第88話 新たな強敵軍団
クリスマスイブの戦い、スタートです!
零夜とハスラーの一騎打ちが始まりを告げられ、両者とも一歩も引かない展開を繰り広げていた。ハスラーは自身の武器である拳で挑んでいて、零夜もそれに応じて拳で挑んでいる。お互い武器を使わずに正々堂々戦う。まさにクリーンなファイトとして相応しいだろう。
「なるほど。流石は神田と互角に渡り合える実力を持つな」
「ん? 裕二を知っているのか?」
ハスラーは零夜の実力を賞賛しているが、彼は裕二という言葉に反応する。自分自身と互角に戦っていた裕二を知っているとなれば、黙っていられずに反応してしまうのは当然である。
「そうだ。裕二はヴァクロスの中でも上位クラスだ。しかし上には上がいる。俺がその一人だ!」
「つまり裕二の様にはいかないと言う事か! 厄介な相手を引いてしまったかもな……」
零夜は冷や汗を流しながら、裕二より強い奴がいる事を実感してしまう。とんでもない強敵と当たってしまったが、内心では強い奴と戦える事にドキドキしていた。
「さあ、ここからは本気で行かせてもらうぜ。まずはこいつを喰らえ! バイオニックエルボー!」
「ごはっ!」
ハスラーは腕に強烈な闇のオーラを纏い、そのまま肘を零夜の胸板に激突させる。零夜は勢いよく吹っ飛ばされてしまい、地面を転がりながら倒れてしまった。
「クソ……、今の一撃は効いたかもな……。だが、俺だってここで止まるかよ……」
「まだまだ行くぞ!」
零夜は胸板を抑えながら立ち上がるが、ハスラーの猛攻は止まらない。次は強烈なタックルを仕掛けようと、全速力でダッシュしながら立ち向かってきたのだ。
「そうはいくか!」
「何!?」
しかし零夜はアクロバティックな動きで攻撃を回避し、強烈な空中回転の蹴りを喰らわせようとする。零夜は忍者の実力を持つからこそ、機転を利かせた動きを得意としているのだ。
「風魔回転脚!」
「がはっ!」
強烈な零夜の一撃がハスラーの側頭部に炸裂し、彼は頭部に大ダメージを受けてしまう。しかしハスラーは持ち前の根性で立て直し、真剣な表情をしながら零夜達を睨みつけていく。
「なかなかやるな。しかし、この程度で俺を倒すなど百年早い!」
「何!? うわっ!」
零夜は左手で零夜の首を掴んだと同時に、そのまま上空へ放り投げる。すかさず自らも上空に飛んだと同時に、彼を捕まえてパイルドライバーの態勢に入ろうとしていた。
「そうはさせるか! 忍法変わり身の術!」
「な!?」
零夜は変わり身の術で木の棒とすり替わり、見事空中パイルドライバーからの脱出に成功。そのままハスラーは地面に尻を激突してしまい、激痛となるダメージを負ってしまった。
「お、おのれ……! こんな展開ありなのかよ……!」
ハスラーは尻を抑えながら片膝を地面につけた直後、零夜は地面に着地してすぐに駆け出していく。そのままスピードを上げたと同時に、強烈な膝蹴りをハスラーの顔面に浴びせたのだ。
「こいつを喰らえ! 隼蹴り!」
「ぐはっ!」
ハスラーは零夜の膝蹴りを喰らった衝撃で、そのまま仰向けに倒れてしまう。それを見た部下達は武器を落としてしまい、零夜の強さに恐れ始めてしまった。この光景を見れば、殺されてしまうと判断しただろう。
「ハスラー様が負けた……! あの八犬士の一人に……」
「に、逃げろー!!」
部下達は零夜の恐怖に怯えてしまい、後ろを向いて逃げ出してしまった。同時にクリスマスの騒動は終わりを告げられ、零夜は手を叩きながらハスラーを見下ろしていた。
「いくら裕二より強くても、俺はその先を見ているからな。約束通り目的を話してもらおうか」
零夜からの鋭い睨みを受けたハスラーは、観念したと同時に話す事を決断。そのまま身体を起こしたと同時に、ヴァクロスの目的を話し始めた。
「我々ヴァクロスはハルヴァスを侵略する為に設立された。悪鬼の軍団が地球を侵略しようと動き出したのを切欠に、ボスであるザルバッグはその世界を侵略しようと立ち上がった……」
「ザルバッグ? そいつは誰だ?」
ハスラーの説明を聞いた零夜は、ザルバッグについて疑問に感じてしまう。ボスの名前は分かったが、ザルバッグという男に関しては初めて聞く名前だ。どんな人なのか全く知らないのも無理はない。
「ザルバッグ様はお前達八犬士より強い存在で、お前達が束になっても叶う筈はない。タマズサとなると……、話は別になるけどな……」
ハスラーが零夜に対してそう宣言したその時、コツコツと足音が聞こえ始める。すると零夜の身体に大量の冷や汗が流れたと同時に、恐怖心を感じ始めてしまった。
この様な事は初めてであり、ただ立ち尽くすしか無かっただろう。
「ざ、ザルバッグ様……!」
ハスラーはすぐに立ち上がり、その人物に対して冷や汗を流しながら一礼する。ザルバッグは白い髪の若い男性で、見ていただけでも絶対的な圧のオーラを出している。年齢で言えば零夜と同じぐらいだろう。
「ハスラー……、誰がこんな事をしろと言った。俺達の目的はハルヴァスだろ」
「し、しかし、アベック共の根絶やしの為には……!」
「くどい!」
ハスラーは冷や汗を流しながら弁明しようとするが、ザルバッグはそれに応じず。そのまま彼の心臓部分に手を当てた直後、魔術を唱え始めた。
「デスハンド!」
「がっ!」
強烈な振動魔術がハスラーの心臓部分に炸裂し、彼は前のめりに倒れて動かなくなってしまう。そのままハスラーは光の粒となって消滅してしまい、夜空へと舞ってしまった。
「ハスラーが……、一発で……」
零夜が冷や汗を流しながら驚く中、ザルバッグは真顔で彼に視線を移す。そのままじっと彼の顔を見つめた後、後ろを向いて立ち去ろうとしていた。
「八犬士の一人……、東零夜……。覚えておくとしよう」
ザルバッグは零夜に対してそう宣言した後、その場から転移して消えてしまった。すると倫子達が急ぎながら駆けつけ、零夜の元に駆け寄ってきた。
「零夜君……。騒動、終わったの?」
倫子は心配そうな表情で零夜に質問していて、彼はコクリと頷く。すると零夜は倫子に抱き着いたと同時に、ゆっくりと抱き締めた。
「新たな敵である……、ヴァクロスが現れました……。けど、俺は……、そのボスを前に……、動けなかった……」
零夜は震える様な声をしながら、今まで起きた事を正直に話し始める。まだザルバッグに対する恐怖が残っていて、身体の震えも止まらずにいた。
その様子を感じた倫子は零夜をゆっくり抱きしめ返し、彼の頭をよしよしと撫で始めた。
「大丈夫。ウチ等が付いているから。心配しなくても大丈夫」
「はい……。ありがとう……、ございます……」
零夜は我慢できずに涙を流してしまい、それを見たエヴァ達も彼の周りに集まって慰め始める。この姿こそ友情のありがたみが分かるだけでなく、皆が一致団結している証拠でもあるのだ。
(零夜。お前は一人ではない。こんなにも大切な仲間がいるからこそ、抱え込まなくても大丈夫だ。今は思いっきり泣いて、ここから前を向いて頑張ってくれ)
ヤツフサはこの様子を見ながら、心の底からそう思っていた。零夜ならこの恐怖を乗り越えて強くなる事を信じながら……。
※
その後、事件も無事に解決し、零夜達の家でクリスマスパーティーが行われた。彼等八犬士は勿論、モンスター達も参加して盛大なパーティーとなっているのだ。
「クリスマスパーティーは初めてだけど、面白くて最高ね!」
エヴァはフライドチキンを食べながら喜んでいて、零夜に声をかけている。トワ達も食べたり談笑したりで、初めてのクリスマスパーティーを楽しんでいるのだ。
「ああ。クリスマスパーティーは皆で参加すれば……、その分楽しさも増すからな!」
零夜の笑顔に対し、エヴァも笑顔で応える。今年のクリスマスイブが盛り上がっている中、外ではそれを祝うかの様に白い雪が降っていたのだった。
新たな強敵であるザルバッグ。彼との戦いは今後どうなるかですが、避けられない展開なのは確定です。




