第107話 兄弟の絆
マルコとベトロ戦、決着です!
現在に戻り、マルコとベトロはボロボロの状態で立っていた。彼等のダメージは深刻であるが、最後まで諦めずに戦う覚悟を決めているのだ。
「俺達は戦闘民族「ゲルマ」の血が流れている……だが、今までやってきた事は許されない事だ……」
「だからこそ……俺達は……ここで戦いを終わらせる……其の為にも……諦めてたまるかよ……」
マルコとベトロは真剣な表情をしながら、格闘技の構えで戦闘態勢に入る。ここまで来た以上は後には引けない。だからこそ下手な死に方は許されないのだ。
その様子を見た倫子と日和は真剣な表情でお互い頷き合い、すぐに戦闘態勢に入り始める。
「日和ちゃん。彼等の呪縛を解き放つ為にも、絶対に勝とう!もうこれ以上、彼等を苦しませない為にも!」
「ええ。必ず勝ちに向かいます!」
倫子と日和は素早く飛び出したと同時に、マルコとベトロに挑んでいく。ここから先は素手での戦いとなるので、武器は必要ないだろう。
「そこだ!メガトンスマッシュ!」
「ッ!」
マルコの拳が倫子の顔面を捉えようとするが、彼女はしゃがんで回避する。紙一重となる攻防であり、当たったら前と同じ様に強く飛ばされていただろう。
「見えた!そこ!」
「ぐはっ!」
倫子の強烈なハイキックがマルコの側頭部に当たり、彼は思わずぐらついてしまう。しゃがんでからのカウンター攻撃という方法は予想外であり、彼女を甘く見ていたのも原因がある。
「おのれ……俺達ゲルマを舐めるな!ストライクキック!」
「おっと!」
マルコは反撃の蹴りを倫子に向けて放つが、彼女は足首を掴んでその攻撃を止めてしまう。更に反撃の一打となる掌底アッパーを喰らってしまい、彼はバランスを崩して倒れそうになる。
「ここからは私のターン!すかさず締め上げていくから覚悟しなさい!」
倫子はすかさずマルコを前のめりに倒させたと同時に、彼の首と片腕を両足で捕らえていく。更にマルコの片側の頚動脈を内腿で絞めながら、相手自身の肩で反対の頚動脈を絞め始めたのだ。
「これは三角絞め……!お前……こんな技を……ぐええ……」
「元から取得した技だからね。まだまだ締めていくから覚悟しなさい!」
「く、苦しい……助けてくれ……」
マルコは倫子による三角絞めで頸動脈を絞められ、もう少しで息絶えそうになる。しかも零夜による苦無の効果で能力も半減しているので、死んでしまうのも時間の問題だ。
「くそっ!兄ちゃん!」
「そうはさせない!はっ!」
ベトロはマルコの元へ向かおうとするが、日和はすかさず彼の後頭部に強烈な蹴りを入れた。その衝撃はとても重く、まるで鉄球を頭に喰らった様な気分だ。
「が……!(あの女、またしても俺を邪魔する気なのか……)」
ベトロは耐え切れずに両膝をついてしまい、その隙を見逃さない日和は彼の背中を押し倒す。ベトロがうつ伏せに倒れたと同時に、彼の両足の間に右足を入れて相手の左脇腹の横へ踏み込んでいく。
(攻めるなら今!必ずここで諦めない!)
日和は心からそう思いながら、ベトロの両足を膝でクロスさせて相手の右足を自分の右腕でロックする。そのまま右足を軸にして反転した直後、相手をひっくり返すしてから腰を落としたのだ。
「ぐわあああああ!!なんだこの技は!」
「サソリ固めよ。アンタは私達を甘く見ていたみたいね!」
「足が!く、苦しい……!こんな技は初めてだ……」
日和のサソリ固めによって、ベトロは苦しい表情をしながらもがき続けていく。彼の足首、膝、腰が締め上げられるだけでなく、気道や横隔膜の動きまで制限されていく。このままではお陀仏と言えるだろう。
「くそ……!この程度で俺は……兄ちゃん……!」
ベトロは腕の力を使って前進しながら、倫子に三角絞めを受けているマルコの元へと向かい出す。マルコも必死に抵抗するが、彼もそろそろ落ちてしまうのも限界だ。
(もう少し……もう少し……強く締め上げる!相手を必ず倒す為にも!)
「ぐお……」
倫子は心の中で念を入れながら、マルコの頸動脈を強く締め上げていく。彼はそのまま耐えきる事ができず、腕を落としながら失神してしまった。
これでマルコは戦闘不能になってしまい、倫子はすぐに彼から離れる。彼女は自らの力で強敵を倒した事を実感した後、ベトロを三角絞めしている日和に視線を移した。
「日和ちゃん!こっちは勝利したから!後はベトロだけだよ!」
「はい!ここから一気に攻めまくります!」
「兄ちゃん……!ぎゃあああああ!」
倫子の声援に日和は笑顔で応え、ベトロに対してサソリ固めの威力を強めていく。彼はマルコが倒れた事を確信した後、サソリ固めによる痛みで悲鳴を上げていく。このままだと倒れてしまうのも時間の問題だが、ベトロはそれでも倒れているマルコに近付こうとしていた。
「兄ちゃん……!この勝負は俺達の負けだが……アンタを一人で死なせる理由にはいかない……!その手を……掴み取るまでは……」
ベトロは最後の力を振り絞りながら、倒れているマルコに向けて前進していく。自分が死んでも構わないが、それでも倒れている兄を放っておく事はできないのだ。
「もう少し……もう少し……」
ベトロは左腕を伸ばしながら、倒れているマルコの足首を掴もうとしている。残り僅か数センチぐらいで、届くのも時間の問題だ。
「よし!届い……た……」
そのままベトロはマルコの足首を掴んだ直後、彼も力が抜けて倒れてしまう。日和はベトロが戦闘不能になったのを確認したと同時に、すぐにサソリ固めを解いて彼から離れたのだ。
「終わりましたね……」
「うん……」
倫子と日和は倒れているマルコとベトロの兄弟を見つめながら、悲しい表情をしてしまう。自らの手で兄弟の絆を途切れさせようとした事に、心から罪悪感を感じているだろう。
「兄ちゃん……もう、戦いは………終わった……俺達は……もう……あの生活をしなくて……良い……」
「……」
ベトロは最後の力を振り絞りながら、マルコに声をかけていく。彼は既に失神しているので、ただ無言を貫き通していた。
「だから……もう一人じゃない……俺達は……二人で……ひと……つ……」
ベトロは笑みを浮かべながらそう告げた直後、彼とマルコの身体は光の粒となって消滅した。残されたのは大量の金貨だけでなく、ゲルマの紋章が刻まれていた布もある。たとえ自分達が滅びても、これだけは大事にする必要があったのだろう。
「あの二人……それ程辛い思いをしていたんだね……」
「ええ……私達の手で倒しましたが、これで彼等も報われたのでしょうか……」
倫子と日和は涙目の状態をしながら、マルコとベトロが消えた場所に視線を移す。自分達の手で彼等を倒す事に成功したが、兄弟の絆を間近で見た事で可哀想な事をしてしまったと後悔しているだろう。
すると倫子は地面に落ちているゲルマの紋章の描いた布を拾い、それを真剣な表情でじっと見つめる。マルコとベトロの死によって、ゲルマは絶滅してしまった。しかし、彼等の遺志を終わらせる理由にはいかないので、自分達が後を引き継ごうと決意を固めているのだ。
「日和ちゃん。彼等はこの紋章と共に精一杯生き続け、最後まで自分達の部族の誇りを貫き通した。今度は私達が彼等の思いを引き継ぎましょう!」
「……はい!」
倫子は真剣な表情をしながら決意を固め、日和も涙を拭いたと同時に真剣な表情で応える。ゲルマは絶滅しても、その遺志は彼女達によって引き継がれていくだろう。
どんな時でも兄弟の絆は途切れない。彼等の勇姿は見事です!




