第75話 最後のダークウルフ
ゲルガーの真の力を前に、零夜達はどう立ち向かうのか?
ゲルガーが満月の力によってパワーアップした直後、彼はいきなり零夜に襲い掛かってくる。目障りな彼を倒す事で、今後の戦いが有利になると判断しているのだろう。
「いきなり俺に襲い掛かるとはな……それなら、水神波動斬!」
強烈な波動斬撃が村雨から発せられるが、ゲルガーは素早い動きで回避してしまう。同時に彼に接近する事に成功し、強烈な攻撃を放とうとしているのだ。
「クロードライブ!」
「がはっ!」
強烈なクロー攻撃が零夜の胸を切り裂き、彼は大ダメージを受けて床に片膝をついてしまう。幸い血が出ずに激痛だけで済んだが、今の攻撃で体力が半分減らされてしまったのだ。
「見たか! 俺は満月の力によってパワーアップするんだよ! これなら今のお前にも勝てるからな!」
「こ、こいつが……」
零夜は胸を押さえながら、真剣な表情で余裕のゲルガーを睨みつける。彼の顔はあくどい笑みを浮かべていて、人を見下しているのが丸分かりだ。
「それならウチが相手になったる! ソードウェーブ!」
倫子は双剣を構えながら、波動の斬撃を次々と飛ばしていく。しかしゲルガーは素早い動きで全て回避してしまい、そのまま倫子の目の前に接近してきたのだ。
「お前はこれだ! 博愛固め!」
「ひゃっ!」
ゲルガーは全身を倫子にくっつけたと同時に、そのままムギュッと抱き締めてしまう。更に抱き締める時間が経過する事に、彼女の身体は強く締め付けられていた。
「この変態が! 少しは自重しろ!」
「がっ!」
零夜は素早く苦無を投げ飛ばし、ゲルガーの後頭部に直撃。その衝撃でゲルガーの力が弱まり、倫子は解放されて零夜の元へ駆け寄った。
「零夜君!」
「もう大丈夫です。にしても、ゲルガーがここまでパワーアップするなんて……」
倫子は涙目で零夜に抱き着き、ヒックヒックと涙を流しながら全身をくっつけていた。零夜はそんな彼女の頭を撫でながら慰めた直後、真剣な表情で苦無を引き抜くゲルガーを見つめる。
ゲルガーが満月の力でパワーアップしてしまった以上、苦戦となる長期戦は確定と言えるだろう。だが、そんな彼でも何処かに弱点は必ずある。それを見つければ必ず倒す事ができる筈だ。
「よくもやってくれたな……。折角の楽しみを邪魔しやがって!」
「アンタが倫子さんにセクハラするのが悪いだろ!」
ゲルガーは恨めしそうな顔をしながら睨みつけるが、零夜は彼の行いにツッコミを入れる。それに倫子もコクコクと頷き、頬を膨らましながら涙目となっていた。
エヴァやユウユウもジト目でゲルガーを睨みつけていて、軽蔑の目で見つめているのだ。
「俺はな……、最後のダークウルフの一人なんだよ……。ここで死んだら一族は滅びるからな……」
「一族は滅びる? どういう事だ?」
ゲルガーからの衝撃の発言に対し、零夜達は突如疑問に感じてしまう。するとユウユウがある事に気付き、その原因を告げ始めようとしていた。
「前勇者であるケンジによって、全滅されたという事やな」
「えっ? ケンジがそんな事を!?」
ユウユウは真剣な表情をしながら、ゲルガーがダークウルフ最後の生き残りである原因を告げていく。零夜達は驚きを隠せずに彼女に視線を移す中、ゲルガーはコクリと頷いていたのだ。
「そうだ! かつて俺達ダークウルフは、前勇者一行の女共を狙おうとしていた。誘拐作戦は無事に成功し、服を脱がせ始めたその時に奴等が現れた。そのまま俺達は次々とやられてしまったからな……」
ゲルガーは自身が何故ダークウルフ最後の一人である事を、真剣に零夜達に説明し始める。
彼等はかつて前勇者であるケンジ一行を見つけ、その中にいるアイリン、ベティ、メディに目をつけていた。油断している隙を見計らって誘拐に成功し、とある場所で服を脱がそうとしていたのだ。しかし、ケンジとゴドムにバレてしまい、彼等は次々とやられて全滅してしまったのだった。
「そして一人生き残った俺は、奴等に復讐をする為に魔王軍に入った。しかしケンジとゴドムはタマズサによって死んでしまい、俺の復讐は終わりを告げられたのさ」
「そして自らダークウルフ最後の一人である事を自覚し、努力しながらFブロック隊長になったという事やね」
ゲルガーの説明を聞いたユウユウは真剣な表情をしながら、彼がFブロック隊長になった経緯を推測する。それにゲルガーはコクリと頷いたと同時に、真剣な表情で彼女達を睨みつける。
「そうだ。俺はここで死ぬ理由にはいかないのでな……。邪魔をするなら殺すのみだ!」
ゲルガーは再び戦闘態勢に入り、前進しながら零夜達に襲い掛かろうとしていく。するとゲルガーの前にエヴァが立ちはだかり、真剣な表情をしながら睨みつけていた。
「エヴァ!」
「私が相手になるわ! あなたには恨みがあるからね」
エヴァはすぐに格闘技の構えに入り、警戒しながら戦闘態勢に入る。彼女も満月の力によってパワーアップしていて、全ての能力が大幅に上がっている。更に彼女にはゲルガーに恨みがある為、彼は自身で決着を着けると決意しているのだ。
「まさかお前が相手だとは……。だが、俺を甘く見ると痛い目に遭うぞ」
「それはやってみなくては分からない。私の故郷を滅ぼした罪を償ってもらうわ!」
ゲルガーの忠告に対し、エヴァは真剣な表情で返していく。そのまま二人は勢いよく飛び出し、激しい殴り合いを繰り広げ始めた。両者のパンチとキックが交差していて、目にも止まらぬ速さの戦いとなっている。こうなると乱入する事は難しいだろう。
「ここはエヴァの戦いだが、ゲルガーに恨みがあるのは奴隷だけではないみたいだ。故郷が滅ぼされたと聞いたが……」
「ウチも初耳なんよ。ユウユウは?」
「いや、全然知らへん……。こうなると本人に聞いた方が早いかも……」
零夜達はエヴァの故郷がゲルガーに滅ぼされた事を話していたが、誰もこの事を知る人はいなかった。後でエヴァに聞こうと考えたその時だった。
「それなら私が知っているわ!」
「ルイザ!」
零夜達が声のした方を向いた途端、ルイザが入口前に姿を現していた。日和達もこの場に駆け付けているが、アンナ、ユウユウ、サユリ、マツリの四人は別の任務に取り掛かっているのだ。
「アリウスが殺される三日前だけど、ゲルガーはエヴァの故郷を襲撃してきたの。誰一人容赦なく殺しまくり、金品食料の全てを略奪してしまった……」
ルイザは俯きながらその時の事を話し、零夜達は驚きの表情をしてしまう。因みに日和、アイリン、ヤツフサは事前に聞いていたが、彼女達も驚きを隠せずにいた。
かつてエヴァがオパールハーツにいた頃、ゲルガーがエヴァの故郷であるモンテルロを襲撃。村人達を全員虐殺し、財宝や食料なども全て奪ってしまった。この事件はモンテルロの虐殺と名付けられ、ハルヴァスでの悲劇的事件として語られているのだ。
「エヴァは奴隷だけでなく、故郷を滅ぼされた事を恨んでいるなんて……。ゲルガーはいくら何でも酷すぎるとしか言えない!」
倫子は涙目で怒りの表情をしていて、零夜達も真剣に同意する。ゲルガーは奴隷だけでなく、罪のない人々を殺していた。此等の罪はとても大きく、地獄行きは確定と言えるだろう。
「何度言われても俺の考えは変わらない。邪魔する奴は容赦なく殺すのみだ! ブラッドスラッシュ!」
ゲルガーは倫子の怒りに対して返答したと同時に、強烈な爪攻撃をエヴァに放った。すると彼女の胸の真ん中部分が服ごと切り裂かれてしまい、血が出ない激痛の大ダメージを与えたのだ。
「ぐあああああ!!」
「エヴァ!」
大ダメージを受けたエヴァは悲鳴を上げてしまい、その様子を見たゲルガーはニヤリと笑っていたのだった。
エヴァがゲルガーに大ダメージを受けてしまった!果たしてどうなるのか!?




