第89話 いざ幕張
いよいよ大晦日の任務が始まります。
クリスマスイブから2日後、零夜はこの日午後年休を取りながら家に戻っていた。この日は仕事納めだけでなく、ヤツフサから緊急のお知らせがあるとの事だ。
(緊急のお知らせと言っていたが、恐らく大変な事であるのは変わりないな……)
零夜が心の中で思いながら、ヤツフサからのお知らせに対して疑問に感じる。それがどんな内容か気になる中、ようやく自分達の家である屋敷に辿り着いた。
「只今戻りました!」
零夜は決意したと同時に扉の中に入ると、そこには倫子達の姿もいた。彼女達もヤツフサに呼び出されていて、急いで帰ってきた事で今に至るという事だ。
「皆さんも帰って来ていたのですね」
「ええ。恐らく幕張の地下の件について、何か話があるみたい」
「えっ? 何か分かったのですか?」
倫子の推測に零夜が首を傾げる中、ヤツフサが皆に視線を移す。その様子だと何か言いたい事があるが、恐らく幕張の地下の事で、新たに何か分かった事があるのだろう。
「全員揃ったな。今回の件の任務だが、大晦日に実行する事になる」
「大晦日……、ですか?」
ヤツフサからの説明を聞いた零夜達は、真剣な表情をしながら疑問に感じる。今すぐにでも出発したい気持ちはあるが、何故大晦日にやるのか気になるのも無理はない。
「そうだ。悪鬼の動向を調べてみたが、奴等は大晦日に幕張ネオンモールへと向かう事が判明された」
「悪鬼が!?」
ヤツフサからの衝撃の報告に、零夜達は驚きを隠せずにいた。まさか自分達のやり取りが聞かれていた可能性があるが、恐らくこの戦いは一筋縄ではいかないと思うだろう。
「奴等と戦う事になれば、死闘になるのは間違いない。むしろ避けられないと言うべきだろう」
「そうなると仇討ちのチャンスもあり得るけど、こうなると激戦は免れないかもね……」
ヤツフサの説明を聞いたトワは、真剣な表情をしながら今後の展開を考え始める。仮に自分達がネオンモールにある謎を解こうとしたその時に、悪鬼に攻められてしまえば大変な事になる。そうなると店の中が荒れてしまうのは確実であり、下手をすれば破壊されてしまうケースもあり得るのだ。
「奴等は私達の居場所をサーチして、そこに転移する可能性もあり得ますし……」
「先に遺跡に突入して、待ち構える手もあるからね」
エイリーンとマツリの意見に対し、誰もが皆同意する。悪鬼の事だから神出鬼没と言えるし、独自の手で先に侵入している可能性もあり得る。そうなると戦いは避けられそうにないだろう。
「けど、この日の大晦日には撮影や収録が行われていたりしているんじゃ……」
「調べてみるわね」
日和は疑問に感じながら推測する中、アイリンはバングルを起動させてウインドウを召喚。そのまま幕張ネオンモールでの撮影や収録があるかどうか、正確に確認し始めたのだ。
するとある画面を見た途端、アイリンは深刻そうな表情になってしまう。どうやら重大な事があったに違いない。
「幕張ネオンモールだけど……、逃走ロワイアルの生放送撮影が行われるみたい……」
「何!?」
アイリンからの報告にその場にいる全員が驚きを隠せず、ヤツフサに至っては深刻そうな表情を浮かべていた。まさか逃走ロワイアルの生放送撮影が行われるとは想定外であり、テレビ局に見つかってしまえば対応に追われて任務どころではないだろう。
更には参加者の名簿も確認され、そのメンバー表を見た零夜達は深刻そうな表情をしてしまう。
「厄介な展開になってしまうとはね……。下手して見つかってしまったら大騒動になりそう……」
「そうなると任務どころじゃないし、絶対テレビ局は私達を追いかけて来ますからね……」
倫子と日和の真剣な推測に、零夜達も危険を感じながら同意をする。テレビ局が自分達を見つけてしまえば、必ず取材に向かってくるし、任務どころではない。秘宝の事まで伝えれば、テレビ局も黙ってはいられないからだ。
「ご尤もですね。にしても……、逃走者の名簿の中にヒカリさんまでいるなんて……」
「私もつばきんがいるとなると、流石に困っちゃうな……」
逃走ロワイアルの参戦者には零夜を慰めていた橘ヒカリだけでなく、日和の所属しているアイドルグループ「WDG48」から八重樫椿も登録されている。任務の最中で彼女達に遭遇してしまえば、騒ぎになってとんでもない展開が予測されるだろう。
更に今回の逃走者におけるタレントとアイドルの女性は、今の二人を含めて三人。後はミュージシャン、芸人、スポーツ選手、一般人2人も参加している事が判明されているのだ。
「そうなると俺達も彼等に見つからない対策を練らないとな……。大晦日まで時間があるし、対策をすぐに話し合おう」
アイリンからの情報を聞いた零夜は真剣な表情をした後、すぐに作戦会議を行う事を決断。それに倫子達も真剣に同意し、皆で対策を話し合い始めた。
「ステルス機能は使えない分、ドジをせずに隠れながら進むしかない」
「カメラなどが目を逸らした隙に、素早く駆け出して張り紙のある場所へ向かわないとね」
「どんな謎かについてはまだ不明だし、見なければ分からないかもね」
零夜達は大晦日の戦いを真剣に話し合いながら、様々な意見を出し合っていた。この任務は失敗は許されず、どうやってその場を乗り切れるのか真剣に話し合いを重ねているのだ。
(この戦いは一筋縄ではいかず、今年の大晦日を無事に乗り越えられるのか気になるな……)
ヤツフサは真剣な表情をしながら、零夜達に視線を移していく。そのまま心の中で思いながら、何事も無事で終われる事を祈るしか無かった。今回の戦いでは悪鬼だけでなく、テレビ局やタレント達までいる。何れにしても一筋縄ではいかないだろう。
※
そして大晦日。ついにこの時がやってきた。零夜達は幕張ネオンモール前の入口に立っていて、全員が戦闘服になっている。ここから先は任務に取り掛からなければならないので、真剣に立ち向かわなければ失敗してしまう恐れもあるからだ。
「いよいよ任務開始です。その前に円陣を組んで気合を入れましょう!」
零夜の合図で八犬士全員が円陣を組み始め、ヤツフサは彼等の中央に移動する。そのまま真剣な表情をしたと同時に、八犬士達に声掛けを始める。
「今回の任務についてだが、最初からかなり危険な展開となっている。更に様々な障害まで待ち構えているが、それを乗り越えてこそ八犬士だ」
「ヤツフサさんの言う通りです。皆の力で……、絶対に任務を達成しましょう!行くぞ!」
「「「おう!」」」
ヤツフサの説明と零夜の合図と同時に、倫子達は一斉に叫びながら応えた。そのまま彼等は3グループに分かれ、3つの謎を解きに向かい出した。
その様子を電柱の影から見ている男がいた。その姿は零夜と同じ忍者だが、黒い忍び装束を着ているのが特徴である。彼はバングルからの通信を受け取り、ある者と連絡し始めた。
「分かりました。作戦を実行します」
忍者はそのまま一礼したと同時に、その場から転移して姿を消した。これが任務における大騒動になるとは、この時は誰も思わなかったのだった。
任務スタート!作戦はどうなるのか!?




