第50話 ブティックでの一時
祝!50話!これも皆さまのおかげです!
今回はブティックでのひと時です。
ギルドを出た零夜達は、そのままブティックへと向かっていた。その理由はルイザのボロボロの服を変える事だ。
「さて、ルイザの服も変えておかないとね。この姿じゃ笑われるし。さて何処にするか……」
マツリがブティックを何処にするか考えたその時、日和がある店を思い出し始める。彼女はこの街のファッション情報を熟知しているので、相手をコーデするにはお手の物だ。
「ルイザは盗賊だから、あの店が似合うと思うわ。ほら、そこにお店があるから」
日和が指差す方を見ると、そこはカジュアルの服専門店の店が建っていた。他にも民族衣装や高級衣装などもあるが、ルイザの事を考えれば、この方が似合うだろう。
「確かに盗賊と言えばカジュアルだけど、似合う物はあるのかしら?」
ルイザは店の前に立ちながら、疑問の表情で見つめている。この店で似合う物はあるかも知れないが、後は本人がどう好むかだ。下手に変な物を買えば、とんでもない格好をする事もあり得るだろう。
「まあまあ。取り敢えず中に入りましょう!」
「キャッ!」
ルイザは倫子に押されながらも、店の中へと入って行く。エヴァ達も後に続くが、零夜とヤツフサは入らなかった。零夜は服装に興味がなく、ヤツフサはフェンリルなので入れないのだ。
「零夜は興味無いのか?」
「俺はこういうのはあまり……」
ヤツフサの質問に対し、零夜は苦笑いしながらもそう応える。彼は忍者服で十分だと言えるが、それ以外の場合はどう対応するかが気になるところだ。ヤツフサはこれ以上の深追いは止めて、倫子達が戻るまで待ち始めたのだ。
※
倫子達はブティックの中に入った後、色んな服を確認する。ジーンズ、デニムスカート、オーバーオールなどのボトムス、更にはチェック柄のシャツやノースリーブシャツ、へそ出しのスポーツブラまであるのだ。
「ウチの服もこういうジーンズとか良かったな……」
倫子はオーバーオールの胸ポケットを引っ張りながら、ため息をついてしまう。しかしオールラウンダーとなってしまった以上、この姿である裸オーバーオールは避けられない。それどころか変更する事さえできないので、女性にとっては厄介な職業となっているのだ。
「まあまあ。今はルイザの着替えをどうにかしないと」
「う、うん……」
アイリンが苦笑いしながら倫子を落ち着かせ、彼女は頷きながら応えるしか無かった。するとマツリがとある服に視線を移していて、エヴァ達がその姿に疑問に感じる。
「何か見つけたの?」
「ええ。この服が似合うんじゃないかと思って」
マツリが指差す方を見ると、それはデニムのショートパンツだった。確かに盗賊としては相応しい服装であり、動きやすさも抜群。それを見たルイザも、この服装を気に入るのも無理ないだろう。
「確かにこれは似合うわね。まずはこれにするわ」
ルイザはショートパンツを手に取り、次の場所に向かう。そこはビキニ水着の場所であり、様々な種類が置かれているのだ。彼女は真迷う事なく黒いビキニを選び、その行動に皆は驚いてしまう。
「ルイザ、アンタ大胆な衣装が好きなのね……」
「そう?盗賊ならこの衣装の方が似合うしね」
エヴァは唖然とした表情をするが、ルイザは平然としながら応えた。彼女としてもこの衣装がとても似合うので、これはしょうがないと言えるが。
後は靴と手袋なども購入し、買い物は終わりを告げられたのだった。
※
「お待たせ!」
エヴァ達がブティックから出てくると、そこには零夜とヤツフサがいた。彼等はエヴァ達が店から出るのを待っていたそうだ。
「終わったのか?」
「ええ。彼女はこうなっているわ!」
倫子が指差す方を見ると、ルイザは新しい服に着替えていた。青デニムのショートパンツ、黒いビキニブラ、赤いスカーフ、手袋、更には膝当てという組み合わせとなっている。
この姿こそ本来の盗賊の姿であり、身動きも前より軽くなっている。このコーデこそ正解と言えるだろう。
「似合うじゃないか!ルイザはこの方がピッタリだ」
「確かにそうだな。ショートパンツを履いた方が、柔軟性や動きやすさも抜群と言える。良い組み合わせだと思うぞ」
零夜とヤツフサもルイザの服装を称賛し、彼女は照れ臭くて顔を赤くしてしまう。人から服を褒められたのは久しぶりで、照れ臭くなるのも無理ないのだ。
「あ、ありがとう……」
ルイザは小声でボソッと言いながら、横を向いていた。どうやら素直になるには時間が掛かるだろう。
すると空は夕暮れ時となり、カラスも鳴き始めた。一日があっという間に過ぎたのだろう。
「じゃあ、帰りに買い物して帰りましょう!」
「今日の夕食のメニューは鍋料理だからね。早速市場へ向かうわよ!」
アイリンの合図で全員が市場に向かおうとするが、ルイザが突然足を止めてエヴァに視線を移し始める。その様子は真剣な表情であり、何かを伝えようとしているのだろう。
「エヴァ……あの時はごめんなさい!」
するとルイザは頭を下げながら、エヴァに対して謝罪する。彼女を奴隷として引き渡してしまった事だけでなく、恨みで殺そうとしていた事を謝罪しているのだ。
「私、奴隷として引き渡される時、エヴァの気持ちも感じたの。あなたもこの様な辛い思いをしたんじゃないかって……許せる理由じゃないけど……本当にごめんね……」
ルイザは涙を流しながら、心から謝罪の言葉を述べていた。その言葉には偽りはなく、正真正銘の謝罪である。それを聞いたエヴァはルイザに近付き、彼女を優しく抱き締める。
「大丈夫。あなたが謝ってくれたら、それだけで十分だから」
「う……うわあああああ!!」
エヴァの優しい笑顔に救われたルイザは、我慢できずに大泣きをしてしまった。その様子を見ていた零夜達は、微笑みながら見ていた。
これでエヴァとルイザの問題は無事に解決。夕陽が彼女達を照らしていたのだった。
※
同時刻。ロックマウンテンの中腹では、ハイン達が崖崩れの跡を発見していた。それを見た彼等は冷や汗を大量に流し、このままだとアリウスに殺されると思い込んでいた。
「どうすんだよ!ルイザが崖から落ちたのなら、俺達は殺されるぞ!」
「まだそうと決まった理由じゃない!エヴァがまだ残っているじゃないか!」
ハインが頭を抱えながら思わず絶叫してしまうが、クルーザが冷静に彼を落ち着かせる。ザギルに至っては冷静に考え事をしていて、崖崩れの現象を確認していた。
(あのルイザが崖から落ちて死亡はあり得ないな……恐らく何者かによって助け出され、街へと向かったのだろう)
ザギルはそう考えたと同時に、冷静な判断で推測する。三人の中では物事を冷静に判断できるので、どんな状況でも落ち着いて対処できるのだ。
「ザギル、何か分かったのか?」
「ああ。ルイザはまだ死んでいない。彼女にはヒューマンインプがいるし、何者かによって助けられたに違いないな」
「そ、そうか……そう言えばそうだったな……」
ザギルの説明を聞いたハインは落ち着きを取り戻し、すぐに深呼吸をしながら整え始める。ルイザはS級ランクの一人なので、そう簡単に死ぬ事はないだろう。
「とは言え……彼女を探さなくてはならないし、見つけられなかったら殺されるからな。今日は近くの街で泊まるとするか」
「ここからだとクローバールの街が近いな。もしかするとルイザとエヴァに関する情報を聞けるかも知れないし」
「その方が効率的だな。行くとするか」
ハイン達は満場一致で、そのままクローバールの街へと動き出し始める。同時に彼等と零夜達が邂逅する瞬間も、刻々と迫り来るのであった。
エヴァとルイザが和解する中、別の場所では新たな戦いの可能性が。果たしてどうなるのか?




