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ブレイブエイト〜異世界八犬伝伝説〜  作者: 蒼月丸
第三章 幕張の隠された秘宝
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第106話 ゲルマの最後の生き残り

今回はマルコ達の過去です。

 一ヶ月前、ハルヴァスの西方面にあるサンダラス地方。そこにあるボロ小屋の中で二人の兄弟が暮らしていた。そう。ゲルマの最後の生き残りであるマルコとベトロだ。


「ハァ……とうとう残ったのは俺達だけか……今思うと寂しいよな……」

「それは前から聞いているよ、兄ちゃん」


 マルコは囲炉裏の火を起こしながら、盛大にため息をついていた。それにベトロは苦笑いしながら、用意していた魚や肉を用意する。

 彼等は地方のコロシアム大会で資金を集めていて、多くの猛者達を次々と倒していた。しかし地方大会では普通の賞金額ばかりで、物足りない気がするのは当然と言えるだろう。


「にしても、あの出来事から二ヶ月か……時が流れるのは早い物だな……」

「ああ。今でも覚えているぜ。あの時起きた戦いを……」


 マルコとベトロは串に通した肉や魚を囲炉裏に置きながら、当時の事を思い出し始める。それは彼等にとって忘れられない出来事であり、今に至る戦いである事を。


 ※


 その半月前。同じ地方のベルニス山付近で戦いが発生。ゲルマの軍勢は地方領主からの依頼を受け、敵の討伐に向かい出した。その相手は同じ戦闘民族であるベルクロの軍勢。彼等は悪徳領主に仕えていて、暴虐の限りを尽くしているのだ。


「奴等は本格的に迷惑を掛けている。やるなら今しかない!」

「ああ!俺達ゲルマは負けられないからな!奴等を根絶やしにするぞ!」

「「「おう!」」」


 ゲルマの民達は拳を上げながら一斉に掛け声を上げた途端、敵であるベルクロの軍勢が姿を現す。彼等は魚の鱗のような逆三角形である魚鱗の陣形(ぎょりんのじんけい)で移動しているので、後方には悪徳領主の姿が見えているのだ。


「魚鱗の陣形です!」

「兵が集まって陣を作るため、兵が分散しない様に作っているのか。それならこっちは鶴翼だ!」

「「「おう!」」」


 ゲルマの方は鶴が翼を広げたような形に部隊を配置する陣形「鶴翼の陣(かくよくのじん)」で対抗する。両軍が睨み合う中、我慢できず一斉に飛び出してしまった。


「最初から一気に攻める!遅れを取るな!」

「「「おう!」」」

「返り討ちにしてくれるわ!野郎共、掛かれー!」

「「「うぉーっ!」」」


 両軍は武器や拳、魔術などをぶつけ合いながら、激しい戦いを繰り広げていた。一歩も引かずに接戦を繰り広げているので、長期戦になる確率は高いと言えるだろう。


「この戦いは接戦となるな。俺達もやってやろうぜ!」

「彼奴等ばかりカッコつける理由にはいかないこらな!敵の首を取ってやるぜ!」


 マルコとバルクも一斉に飛び出し、激しい戦いを繰り広げようと駆け出していく。すると何処からか大きな音が聞こえ、二人は突如足を止めてしまう。


「おい!あれ……」


 マルコが指差す方を全員が見た途端、大きな大砲が姿を現していた。しかもその数は十ぐらいで、完全にゲルマを狙っているのだ。


「あれは大砲!?奴等、俺達が来る事を知って、この大砲を用意していたというのか……?」

「分からない。こうなったら俺達で止めに行く!兄ちゃん、行くぞ!」

「おうよ!」


 マルコとベトロは素早くその場から駆け出し、大砲がある場所へと向かっていた。この先にいる大勢の敵が相手であろうとも、大砲を破壊しなければ敵の思い通りになってしまうのだ。


「大砲は山の上にある!奴等がベルクロと戦っている以上、俺達の手で破壊するだけだ!」

「ここは素早く駆け出すしかない!手遅れになったらお終いだからな!」


 マルコとベトロは素早く駆け出していたその時、大砲から次々と砲弾が発砲される。多くが戦う場所に着弾したと同時に、強烈な爆発が発生する。敵味方構わず無差別に殺される光景は、まさに地獄絵図と言えるだろう。


「くそっ!攻撃を開始したのか!いくら何でも早過ぎるぞ!」

「その気持ちは分かるぜ、兄ちゃん!もう少しで山だ!」

「よし!全速力で駆け出すぞ!」


 マルコとベトロは最大限でスピードを上げていき、山に辿り着いたと同時にダッシュで駆け上がっていく。普通人間は山道をダッシュで駆け上がるのは不可能だが、ゲルマの民はこのぐらい余裕でできるのだ。


「もう少しで大砲だ!」

「必ず奴等の企みを止めてやる!」


 マルコとベトロは素早く跳躍したと同時に、大砲がある山の上に着地する。この場にいた兵士達は予想外の展開に驚きを隠せず、すぐに武器を構えながら彼等に襲い掛かってきた。


「このぐらい……問題ない!」

「ああ!一気に蹴散らすのみだ!」


 マルコとベトロは素早く駆け出し、襲い掛かる兵士達を次々と殴り倒していく。彼等など当然敵ではなく、赤子の手をひねる様な程度としか言えないだろう。


「クソ領主はこの辺りにいるはずだ!徹底的に殴りまくるぞ!」

「後は大砲も止めないとな!」


 マルコとベトロの攻撃はまだまだ続き、兵士達は次々と殴り飛ばされてやられていく。同時に大砲も時間が経つ度に止まってしまい、最後の一つも停止してしまった。

 これで残るは領主のみ。彼は銃を構えながら、必死に抵抗しようとしている。周りに味方は居ないので、こうなると自身の力で逃げるしかないだろう。


「来るな!絶対に来るな!」


 領主は銃を構えながら震えていて、必死に逃げようとしていた。しかしマルコとベトロはそれを許さず、領主の前に移動しながら素早い蹴りを繰り出した。


「ぐほっ!」


 領主は腹に衝撃を受けてしまい、その威力によろけてしまう。更に彼が銃を落とした瞬間、マルコとベトロは彼を持ち上げて投げ飛ばそうとしていた。

 

「俺達の怒りを思い知れ!」

「そして皆の怒りもな!」

「ぎゃああああああ!!」


 マルコとベトロは領主を崖から勢いよく投げ飛ばし、領主は急降下しながら落下していく。そのまま彼は地面に頭を打ち付けてしまい、バタンとうつ伏せに倒れて即死してしまったのだ。

 これで悪徳領主との戦いが終わり、マルコ達の勝利に終わった。


「終わったか……」

「ああ……けど……」


 マルコとベトロは爆発の起きた場所をよく見ると、多くのゲルマとベルクロの軍勢が倒れていた。彼等全員大砲の爆発に次々とやられてしまい、生き残ったのはマルコとベトロの二人となってしまったのだ。


「早速報告しておかないとな……」

「後でお墓も作って置かなければな……クソッ……」


 マルコとベトロは俯きながらも、地方領主の元へ報告しに向かい出す。その目には涙が流れていて、雫が地面に落ちていたのだった。


 ※


「あの後、俺達は褒美をもらって今の場所にいる。けど、もう皆と一緒にいた頃には戻れない……」


 そして現在、マルコとベトロは肉や魚などを食べながら、当時の事を振り返っていた。あの戦いで皆が死ぬ事が無ければ、この様な悲しみを背負う事は無かっただろう。


「だよな……これからどうすれば良いのだろうか……」


 マルコとベトロは今後どうするのか話し合おうとしたその時、何者かが扉をノックしてきた。その音に反応した二人は、すぐに扉の元に移動する。


「何者だ!?」

「落ち着いてくれ。怪しい者ではない。君達に話がある」

「話?別にいいが……」


 マルコとベトロが扉を開けると、そこには一人の男が立っていた。その男こそリッジであり、彼は笑みを浮かべながら二人に話しかけてくる。


「君達の噂は聞いている。実はお前達をスカウトしに来た」

「「スカウト?」」


 リッジからの話を聞いたマルコとベトロは、疑問に感じながら首を傾げてしまう。彼等は疑問に思いながらもスカウトに応じるが、それによって彼等の人生は狂い出してしまった。


 ※

 

 その後、マルコとベトロはリッジの奴隷になってしまい、彼の元で様々な屈辱を味わい続けた。此等の過去があったからこそ、今の彼等が存在しているのだった。

マルコ達もこの様な経験があったからこそ、奴隷となったのです。


次回は戦いに戻ります!

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