第56話 零夜VSハイン
ハインとの戦いはどうなるのか?
零夜とハインの戦いは、両者とも動かずにいた。お互い警戒しているのは当然であり、一歩も引かない展開が予測されるだろう。
(奴がエヴァを仲間にした元凶か……。だが、俺は此処で失敗したら死あるのみ……。いずれにしても後戻りはできない!)
ハインは心の中で決意したと同時に、ロングソードを構えながら襲い掛かり始める。彼のロングソードは魔剣グラムであり、高威力の攻撃を放ってくる。S級だからこそ、この様な武器を扱える事ができるのだ。
「ダークスラッシュ!」
「くっ!」
ハインの一振りが零夜に襲い掛かるが、彼は素早い動きで後退しながら回避する。この様な斬撃を喰らってしまったら、僅かにかすっただけでも大ダメージとなりそうだ。
(なるほどな。魔剣の力は凄いとしか言えないが、こういう武器はS級にならないとできないんだよな……。あの武器さえ落とせば良いのだが……)
零夜は心の中で思いながら、真剣な表情でハインを睨みつける。彼は魔剣グラムのお陰でS級にまで上り詰める事ができた。しかし彼からグラムを奪えば、弱体化するのも時間の問題と言えるだろう。
「ほらほらどうした! まだ続くぞ!」
ハインの斬撃はまだ続き、零夜は忍者刀を手元に召喚。彼の斬撃をその刀で防ぎ、次々と弾き返していたのだ。序盤は互角でも時間が経つにつれて、零夜は押されながら苦戦を強いられてしまう。AとSのランク差があるからこそ、この様な展開になるのは当然と言えるだろう。
(だが、俺もここで負ける理由にはいかない! エヴァとルイザを……、あんな奴等に渡してたまるか!)
零夜はもう片方の手元にとある剣を召喚するが、それはケンジが持っていた勇者の剣だ。しかも鞘が抜かれている状態である為、零夜は迷う事なくその剣を握り締めていた。
「それは勇者の剣! 何故お前が!?」
零夜が勇者の剣を持っている事に対し、ハインは驚きを隠せずにいた。あの男が死んだケンジの形見を持っているなど、あり得ないと言えるだろう。
「アイリンから手渡されたからな。俺が新たな勇者に相応しい為、その跡を継いで欲しいとな」
「勇者? お前なんかになれる理由ないだろ! こんな剣を使えられたら、空からエレファスが降ってくるぞ!」
ハインは笑いながら零夜を挑発するが、空から象のモンスターが降ってきて彼を潰してしまった。そのモンスターこそエレファスであり、アフリカゾウを元にしたモンスターなのだ。
耳はとても幅広く牙もが、マンモスの様に毛が生えていた。それに重いので潰されたら死ぬ確率もあり得るのだ。
「あっ、本当だ」
「だじげで……」
ハインは潰されながら助けを求めたその時、エレファスが零夜をギロリと睨みつける。新たな敵だと判断したエレファスはその場から移動し始め、ズシンズシンとゆっくり歩き始めたのだ。
(まさかエレファスが来るとはな……。こうなると倫子さんが頼りになるが……、やるしかないな!)
零夜は覚悟を決めたと同時に、忍者刀と勇者の剣を構えながら戦闘態勢に入る。すると忍者刀は水龍刀に変化するが、勇者の剣はそのままだった。
「行くぞ!」
零夜が覚悟を決めて駆け出そうとしたその時、戦いを終えた倫子が駆け付けてきた。すると彼女はマジカルハートの態勢に入り、エレファスに狙いを定める。
「倫子さん! その様子だと勝ったのですね!」
「うん! 戦いは終わったから、こいつは私に任せて! マジカルハート!」
マジカルハートはエレファスに直撃し、彼はそのままスピリットとなってバングルの中に入った。エレファスがいた跡にハインの姿が見えたが、踏み潰されてペラペラになっていたのだ。
「おーい。生きているか?」
「うう……。とんだハプニングとなったが……、なんとか戦える……」
ペラペラ状態となったハインはすぐに立ち上がり、息を吸い込んで元の身体に戻った。とんだハプニングに見舞われたが、ここで倒れたら笑い者にされながら死ぬ事になるだろう。
「さて、試合再開……、な!?」
するとハインは零夜の隣にいる倫子に視線を移し、驚きを隠せずにいた。彼女がここにいるという事は、クルーザが負けた事は確実だろう。
「もしかしてクルーザを倒したのか!?」
「うん。乱入者が出てきてとんだハプニングになったけど、彼は捕縛したから! それに……、アイリンちゃんも終わったからね」
倫子は驚きを隠せないハインに説明した後、向こう側にいるアイリンに視線を移す。彼女はザギルを既に縛り終えていて、手を叩きながら笑みを見せていた。同時にエヴァ達も姿を現すが、ユウユウの手にはハインが持っていたグラムが握られていたのだ。
「ザギルまでやられた……って、俺のグラムがいつの間に!?」
ザギルまでやられた事にハインは冷や汗を流してしまうだけでなく、持っていたグラムがいつの間にかユウユウに奪われていた。これに関しては想定外としか言えないだろう。
「ハインが潰されている時に、こっそりと奪い取ったからね。因みに私は所有者抹消というスキルを持っているから、悪人にしか発動できないのが難点だけど」
「じゃあ、俺の武器は……、これだけしか無いか……」
ハインはすぐに別の武器を手元に召喚するが、それは予備として持っていたロングソードだ。しかもレイピアであり、威力は前に比べて愕然と落ちているのが丸分かりだ。
「相手が武器を変えたのなら、問題なく戦える! 行くぞ、ハイン!」
零夜はすぐに忍者刀と勇者の剣を強く握り、二刀流の態勢で立ち向かい始める。彼がそのまま駆け出したと同時に、勇者の剣が光を放ち始めた。
「勇者の剣が光り輝いた!? まさか覚醒したと言うの!?」
日和は勇者の剣が光り輝いた事に驚きを隠せず、倫子達も同様に驚いてしまう。しかしアイリンとヤツフサは冷静に対処しつつ、その剣が光り輝いた原因を察する。
「いや。完全には覚醒していないわ。ただ零夜を持ち主として認められただけよ」
「勇者の剣が完全な真の強さになるには、時間が掛かるという事か。まだまだ彼は強くなれる価値があると言う事だな」
アイリンの説明を聞いたヤツフサは、真剣な表情をしながら納得する。そのまま目の前の戦いに移した途端、零夜の斬撃がハインのレイピアを弾き飛ばしたのだ。
「レイピアが弾き飛ばされた!」
「良いわよ、零夜!」
マツリの驚きとエヴァの声援が響き渡る中、レイピアは地面を転がりながら落ちてしまった。ハインは慌てながら武器を拾おうとするが、その前に零夜が立ちはだかってきた。しかも彼は既に武器をバングルの中に入れており、腕を鳴らしながらハインに接近してきたのだ。
「まだやる気か? この偽善者が……」
「く、来るな! 来るな!」
ハインは慌てながら後退してしまうが、零夜はそれを許さずに彼に接近してきた。そのまま彼を背負い投げで投げ飛ばし、地面に背中を叩きつける。更に自ら跳躍しながらバック転を繰り出したのだ。
「あの技は……、その場飛びムーンサルトプレス!」
「ガハッ!」
倫子が今の行為に叫んだ直後、零夜は身体ごとハインを押し潰してしまう。そのままハインは大ダメージを受けてしまい、失神しながら倒れてしまった。
こうしてハイン、クルーザ、ザギルの三人は戦闘不能になってしまい、零夜達が見事勝利。同時にエヴァとルイザは彼等に引き渡されずに済む事ができたのだ。
「終わったな。後はギルドに戻って、こいつ等を警備隊に引き渡さないと!」
「そうね。けど、モンスター娘の件はどうするの?」
「あ」
零夜の提案に倫子達も賛同するが、マツリが気になる事を彼に質問する。それに零夜は思わず声を出してしまい、頬をポリポリと掻いてしまった。
「アイリン達はギルドに連絡をしてくれ。俺はまだモンスター娘を捕まえに向かうから!」
「あっ、こら!」
「待ちなさい!」
零夜はそのままモンスター娘を捕まえに向かい、それを倫子とエヴァが追いかけ始める。これ以上モンスター娘を彼が捕まえれば、絶対にとんでもない事になろうと予感しているのだ。
「零夜って戦いの時には頼もしいけど……、こんな一面もあるの?」
「ま、まあね……」
ユウユウからの質問に対し、日和は苦笑いしながら応える。それにアイリン達は盛大にため息をつき、ルイザは苦笑いをしたのだった。
ハイン撃破!エヴァの一つの因縁が終わりましたが、零夜はモンスター娘を捕まえに向かいました。




