第87話 クリスマスの襲撃事件
今回はクリスマスに事件が起こります。
零夜達が地球へと帰還してから4日後、世間ではクリスマスシーズンとなっていた。港区では何処もかしこもクリスマスの雰囲気が漂っていて、カップル達が多く歩いているのが見かけられる。
「今日はクリスマスイブか。にしても、何処もかしこもカップルばかりだよな……」
新宿にある会社で仕事中の零夜は、窓の外に映るビルの真下の景色に視線を移していた。そこにある歩道では多くの人が歩いているが、殆どが若いカップルばかり。クリスマスシーズンだから、しょうがないと言えるだろう。
「まあ、こっちは仲間達がいるから関係ないけどな。残る仕事はこれだけだから、早めに終わらせるか!」
零夜は書類を手に取って仕事を再開しようとしたその時、誰かが彼の肩を叩いてきた。しかもその重みによる恐怖が全身に伝わり、異常事態である事を予測しようとしているのだ。
「一体何が……、うわっ!」
零夜が後ろを向いた途端、いきなり驚きを隠せずに椅子から転げ落ちてしまった。その後ろでは長谷川率いる会社の同僚達が、嫉妬心を燃やしながら零夜を睨みつけていた。しかもそれぞれの推しの名前が付いた鉢巻を巻きながら……。
「お前等! 何やっているんだよ!」
「お前、倫子ちゃんや日和ちゃん達と同棲しているみたいだな……」
「えーっ!? あれは偶然というか、八犬士としての使命だからしょうがないだろ!」
長谷川達からの睨みに、零夜は慌てながら説明をしまくる。今回の同棲の件は八犬士としての絆を深める為だけでなく、チームとして行動する事を自覚する為に計画されているのだ。
しかし長谷川達としては、零夜が自身の推し達と同棲しているのを心から恨んでいるのだ。たとえそれが八犬士と使命であろうとも、同棲している事に変わりはないだろう。
「しょうがないで済むか!お前だけ八犬士になって良い思いしやがって!」
「そうだぞ! 俺達に交代してくれ!」
「できるか! 仮に交代しても、逆に皆から殴り飛ばされて死ぬのがオチになるぞ!」
長谷川達は零夜と交代して欲しいと圧をかけて懇願するが、零夜は慌てながら忠告をしていく。特にエヴァと倫子はギロリと目を光らせたと同時に、邪魔する奴は容赦なく始末する可能性が高いのだ。
「それに悔しかったら嫉妬なんかしてないで、自分で彼女を作ってみろ! そんなんだから女にモテないんだよ!」
「「「ぐはっ!」」」
零夜からの最大の指摘を受けた長谷川達は、口から血を吐きながら倒れてしまう。自分には彼女がいないのは勿論であり、カップルを見て嫉妬するのも少なくない。しかし今の正論を言われてしまえば、倒れてしまうのも時間の問題であろう。
「やれやれ。仕事を終わらせるか」
零夜は倒れている長谷川達を放っておいて、すぐに書類を手にとって仕事に取り組み始める。そのまま仕事は問題なく進み、上司に手渡して報告をした。
「よし。今日はもう良いぞ」
「では、失礼します」
零夜は上司に対して一礼した直後、終業のベルが鳴り始める。それは仕事が終わった瞬間であり、零夜はすぐに片付けに取り組み始める。
「長谷川達については私に任せて、君は普通に帰りなさい」
「では、そうさせてもらいます」
上司からの指示に零夜は笑顔で応えた後、すぐに荷物を鞄に入れてその場から立ち去る。倒れている長谷川達もようやく起き上がり、トボトボと帰り始めたのだった。
※
「まったく! 彼奴等は何を考えているんだ……」
零夜は街中を歩きながら、盛大なため息をついていた。会社で同僚に嫉妬されるのも無理ないが、彼等はそんなに大した人間じゃない事を零夜は見抜いている。それを指摘した途端に一斉に倒れてしまうのは、明らかにモテない証拠と言えるだろう。
「さてと、俺も帰りに何か買っておかないとな。チキンやケーキとかは皆が用意してくれるし……」
「あっ、零夜君!」
「倫子さん!」
零夜は帰りに何を買おうか考えたその時、倫子が彼の前に姿を現す。彼女も仕事が終わって帰りに何か買おうとしていたのだ。
「零夜君も仕事帰りなん?」
「ええ。同僚達に絡まれて大変な事になりましたからね……」
零夜は苦笑いしながらも倫子の質問に応え、その内容に彼女は苦笑いしてしまう。まさか同棲している事でこんな展開になってしまうのも無理はなく、どうする事もできないのは当然と言えるだろう。
「取り敢えずはプレゼント買おうか。零夜君はどうするの?」
「俺は……」
零夜が言い切ろうとしたその時、何処かで爆発音が発生する。同時に悲鳴も響き渡り、人々が逃げ惑っている姿が見えた。
「一体何が……」
「もしかしてあれやない?」
倫子が指差す方を見ると、褌姿の男達がカップルに次々と襲い掛かっていた。どうやらクリスマスに浮かれている奴等に天誅を与えるべく、この様な行動を起こしたのだろう。
「ヒャハハハ! アベック狩りじゃ!」
「アベックの奴等は殺しまくれ! 他は手を出すな!」
「ぐはっ!」
「嫌ァァァァァ!!」
男達はカップルに次々と天誅を与えながら破壊活動を行い、容赦ない攻撃を仕掛けていた。モテない男達の気持ちは分からないでもないが、いくら何でもやりすぎと言えるだろう。
「大変! 変な集団がカップルを攻撃している! このままだとクリスマスが大変な事に!」
目の前の光景に倫子は驚きを隠せず、零夜は真剣な表情でこの光景を見つめていた。すると彼はすぐに衣装を戦闘スタイルに変え、騒動の火元へと向かおうとしているのだ。
「倫子さんは皆に連絡を! 俺は奴等を止めに向かいます!」
「分かった! あまり無理はしないでね」
「大丈夫です!」
倫子はエヴァ達に連絡を始めたと同時に、零夜は騒動の火元へと向かい出す。せっかくのクリスマスなのに騒動を起こしてしまえば、とんでもない惨劇になってしまうのも時間の問題と言えるだろう。
(彼奴等、何処まで騒動を起こせば気が済むんだ……!)
零夜が心の中で騒動の元凶に怒りを感じつつ、男達へと襲い掛かる。彼は手元に手裏剣を構えたと同時に、敵に狙いを定めながら投げ飛ばした。
「がはっ!」
「ぐほっ!」
「ぐげっ!」
手裏剣を喰らった男達は、次々とダメージを受けながら倒れていく。しかし零夜は男達に向けて容赦なく手裏剣を投げ続け、次々と敵の数を減らしていくのだ。
「残り後半数か! しかしとんでもない奴等だぜ!」
零夜が敵の数を確認しながら手裏剣を投げまくったその時、彼の前に一人の男が姿を現す。その男も褌姿だが、筋肉質でねじり鉢巻きを着用しているのだ。
「俺の部下達を次々と倒すとは……、どうやら死にたいみたいだな……」
男は腕を鳴らしながら、前方にいる零夜を睨みつけていく。自分の部下達をここまで倒した以上、黙っている理由にはいかないだろう。
「何者だ?」
「俺の名はハスラー斎藤。秘密結社「ヴァクロス」の一人だ」
「秘密結社? 聞いた事無いな……」
ハスラーの自己紹介を聞いた零夜は、思わず疑問に感じながら考え始める。ヴァクロスと言う組織は聞いた事がなく、初めてであるのだ。
「俺達は八犬士という存在が目障りであり、奴等を野放しにすれば目的の妨げになるからな」
「目的だと? どういう意味か教えて貰おうか!」
ハスラー率いるヴァクロスは、零夜率いる八犬士という存在が邪魔である事を認識。彼等を野放しにすれば、目的が壊滅する恐れがある事を警戒している。零夜は真剣な表情でハスラーに質問するが、彼は拳を強く握りしめながら戦闘態勢に入る。
「知りたければ倒す事だな! 行くぜ!」
ハスラーはマッスルポーズで戦闘態勢に入り、零夜も警戒態勢で格闘技の構えに入る。同時にクリスマスの戦いも、後半戦に突入しようとしていたのだった。
元凶と相対した零夜。果たしてどうなるのか!?




