第64話 ペンデュラスへの突撃
ペンデュラスへ突入します!
「ほ、本当なのですか!? それでモンスターができるなんて……」
倫子からの衝撃発言に対し、零夜は未だに信じられない表情をしていた。まさかこの金属でモンスターが進化する事は前代未聞であり、ましてや変な姿になる可能性もあり得るのだ。
しかしアイリンは倫子が持つ金属を冷静に見ていて、頷きながら確認していた。
「大丈夫。これはスパイダーやウルフなどに当てれば、新たな進化が生まれるわ」
「えっ? この金属について分かるの?」
アイリンは冷静に説明しながら大丈夫と判断するが、日和は疑問に思いながら首を傾げていた。マツリやエヴァ達も日和と同じ気持ちとなっていて、まだ疑問に感じるのも無理ない。
「この金属はメタルロック。主にモンスターの進化素材などに使われているわ。サイボーグウルフやメタルインプなどが出たのもそれが原因よ」
「じゃあ、それが原因であのモンスターが出てきたんだね……」
アイリンは持っているメタルロックについて説明し、それに皆も納得の表情をする。その直後に倫子はバングルからスピリットを放出。飛び出てきたのはスパイダーだ。
「スパイダー。もしかしてあなたの探しているのはこれでしょ?」
「うん。これを僕に当てて」
スパイダーの指示に倫子は笑顔で頷き、彼の身体にメタルロックを当てる。するとスパイダーが光り輝いて変化し、新たな姿となった。
「これが僕の新たな姿、コンバットスパイダーさ!」
スパイダーはコンバットスパイダーに進化し、全身がメタルの身体となっていた。更に背中部分にはランチャーミサイル、重火器、ミサイルポッドなどに変形できる砲台が設置されているのだ。
「これってどう見ても兵器モンスターね……」
「戦いの時には便利だけど、見た目が……」
マツリ達はこの光景に苦笑いしつつ、戦いには役立つと実感している。しかし見た目が少しカッコ悪いと感じてしまう部分もあるので、思わず苦笑いせざるを得なかったのだろう。
「まあ、パワーアップしただけでも良いと思うけどな。後はエヴァのウルフも試してみようぜ」
「そうね。その前に零夜の手に入れたホルスタウロス、どうにかできないの?」
エヴァがジト目で指差す先には、まだ零夜に抱き着いているホルスタウロスのモンスター娘がいた。名前についてはスズとなっていて、甘えん坊の性格である事には間違いない。
「ご主人様〜。」
「いや、気が済むまでこうした方が良いからな……、なかなか離れてくれないし」
「むう……。だったらウチも抱き着く」
「おい! ちょっと待て!」
倫子も我慢できずに零夜に抱き着いてしまい、彼の顔はあっという間に真っ赤っ赤となってしまった。あれだけ二人に抱かれてしまったら、そうなるのも無理はない。
「私もやるー!」
「それだけは勘弁……、うわっ!」
更にエヴァも我慢できず、零夜の背中に飛びついてしまう。他の人から見れば羨ましいかも知れないが、零夜にとっては地獄としか言いようがないのだ。
「もう! こんな事している場合じゃないでしょ! ペンデュラスを忘れちゃ駄目!」
「「「ひゃっ!?」」」
その光景を見た日和の一喝でエヴァ達はハッと気付き、すぐに零夜から離れてしまう。スズも自分の役割に気付いたと同時に、スピリットとなって零夜のバングルの中に入ったのだ。
「すいません、わざわざ……」
「気にしないで。それよりもペンデュラスの住民達が心配になるわ。急いで向かいましょう!」
日和の合図に全員が頷き、急いでペンデュラスへと駆け始めた。倫子とエヴァは不満そうな表情で頬を膨らますが、背に腹は代えられないので我慢する事にしたのだった。
※
「着いたわ! ここがペンデュラスよ!」
ようやく零夜達はペンデュラスの街に着いたが、目の前には鉄の城壁が建てられていた。明らかに闇のオーラが放たれていて、近付けば何されるか分からないだろう。
「城壁がある限りは、上手く近付けないか……」
「何か方法は無いのかな……」
サユリ達がこの城壁を見ながら、突破する方法を真剣に考え始める。壁を登ろうとしても、弓矢などを放たれてしまう可能性がある。破壊しようとしても城壁がとても硬い為、時間が掛かってしまうのだ。
「こうなると入口を探す必要があるな。すぐに周囲を探して……、どうした?」
「静かにして。敵がいるわ」
零夜は回り込んで周囲を探そうとしたその時、アイリンが足を止めて真剣な表情で前を向いていた。その視線の先には入口があるが、ゾンビの衛兵二人が門番として立ちはだかっているのだ。
「入口は見つけたが、ゾンビの衛兵がいるな」
「それなら私に任せて!」
零夜がゾンビ達を見ながら真剣に推測するが、ユウユウが素早く飛び出してゾンビ達に立ち向かう。そのまま高くジャンプしたと同時に、両手に光の球をあっという間に生成したのだ。
「シャインボム!」
ユウユウは二つの光の球を投げ飛ばし、ゾンビ二人に直撃。そのまま爆発を起こしてしまい、ゾンビ達は素材であるボロ布と金貨になってしまった。
「これで敵は倒したわ。後は扉を開くだけよ」
「それなら私に任せて!」
ルイザは扉の前に移動したと同時に、自身の左手を扉に当てる。そのまま念を押し込んだ直後、扉の鍵が解錠されてしまったのだ。
「これでよし。中に入るわよ!」
ルイザの合図で全員が城壁の中に入ると、そこは普通の街となっていた。どうやらゲルガーは住民達は襲わず、飴と鞭の政策で普通通り暮らす事を彼等に命じているのだ。
「何も変わってない……。ゲルガーは何を考えているのかしら……」
「さあ……」
この光景を見たエヴァ達が疑問に感じる中、彼女達の目の前にウインドウが突如出現する。その画面にはゲルガーの姿が映っていて、零夜達は警戒態勢に入る。
『よく来たな。八犬士達よ。一部部外者もいるが』
「おい! その部外者はウチ等かゴラァ!」
ユウユウは画面越しのゲルガーに対して怒っていて、ユイユイ達もブーブー文句を言いまくっていた。部外者と言われた事が許せなかったが、彼女達は八犬士ではないのでカウントされないのも無理はない。
その様子を見ていた倫子達は、苦笑いしながらユウユウ達を落ち着かせる。
『そう怒るな。逃げ出した奴隷達とルイザもいるが、エヴァが八犬士の一人とは想定外だった。だが、ここからが戦いの始まりだ!』
ゲルガーが宣言したと同時に、街中にモンスター達が一斉に出現する。住民達はゲルガーの計らいで安全な場所に避難しているので、問題はないだろう。
『ファーストステージの説明だ。モンスターたちを倒して誰か一人がこの要塞に辿り着けば、ステージクリア。しかし、黒服の男達がいるので、捕まったら牢獄の中に転移されるので注意する様に』
(要するに俺達の世界でやっていたバラエティ番組である逃走ロワイアルと似ているのか……。あの番組は嫌な思い出しか無いからな……)
ゲルガーの説明を聞いた零夜は、複雑な表情をしながら当時の事を思い浮かべた。
零夜は過去に逃走ロワイアルに一般枠として出場。持ち前の動きで見事逃げ切る事に成功し、賞金を獲得した。しかし好きな女性タレントが捕まった事がショックであり、賞金を前に退屈座りで落ち込んでしまった。それを見た芸能人達から慰められる羽目になってしまい、女性タレントとの半分の山分けで収まったのだ。
今思い起こせば恥ずかしい思い出でもあり、女性タレントに抱かれながら頭を撫でられた事は忘れないだろう。零夜の黒歴史の一つでも言えるのだ。
(まあいい。誰かが逃げ切る事ができれば、それだけで十分! やるからには勝つのみだ!)
零夜は心の中で気を引き締めたと同時に、すぐに臨戦態勢に入る。今は目の前の目的に集中するのみで、ここで過去を振り返っている場合ではないと言えるだろう。
「では、試合開始だ!」
ゲルガーの合図と同時に零夜達は駆け出し、Fブロック基地の要塞へと駆け出したのだった。
一回戦は逃走ゲーム!因みにあるバラエティ番組を元にしました。




