第59話 波乱の予感と重大任務
今回は重大任務です!
ハイン達との戦いから翌朝、零夜は草原で格闘トレーニングをしていた。彼だけでなく、ライラとマーリンの2人は勿論、新しく仲間になったモンスター娘の2人も参加していた。
「おお。シャロン、やるじゃない!」
「こう見えても格闘技は習っているし、このくらいは当然だから!」
ピンク色のキャットヒューマンのシャロンは、素早い動きを駆使しながらウインクをする。彼女はキャットヒューマンの中でも最強クラスの実力を持つ為、格闘技の腕前もプロ以上なのだ。
衣装はサスペンダー、チューブトップ、更に黒いカーゴデニムジーンズを着用している。
「私だって負けられないわ! はっ! よっ! ほっ!」
フローラも負けじと素早い動きを繰り出し、次々と格闘技を見せていく。フローラは狐のモンスター娘であり、剣の腕前はプロレベル。シャロンに負けないくらいの最強クラスの実力者だ。
衣装は黒のキャミソール、ゼブラ柄のデニムジーンズだ。
「私も行くわよ!」
「私も負けられないわ!」
マーリンはテコンドーの演武を始め、素早い動きでの格闘術を繰り出していく。ライラも自分で取得したムエタイの格闘術を披露し始め、零夜は真剣な表情でその様子を見ていた。
(マーリン、シャロン、フローラが仲間になってから、ライラにもいい刺激を受けたみたいだ。ライバルが多ければ多い程、さらなる飛躍をしていくだろうな)
零夜が心から思っていたその時、彼の背後にエヴァが近付いてきた。そのまま彼の前に回り込み、ムギュッと抱き着いてきたのだ。
「エヴァ!? 朝から何やっているんだよ!」
「だって、零夜に抱き着かないと機嫌が悪いんだもん。しばらくこのままで!」
「お前な……」
エヴァは尻尾を降らしながら喜んでいて、それに零夜はため息をついてしまう。零夜達に助けられてからは彼に好意を持つ様になり、今ではスキンシップをするのが毎日の日課となってしまったのだ。
「またしても零夜様のスキンシップが始まりましたね……」
「いつもこの様な事をしているの?」
「ええ……。仲間の頼みは断りづらいのが、問題点ですからね……」
マーリンの質問に対し、ライラは唖然としながらこの光景を見つめていた。それに彼女達も苦笑いしたその時、倫子が姿を現してエヴァと零夜の間に入ってきたのだ。
「倫子さん!?」
「何エヴァちゃんと抱っこしているのかな? 抱っこするならウチがいるやん!」
倫子はそのまま零夜に抱き着いたと同時に、ムギュッと身体を密着してきた。しかもオーバーオールが身体全体にくっついているので、興奮度は当然爆上りになるのも無理はない。
それにエヴァは嫉妬で頬を膨らまし、零夜の背後に抱きついてきたのだ。
「ちょっと! 邪魔しないでよ! まだ零夜とは途中なんだから!」
「私だって零夜君とスキンシップがしたいの! 邪魔せんで!」
「嫌だ!」
「く、苦しい……」
二人の零夜争奪戦が始まりを告げられるが、当の本人は2人に挟まれて苦しい状態に。下手したら身体が折れるどころか、窒息死してしまう事も。
「零夜様! しっかりしてください!」
「こんなところで死なないでよね!」
「あなた達も落ち着きなさい!」
「暴走しなくていいから落ち着いて!」
ライラとフローラは慌てながら零夜の救出に入り、シャロンとマーリンはエヴァと倫子を落ち着かせに向かい出す。この様に早朝の格闘技訓練は、ドタバタ展開の結末となったのだった。
※
「なるほど。これはとんだ災難としか言えないみたいやね」
その後、零夜達は朝食を食べ終えてギルドに向かっていて、彼からの話にユウユウは苦笑いをしていた。
エヴァが零夜の事が好きだという事実が明らかになってから、この争奪戦が毎日行われる事に。当然零夜の災難は決着を着けぬ限り、終わりを告げる事はないだろう。
「ああ。俺が何をしたって言うんだよ……。いつつ! 身体の節々が痛いぜ……」
零夜は左肩を押さえながら、身体の痛みを感じてしまう。二人に抱き締められたダメージはとても強く、命がいくつあっても足りないくらいだ。
「零夜君は鈍感なところが弱点だからね。それを治していかないと」
「そうそう。皆に迷惑を掛けないようにね!」
「うへー……」
日和とアイリンからの注意を受けた零夜は、ガックリと項垂れるしかなかった。それにマツリ達が苦笑いした直後、目的となるギルドが見えてきたのだ。
「まあ、今はこれから行うクエストに集中しましょう。その依頼は緊急任務と言われているし、早めに片付けておかないとね」
「その通りだ。それにペンデュラスでは大変な事が起きたそうだ」
「大変な事?」
マツリからの忠告にヤツフサも同意した後、彼は昨日起きた事を零夜達に説明する。それに彼等が疑問に思ったその時、ヤツフサは衝撃の内容を伝え始める。
「ペンデュラスが悪鬼によって占拠され、Fブロック街へと変わった事だ」
「な!?」
「「「ええっ!?」」」
ヤツフサからの衝撃的なお知らせに、零夜達は驚きを隠せずに唖然としてしまう。まさかペンデュラスが悪鬼に征服されるのは想定外であり、何も言えずに混乱してしまうのも無理はなかった。
「その犯人についてはゲルガー。彼はFブロックの隊長で、人狼族の戦士だ。奴は素早さと無限のスタミナを持つので、手強い相手である事には間違いない」
ヤツフサからの真剣な説明を聞いた零夜達は、この戦いは一筋縄ではいかないと判断。元凶であるゲルガーを倒すだけでなく、奴隷と住民達の救出も行わなければならないのだ。
更に此等の一連の騒動がゲルガーであるとするならば、彼を倒せば万事解決と言える。しかし、アリウスの正体がゲルガーなのか不明となっている為、コパールレイクに赴いて真相を暴く必要があるのだ。
「となると、この戦いは一筋縄ではいかないかも知れませんね……」
零夜の推測に皆も同意せざるを得ず、彼等はそのままギルドの中に入っていく。これから起こる戦いと一抹の不安を胸に抱えながらも、目の前の事には取り組むしか無かったのだった。
※
零夜達はギルドの中に入った後、メリアからクエストの説明を聞いていた。
今回のクエストはコパールレイクに赴き、本物のアリウスの手掛かりを探す事。アリウスはコパールレイクに赴いてから、性格が悪くなって帰ってきた。もしかすると殺されてしまった可能性がある為、調査をする必要があるとの事だ。
「恐らくアリウスがコパールレイクで殺されたとすれば、遺品は必ず見つかる筈だ。念入りに探して手がかりを見つけておかないと」
「その通りです。しかしゲルガー達も黙ってはいられません。刺客を貴方方に送り出す可能性もあり得るでしょう」
零夜とメリアの推測を聞いた倫子達は、真剣な表情で頷きながらも冷や汗を流していた。調査は簡単にはいかず、刺客まで襲い掛かる。念入りに準備して行動しなければ、全滅してしまう恐れもあるだろう。
「確かにその通りね。奴等より早く手掛かりを見つけ、その真相を明らかにしないと!」
「何れにしても戦いは避けられない運命。やるからには必ず生きて帰りましょう!」
日和の決意とアイリンの宣言に対し、零夜達は真剣な表情で頷きながら同意する。そのまま彼等はギルドから飛び出し、コパールレイクへと向かったのだった。
重大任務がスタート!果たしてどうなるのか!?




