第80話 6人の誓い
今回で第二章終了です!
ギルドから出た零夜達は、そのまま市場などでの買い物を終えて帰宅。そのままアイリン達はエプロンを着用し、夕食の準備に取り掛かる。
一方の零夜と倫子は料理に参加せず、中庭のベンチに座っていた。その様子だと二人きりで話をしているのは確定だろう。
「倫子さん、ごめんなさい……日和さんから聞きましたが、俺、本当の気持ちを知らなくて……」
「私の方こそごめんね。嫉妬のあまり暴力を振るってしまうなんて……」
二人がすまなさそうな表情でお互い謝罪をする中、倫子が零夜の手を取って強く握り始めた。どうやら何か言いたげな様で、真剣な表情をしているのが分かる。
「ねえ、零夜君はタマズサとの戦いが終わったらどうするの?まさかこのハルヴァスに残るんじゃないよね?」
「?どういう事ですか?」
倫子からの真剣な質問に対し、零夜は疑問に感じながら首を傾げてしまう。すると彼女は不安な表情をしながら、彼の手を更に強く握り締めていた。
「だって……零夜君とエヴァが結ばれていたら、彼女と共にハルヴァスで暮らす事になるじゃない!私は零夜君と離れ離れになるのは、何よりも一番嫌なの!」
倫子は心からの本当の気持ちを声に出していて、身体は既に小刻みに震えている。その様子だと今にも泣き出しそうで涙が出るのも時間の問題と言えるだろう。
更に倫子は零夜がエヴァと正式に付き合ってしまえば、彼は地球には戻らずに彼女と共に過ごしていくに違いない。そう考えると不安がますます強くなるのも無理なく、次第には泣いてしまうのも時間の問題だ。
「今まで零夜君とずっと一緒にいたのに……離れ離れになるなんて嫌だ……二度と会えなくなるのは一番嫌なの……ひっ……うわーん!!」
倫子は涙声で震えてしまい、目から涙がポロポロと溢れてしまう。更に嗚咽も聞こえ始め、我慢できずに大泣きしてしまったのだ。
倫子は零夜とは姉弟の関係みたいだが、本心では彼に恋心を抱いている。その為、零夜と離れ離れになってしまうのは一番嫌いな事で、涙を流してしまうのも無理はない。
それを見た零夜は自身の指で倫子の涙を丁寧に拭き取り、彼女の頭を優しく撫でる。
「そんな事はないですよ」
「零夜君……?」
零夜の突然の行動に倫子は泣くのを止め、彼の方に視線を移しながら向き始める。彼は真剣な表情をしている上に、彼女の考えを否定しているのだ。
「俺にはプロレスラーになる夢がありますし、元の世界にはあなたがいるプロレス団体がある。俺はそれを目指して頑張っている以上、ハルヴァスには残りません」
零夜の説明を聞いた倫子は、彼の夢を振り返りながら思い浮かべる。
零夜にはプロレスラーになる夢があり、自分のいるDBWのレスラーになる事を目標としている。その夢を諦めたくない気持ちが強い以上、ハルヴァスに残る事はない。
更に元の世界には待っている人がいるし、流石にこの世界に残るわけにはいかないのだ。
「そうだったね……零夜にはDBWを目指す夢があるし、離れ離れにはならないのね」
「そう言う事になります」
「良かった……」
零夜の説明と笑顔の姿に、倫子は我慢できず彼に強く抱き着いた。零夜が地球に残ってくれる事がとても嬉しいのは勿論、まだ傍にいられる事に安堵していたのだ。
零夜が笑顔で倫子の頭を優しく撫で始めた途端、エヴァがこっそりと後ろから姿を現した。しかも料理の準備をしているので、エプロンを着用している。
「エヴァ!聞いていたの!?」
エヴァの姿を見た倫子は零夜から離れ、彼女の方に視線を移しながら睨みつける。零夜にキスをした事は許せないらしく、ジト目で威嚇しながら睨みつけていた。
「大丈夫。敵意は無いから。隣座っていいかな?」
「別にいいけど……」
倫子はキョトンとしながらも承諾し、エヴァは彼女の隣に座ってそのまま視線を移してくる。
「倫子。あなたも零夜が好きだという事は既に分かっているし、恋にはライバルがいないと燃え上がらない。あなたは変わらずに今のままでいて欲しいの」
「エヴァ……あなたも私の事を心配していたのね……」
エヴァは心配そうな表情で倫子を心配していて、話を聞いた彼女は納得の表情をしていく。更にエヴァは笑顔の表情をしながら、倫子に対して手を差し伸べてきた。
「恋の対決はまだまだ終わらない。これからも宜しくね!」
「……ええ!」
倫子とエヴァはお互い笑顔で握手を交わした直後、日和達も一斉に姿を現す。彼女達も料理をしようと動いていたが、零夜と倫子が心配なので様子を見に来たのだ。
「皆!聞いていたのですか!?」
零夜は日和達が来た事に驚きを隠せず、彼女達に質問してきた。倫子に関しては両手で口を押さえながら、驚きの表情をしている。
「うん。心配だから来てみたけど、どうやら恋は一筋縄ではいかなくなったみたいね」
「でも、これだからこそ私達と言えるかもね。もう心配する必要は無くなったわ」
アイリンとマツリの笑顔に、零夜と倫子も笑顔で返していく。更に日和も零夜と倫子に近付いたと同時に、二人をムギュッと抱き締める。
三人の中では一番年下だが、抱き締める温もりは母親其の物。零夜と倫子も日和を抱き返しながら、お互いの温もりを感じ取り始めた。
「心配したんですよ。いつもの二人に戻ってください」
「すいません、日和さん」
「迷惑かけてごめんね」
零夜と倫子は日和に謝罪した後、彼はベンチから立ち上がって全員に視線を移す。その表情に迷いはなく、凛としている状態となっている。
そのまま倫子達も次々と立ち上がり、皆で円陣を組み始める。一致団結こそ零夜達の強みであり、どんな困難であろうとも乗り越える覚悟があるのだ。
「これから先どんな事があろうとも、俺達全員なら乗り越えられると思います!この先タマズサの軍勢には手強い敵が多くいますが、最後まで諦めずに立ち向かいましょう!」
「「「おう!!」」」
零夜の宣言に倫子達が一斉に強い叫びで応え、お互い抱き合いながら笑い合っていた。その様子をヤツフサが近くで見ていて、心配する必要がないと安堵の表情を浮かべている。
(恋愛関係でどうなるのか心配だったが、今の様子だと必要なかったな。だが、八犬士達が揃うまで残りは後二人。何れにしても揃わなければ……)
ヤツフサは心の中で決意を固めたと同時に、抱き合っている零夜達の方へ向かい出す。空は夕焼けとなっていて、そんな彼等を照らしていたのだった。
八犬士が揃うまで残り後二人。果たして無事に揃う事ができるのか……
次回から新章に入ります!そしてここまで読んでくれてありがとうございました。
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