までやり通す覚悟を決めた以上、逃げ出す理由にはいかないのだ。
「よし。そろそろ先に行こうか」
エヴァの合図で全員が頷いた直後、零夜のバングルから通信が入る。彼はウインドウを開いたと同時に画面を起動すると、メリアが慌てた様子で姿を現していた。
「メリアさん!」
『大変です、零夜さん!先程新たな情報をキャッチしましたが、Dブロックが神田裕二とパルルによって滅ぼされました!』
「な!?」
メリアからの緊急報告が伝えられ、その内容に零夜達は驚きを隠せずにはいられなかった。まさか自分達が地球にいる間、ヴァクロスが本格的に動き出したのは想定外と言えるだろう。
『恐らく零夜さん達が地球に向かった事で、ヴァクロスが本来の目的を果たす為に動き出したみたいです。何れにしても激戦は避けられないでしょう』
メリアからの報告に零夜達は冷や汗を流しながら、ゴクリと息を飲んでしまう。しかし何が何でもハルヴァスと地球を救う為なら、どんな困難や強敵でも必ず倒すと決意しているのだ。
「分かりました。相手がヴァクロスや悪鬼であろうとも、必ず奴等を倒してみせます。奴等の思い通りにさせない為にも!」
『了解です。では、お気をつけて!』
メリアからの通信が終わった後、零夜達は真剣な表情をしながら前を向く。今は余計な事を考えず、任務に集中するべきだと感じているのだろう。
すると前方からズシンズシンと音が聞こえ始める。恐らく大型のモンスターが来ようとする合図なのだろう。
「モンスターが来ます!すぐに戦闘態勢を!」
日和の合図で全員が戦闘態勢に入った直後、フランケンが姿を現した。しかもその大きさは二メートルあるので、どう倒せば良いのかがカギとなるだろう。
「あれがフランケン……かなり大きいわね……」
「下手をすればやられる可能性もあるし、警戒しながら倒しに行くしかないわ」
倫子とアイリンは冷や汗を流しながらも、警戒しながら戦闘態勢に入った。フランケンが何かを仕掛ける前に倒さなければ、逆にやられるパターンもあり得るだろう。
「よし!行くぞ!」
「待って!」
「「「?」」」
零夜の合図で彼等が駆け出そうとするが、突然椿が待ったをかける。零夜達が疑問に感じる中、椿はフランケンに視線を移しながら彼に近付き始めたのだ。
「つばきん!危ない!」
日和が椿に向けて叫ぶ中、彼女はフランケンの前にピタッと立ち止まる。そのまま彼に視線を合わせたと同時に、ニッコリと微笑みを見せた。
「大丈夫。私はあなたを攻撃なんかしないわ。あなたは見た目で皆から怖がられているのよね?」
椿の質問にフランケンはコクリと頷き、その光景に零夜達は驚いてしまう。あの怖いフランケンに対し、椿が優しく接しているのは凄いとしか言えないだろう。
「私が側にいるから大丈夫よ。あなたは一人じゃないんだから」
椿の笑顔にフランケンはコクリと頷き、彼女を抱えて自信の肩に乗せたのだ。これによってフランケンは椿のパートナーとなるだけでなく、零夜達の仲間として行動する事になったのだ。
「凄い!あのフランケンを仲間にするなんて……」
「私だってやる時はやるのよ。それにりんちゃむはエイリーンを支えているし、ヒカリさんは零夜の面倒をよく見ているから」
日和は椿が指差す方をよく見ると、りんちゃむはエイリーンの服についている埃を両手で払い除け、ヒカリは零夜の頭を撫でながら優しく接している。彼女達の懸命なサポートがあるからこそ、零夜達が落ち着いて行動できるのだ。
「そうなんだ……私も負けられないし、八犬士の一人として頑張らないと!」
「その意気よ!さっ、先に進みましょう!」
日和の誓いに椿はウインクした後、彼女達は先に進み始める。お互い負けられない気持ちを、心から強く持ちながら……
※
フランケンを仲間に加えた零夜達は、第二の部屋の入口を見つける。そこは普通の場所であるが、いつもとは違う雰囲気を漂わせている。
「この先に敵がいるみたいね。すぐに向かわないと!」
マツリの合図で全員が部屋に入ると、そこは何もない四角の部屋だった。特に何も装飾はなく、ただ普通の場所其の物である。
「ここは一体……」
倫子達がキョロキョロ辺りを見回す中、零夜はこの部屋の正体がすぐに分かっていた。そのまま冷静な表情で息を吸い込んだと同時に、すぐに目を見開く。
「この部屋での試合方法が分かったぜ……!プロレスでの勝負だろ?」
零夜が冷静に推測したその時、天井から一人の男が降り立ってきた。その男はとても筋肉質で、黒い覆面を着用している。この様子からすればヒールレスラーであるのは間違いないだろう。
「正解だ!俺はCブロックのヒールレスラー、ブラックファントムだ!」
ブラックファントムは零夜達に自己紹介したと同時に、ガッツポーズである決めポーズを取っていた。零夜は真剣な表情で睨みつけ、この部屋は一気に緊迫感が高まり始めたのだった。
ヒカリ達は零夜達の力になる事を決意。彼女達のこれからに注目です!




