第104話 最後の依頼
今回でオズロフとの戦いは決着です!
「チャンスがあるって……どういう事?」
「弱点がない人間に対してチャンスなんて……」
マツリとアイリンはエヴァの推測に対し、疑問を感じ始める。オズロフはどんな攻撃を受けても立ち上がるし、頭を攻撃しても根性で立ち上がる。そんな人を相手にチャンスなど存在しないのだ。
「いいえ。彼の身体をよく見て。フラフラにグラついているし、あちこちに傷の跡が残っているわ。ダメージの蓄積があったからこそ、ここまで来れたとしか思えないわね」
エヴァがオズロフの方に視線を移しながら説明すると、彼はフラフラの状態でも戦う姿勢となっていた。しかし動きはとても遅く、足取りもよくない。これでは何時倒れてもおかしくないのだ。
「なるほどね……なら、私達の手で終わらせましょう!これ以上野放しにはできないからね!」
「彼を苦しみから解放させる為にも……絶対に勝つわ!」
エヴァ達は真剣な表情をしながら、オズロフの方に視線を移す。すると彼は大剣を構えたと同時に、勢いよく振り下ろしながら攻撃してきた。
「くっ!」
エヴァ達は上手く回避するが、何れにしても油断ならない。オズロフは最後の最後まで諦めない精神力を持っているので、それをどう打ち崩すのか重要になるだろう。
「ここで終わらせる!ブリザードキャノン!」
エヴァは自らの魔術で氷の鏃を次々と召喚し、オズロフに向けて放ちまくる。彼の身体に氷の鏃が次々と突き刺さるが、彼としては問題ないだろう。
「それなら私も負けられないわ!光翼波動弾!」
アイリンは光を放ちながら波動弾を生成し、そのまま勢いよくオズロフに放ってきた。しかもその波動弾はとてもでかく、彼に直撃して大爆発を起こした。
「グオ……!」
オズロフは爆発のダメージを喰らい、片膝を床につけてしまう。
アイリンの波動弾は強烈な威力を誇っているので、直撃すれば大ダメージは確定である。元勇者パーティーに所属していたからこそ、その実力を発揮できるのだ。
「効いているわ!マツリ、お願い!」
「任せて!ここは一気に攻めるわ!」
マツリは両手に刀を構えたと同時に、二刀流の態勢に入る。すると彼女の持つ刀も姿を変えたが、光属性の刀へと変化したのだ。
刀は刀身が白く、銀色の輝きを放っている。これこそ「破邪剣」と言われているのだ。
「あなたの苦しみは私が終わらせてあげるわ!覚悟しなさい!」
マツリは破邪剣を力強く構え、片膝をつくオズロフを強く睨みつける。彼は今体力の限界となっているので、これ以上動く事は不可能である。攻めるなら今しかないと言えるだろう。
「これで終わり!悪滅斬空!」
強烈な二刀流の斬撃が、オズロフに対して炸裂。彼は抵抗できぬまま斬り裂かれてしまい、そのままうつ伏せに倒れてしまった。
これでオズロフは戦闘不能となってしまい、エヴァ達が見事勝利したのだ。
「ウゥ……」
オズロフは最後の力を振り絞りながら、エヴァ達に視線を移す。この様子だと何か言いたげの様であり、彼女達は彼に視線を移していた。
「俺は……あの様な奴にやられて……奴隷と……なってしまった……人を殺したり……酷い扱いを……受けてしまい……一族の誇りを……忘れてしまった……」
「あなた……喋れたんだ……」
オズロフはもう自分の命は長くない事を実感し、自身の経験を全て話し始める。その内容にエヴァ達は驚きを隠せず、彼も自分達と同じ経験をしたのかと感じているのだ。
「じゃあ、あの三人についてだけど……あなたと同じく一族の誇りを忘れたの?」
するとエヴァが気になる事をオズロフに質問するが、彼はコクリと頷いていた。マルコ達もリッジによって奴隷とされた以上、その誇りを忘れてしまった可能性が高いだろう。
「そうだ……だが、ハユンだけは……ギリギリのところで……プライドを……保っていた……このままでは……彼女もまた……同じ目に……遭ってしまう……」
オズロフはハユンを心から心配していて、自分達と同じ目に遭って欲しくないと願っている。もしそうなってしまえば、破滅の未来が待ち構えている可能性は高いだろう。
その話を聞いたエヴァ達はお互い頷いた後、優しい笑みでオズロフに語りかけてきた。
「大丈夫。私の仲間である零夜が助けてくれるから」
「零夜は私達の面倒をよく見ているし、悪人の女性も彼の手によって改心したわ」
「だから心配しなくても大丈夫よ」
エヴァ達は笑みを浮かべながら、ハユンは必ず救う事を決意。例えそれが敵であろうとも、困っている人を見捨てる理由にはいかないのだ。
「そうか……頼んだ……ぞ……」
オズロフはエヴァ達にハユンの事を頼んだ後、彼は光の粒となって消滅してしまった。残ったのは大量の金貨、転がっている大剣が置かれているのだ。
「これでバルクは絶滅か……彼等も悪鬼による被害者なのかな……」
エヴァは悲しそうな顔で俯きながら、ポツリと呟いていた。
自身やマツリもオズロフと同じく最後の生き残りであり、悪鬼にやられた被害者でもある。彼の死でバルクは絶滅した事を感じた以上、敵であっても悲しみを抑えられずにはいられないのだ。
その様子を見たマツリはエヴァに近付き、彼女の肩にポンと手を置く。
「そうみたいね……でも、オズロフの頼みを聞いた以上、放っておく理由にはいかないわ」
「彼女は零夜が担当しているけど、いざという時は皆のサポートに取り掛かりましょう!」
「そうね……ん?」
マツリとアイリンは真剣な表情をしながら、零夜達のサポートに回る事を決意。エヴァも同意しながら頷いたその時、彼女は真剣な表情で今後の事を推測し始める。
(いや、待って。仮にもし零夜がハユンを助けたとしたら……高確率でこうなるんじゃ……)
エヴァは心の中で思ったと同時に、今後の未来を推測し始めた。
零夜がハユンを奴隷から解放したと同時に、彼女は彼に好意を持ってくる。そのまま彼に仕えたと同時に、身の回りの世話をする事になるだろう。そして月日が流れ……二人は結婚してしまう未来が見えてしまう。
『私は零夜様と共に添い遂げる事を誓います』
『こちらこそ、宜しく頼む』
そして二人はゆっくりと接近し、唇を重ね……
「うわああああああ!!」
「「!?」」
エヴァは頭を両手で抑えながら、大声で叫んでしまう。この予測が現実となってしまえば、自分だけじゃなく倫子やヒカリもショックで倒れてしまうだろう。
エヴァの様子にマツリとアイリンは驚いてしまうが、すぐに彼女に駆け寄り始めた。
「エヴァ?何を想像したの?」
「零夜がハユンを助けた時の今後の未来よ。すぐに彼の元へ行って来る!」
「は?ちょっと待ちなさい!」
アイリンの制止も聞かず、エヴァは急いで零夜の元へと駆け出していく。彼女は零夜の恋愛関係には黙ってないので、自身が止めなければとんでもない事になると予測しているのだ。
「あーあ。こうなると修羅場になりそうかもね……」
「エヴァも悪い癖があるからね……私達ではどうする事もできないし……」
エヴァが零夜の元に駆け出していく姿に、アイリンとマツリは唖然とするしか無かった。恋の騒動はまだまだ終わりを告げる事は無いだろう。
エヴァの暴走が始まりました。これ……修羅場が起こりそうな……




