第82話 ネムラスからの最後の依頼
今回は戦いの切欠となる話です。
「なるほど。トワさんによってEブロック基地の隊長は始末する事に成功。基地も破壊したのですね」
「ええ。全て事実です」
零夜達はクローバールにあるギルドへと戻り、メリアに一部始終を話し始めた。それを聞いた彼女は納得の表情をしていて、トワに視線を移していく。
「トワさん。私達はあなたを歓迎します。八犬士の一人として、ギルドの一員として宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくね」
メリアの一礼に対し、トワも笑顔で返していく。これでトワもギルドの一員として認められ、零夜達と共に様々なクエストを受けられる様になった。
あとはクエストのランク階級。以前ギルドに入っていた者には、その時のランクが適用されるシステムとなっている。しかしトワの場合はどうなのか気になるが、まずは以前ギルドに所属しているのか話を聞く事に。
「では、ギルドは以前参加した事はありますか?」
「ええ。ネムラスの街でギルドに所属していて、その時はSランクだったわ」
トワは自身のクエストランクを説明し、その内容に誰もが驚きを隠せずにいた。また新たなSランクの者が出たとなると、ギルドにいる者達も騒然とせずにはいられないのだ。
「またSランクが出やがったか!」
「八犬士の奴等はSランクばかりなのか!?」
「凄すぎるだろ……」
ギルドメンバーは冷や汗を流しながら零夜達を見つめていて、彼等は苦笑いをしてしまう。本来は怖がらせるつもりはないのに、まさかこんな事になるとは思ってなかったのだろう。
「では、Sランクで登録させてもらいますね。ギルドクエストはこちらのボードにあります!」
「分かったわ。じゃあ、依頼を出す事も可能かしら?」
「はい。可能ですが……、何かあったのですか?」
トワは依頼も出せるのかメリアに質問し、彼女は頷きながらも疑問に感じてしまう。いきなり登録したにも関わらず、ギルドに依頼を出すのは前代未聞と言えるだろう。
それに零夜達も疑問に感じながら、トワに視線を移していく。彼女の表情は暗く落ち込んでいて、俯いた状態で泣きそうになっているのだ。
「何かあったのか?」
「実は……、ネムラスのギルドマスターからの依頼を持ってきたの。『わし等が守り続けていた秘宝を見つけてくれ』と」
「「「ええっ!?」」」
トワからの衝撃発言を聞いた零夜達は、一斉に驚きを隠せずに叫んでしまう。メリアは両手で口を抑えてしまい、ギルドのメンバー達も予想外の展開にざわついてしまう。
まさかネムラスのギルドマスターからの依頼内容が、自分達の秘宝を見つける事だと誰も予想しなかっただろう。
「ネムラスと言ったら……、確か悪鬼に滅ぼされた街だと聞いているわ。何かあったのか教えてくれない?」
「ええ。あれは一週間前の頃だったわ」
アイリンからの真剣な頼みに、トワは冷静に頷いてその時の事を真剣に話す。彼女からの話に誰もが真剣に聞き始め、この場一帯に緊迫の空気が流れ始めたのだ。
※
一週間前、ネムラスの街に悪鬼の軍勢が襲来。突撃しに来たのはCブロック隊長のリッジで、彼の指示によってモンスター達が住民達を虐殺しているのだ。
「ぐわっ!」
「うけまるっ!」
「これ以上被害を出してたまるか!」
住民達は次々とやられてしまう中、ギルドメンバーも必死で抵抗しながら立ち向かっていく。モンスター達は問題なく倒せるが、リッジの攻撃の前に次々と倒れる者が続出しているのだ。
「どうした? お前等の程度はそんな物か?」
リッジはあくどい笑みを浮かべながら、倒れているギルドメンバーに向けて言い放つ。彼等は恨めしそうな表情をしながらも、何も反論ができずに俯くしかなかった。
その頃トワはギルドマスターであるシュンラと共に、建物の物陰に隠れながら話をしていた。二人が敵に見つかるのも時間の問題だが、重大な話なので今こそ話す時だと判断しているのだろう。
「えっ? クローバールにいる八犬士に依頼ですか?」
「そう。わし等は異世界のある場所に、ギルドにおける秘宝を全て隠している。それを悪鬼の連中よりも先に、お前と八犬士のメンバーで探して欲しいのじゃ」
シュンラからの真剣な話に、トワは納得の表情をしながら真剣に頷く。仮に悪鬼によって秘宝が奪われたりしたら、悪用されてとんでもない事になるだろう。
「因みにこれが地図とメモじゃ。ほれ」
シュンラは秘宝が眠る地図とメモ用紙を手元に召喚し、それ等をトワに渡す。彼女は確認したと同時に、其れ等を粒子化させて自らのバングルに入れたのだ。
「シュンラ様は?」
「わしはこの街と運命を共にする。お前は必ず生き延びて、クローバールにいる八犬士と合流しろ。そのバングルがあるのなら、彼等はお前を仲間に入れてくれるじゃろう……」
シュンラはトワの右手首にあるバングルに視線を移し、精一杯の笑顔を見せる。この先自分が死んでいなくなっても、八犬士の仲間がいるのなら大丈夫だと信じているのだ。
するとゴブリン達が姿を現し、武器を構えながら襲い掛かってくる。シュンラは杖を構えながら魔術を解き放ち、ゴブリン達を倒しまくっていく。
「行け、トワ! 必ず奴等から生き延びて、八犬士達の元へ向かえ! これは命令じゃ!」
「……はい!」
シュンラからの最後の命令を聞いたトワは、涙を流しながら真剣に頷く。そのまま彼女は後ろを向いたと同時に、急いでこの場から駆け出し始めた。自分自身の役目を果たす為、何事も振り返らずに真っ直ぐ突き進んでいく。今の彼女にはその事しか頭に思い浮かんでいなかったのだ。
トワはネムラスから脱出する事に成功し、急いでクローバールへと向かっていく。その数分後にネムラスは陥落してしまい、シュンラ達はリッジにやられて全員死亡という結果になってしまったのだった。
※
「これがその話の全てよ……。私は彼奴等を絶対に許さない……!」
全てを話し終えたトワはポロポロ涙を流しながら、リッジに対しての怒りで身体を震わせている。多くの仲間の死とネムレスを滅ぼされた悲しみはとても深く、心の底からリッジを憎んでいるのも無理はないだろう。
その様子を見たエヴァとマツリはトワの元に移動し、背中をよしよしと撫でながら彼女を慰め始めた。
「元気出して。私達がついているから」
「そうよ。それにあなたも八犬士である以上、私達の大切な仲間に変わりはないわ。皆で協力して、リッジ達を倒しましょう!」
「……うん!」
エヴァとマツリの笑顔による励ましに、トワは涙を拭きながら笑顔で応える。新たな仲間である八犬士達の優しさを受け、トワは一人じゃないという事を実感する様になったのだ。
「トワの涙も収まったが、後は秘宝のある場所が何処にあるかだな」
「異世界という事は確かだけど、ひょっとしてウチ等のいる地球やないんかな?」
零夜と倫子は秘宝のある場所を推測し始め、日和達も真剣に考え始める。秘宝の在処は異世界と言っていた以上、地球である可能性が高い。しかし秘宝が隠されている場所が何処にあるのか不明であり、手掛かりがあれば良いと思うが。
「その事なら地図とメモ用紙があるわ。用意するから」
トワは自らのバングルを起動させ、地図とメモ用紙を手元に召喚。其れ等を零夜達に見せた途端、その内容に彼等は驚きを隠せずにいたのだ。
「これが秘宝の場所の地図……」
「確かに凄いとしか言えないけど……」
「場所が……、幕張ネオンモールの地下!?」
そう。秘宝が眠る場所は地球にある事が判明されたが、何故か千葉にある幕張ネオンモールの地下にあるのは意外としか思えないだろう。
秘宝は幕張ネオンモールの地下に!果たして上手く見つかるのか⁉
因みに幕張ネオンモールは、あるデパートを元にしました。




