第103話 完全無敵の怪物
オズロフとの戦いはどうなるのか……
「た、倒したの?」
「今の光景を見ればそうかも知れないわね……」
アイリン達は真剣な表情をしながら、倒れているオズロフに視線を移す。彼はそのまま動かなくなっているが、まだ消滅はしていないのだ。
「オズロフは消滅していない……もしかすると彼は再び立ち上がってきそうかも……」
「でも今の攻撃を喰らったら、立ち上がれないのは当然……」
マツリ達が真剣な表情で推測したその時、彼は目を見開いたと同時に立ち上がってきた。まさかエヴァの竜巻ジャイアントスイングを喰らっても、目を見開いて立ち上がるのは異常すぎるとしか言えないだろう。
「嘘でしょ!?エヴァの攻撃が全然効かないなんて!」
「怪物としか思えないわよ!どういう仕組みになっているのよ!」
マツリとアイリンはオズロフの姿に驚きを隠せない中、エヴァは彼の姿を真剣な表情で確認していた。するとエヴァの脳内にある事が思い出され、ハッと気付いたと同時にマツリとアイリンに視線を移す。
「オズロフだけど、彼について聞いた事があるわ。奴は北の戦闘民族「バルグ」における最後の生き残りよ!」
「バルグ……あっ!聞いた事がある!確かワイルドグリズリーをたった一人で投げ飛ばした……あの軍団!?」
「まさかそんな奴と戦うなんてね……私達、ハズレを引いてしまったのかな?」
エヴァの説明を聞いたアイリンは手を叩き、バルグについてようやく思い出した。マツリも同意しながらオズロフに視線を移し、冷や汗を流しながら後悔していた。
バルグは北方にいる戦闘民族であり、熊のモンスターであるワイルドグリズリーを一人で投げ飛ばした実績を持つ。それはバルグにおける成人になる為の儀式である為、このぐらい強くなければ未熟者と言われる定めとなるのだ。
「グ……グオオオオオ!!」
オズロフは雄叫びを上げたと同時に、大剣を構えながらエヴァ達に襲い掛かる。すると彼の脳裏にある光景が思い浮かべられていたのだ。
※
それは後楽園の悲劇の数日前、オズロフ率いるバルグの軍団はリッジ率いる悪鬼と戦っていた。インプ達のモンスターは簡単に倒す事に成功し、残るはリッジだけとなったのだ。
「残るはお前だけ……我等の土地から……立ち去れ……」
「抵抗するなら……容赦しない……」
「死ぬ事になる……忠告だ……」
バルグの民は武器を構えながら、リッジを真剣に睨みつける。しかし彼は余裕の表情を浮かべていて、冷静に彼等を見ているのだ。
「愚かだな。逆にやられるのはお前達の方だ!」
「……!ぐは……」
リッジは素早く両手に血のオーラを纏い始め、そのまま手刀でバルグの一人の首筋を切り裂いた。その直後に切り裂かれた部分から血が噴き出てしまい、彼はうつ伏せに倒れて死んでしまった。
「死んでる……」
「何をした……」
「デス・ブラッド。それに触れたら死は確定だ。それが例え戦闘民族であろうとも、確実に死んでしまうだろう。だが、ある者達には効果ないけどな……」
リッジはこの光景に驚いているバルグの民に、自身の技を説明する。そのままリッジはバルクの民に向かって次々と襲い掛かり、彼等は次々と倒れて死んでしまったのだ。
「……!」
オズロフは驚きを隠せずにいたが、すぐに気を切り替えて大剣を構える。そうこうしている間にもリッジはバルグの民を次々と殺してしまい、残りはあと僅かとなってしまったのだ。
「グオオオオオ!!」
「攻めに来るとはいい度胸だな。けどな、それだけでは俺では倒せない!」
オズロフは仲間を殺された恨みを持ちながら、怒りでリッジを切り裂こうとしていた。しかしリッジはオズロフの前に接近してしまい、強烈チョップで彼の脳天に直撃させてしまったのだ。
「……!」
オズロフは脳天の衝撃により、そのまま両膝を地面について失神してしまう。これでバルグの民はリッジによって全滅してしまい、残ったのはオズロフだけとなってしまったのだ。
「こんなところか……まだまだ物足りないと言えるな。まあいい。こいつを連れて行くとするか。用心棒としてな」
リッジは失神しているオズロフに近付き、彼と共にその場から転移する。その場に残っていたのは、倒れているバルグの民の遺体だけだった……
※
その後、彼はハユン達と共に、リッジの奴隷として活動する事になった。これまで殺した奴等は数知れず。そして今はエヴァ達と戦っているのだ。
「グオオオオオ!!」
「次の攻撃が来るわ!」
「言われなくてもそのつもり!」
オズロフはすぐに大剣を振りかざし、エヴァ達を斬り殺そうとしてくる。しかし彼女達は素早い動きで攻撃を回避し、すぐに反撃の一手を繰り出そうとしているのだ。
「あれだけ攻撃しても倒れないのなら、最初から攻めればこっちの物!」
エヴァが攻めに向かおうとしたその時、オズロフは大剣を捨てて拳で殴りかかってきた。しかもエヴァの顔面に当たり、彼女は勢いよく飛ばされてしまったのだ。
「むが……」
「エヴァ!」
マツリが素早く跳躍したと同時に、エヴァを見事お姫様抱っこでキャッチする。あのままキャッチしに行かなかったら、大変な事になっていただろう。
「アイリン!エヴァの傷の回復をお願い!彼女、顔にダメージを受けているわ!」
「分かったわ!安全な所に着地を!」
「任せて!」
マツリがエヴァを抱えた状態で地面に着地し、アイリンがエヴァの傷を治癒術で回復し始める。するとエヴァの顔の傷はみるみる無くなり、あっという間に完治してしまったのだ。
「はい!素早く回復させたわ!これでもう大丈夫よ」
「ありがとう、アイリン。マツリも助けてくれてありがとね」
「気にしないで。それよりもまだやれる?」
エヴァはアイリンとマツリにお礼を言った後、真剣な表情で戦闘態勢に入る。まさかオズロフに殴り飛ばされてしまうのは想定外だったが、今度はそうはいかないだろう。
「やられた分はやり返さないとね!顔を殴り飛ばされた以上は容赦しない……!ここから本格的に倒すわ!」
「グオオオオオ!!」
エヴァは真剣な表情をしながら、オズロフを睨みつけていく。すると彼は素早く移動したと同時に、またしてもエヴァを殴り飛ばそうとしているのだ。
「はっ!」
「!?」
ところがエヴァは跳躍しながら回避してしまい、素早く急降下しながらオズロフの頭に狙いを定めていた。弱点が頭である以上、それを重点的に狙えばこちらの物だと判断しているだろう。
「さっきのお返しよ!スパイラルキック!」
「……!」
エヴァの風の蹴りが炸裂し、オズロフはグラついてバランスを崩しそうになる。しかし踏ん張って耐え切ろうとしたその時、マツリが素早く彼の元に駆け出してきたのだ。
「こいつを喰らいなさい!回転一閃!」
「グオッ!」
マツリは素早く跳躍したと同時に、身体を回転しながらオズロフの後頭部に蹴りを入れた。するとオズロフはまたしてもグラついてしまい、あっという間にフラフラの状態となってしまったのだ。
「ラストは私が行くわ!飛竜脚!」
今度はアイリンが駆け出したと同時に、強烈なハイキックをオズロフの側頭部に当てる。今度はグラついて倒れそうになるかと思ったが、しかし踏ん張って見事耐え切ったのだ。
オズロフは鼻息を強く吹いたと同時に、息を荒げながら呼吸を整える。まさに完全無敵の怪物と言えるだろう。
「このままだとまずいわね……私達の攻撃が効かないなんて……」
「せめて何か弱点があれば……ん?」
アイリン達は冷や汗を流しながら、真剣な表情でオズロフを見つめていた。するとエヴァがオズロフの様子がおかしい事に気付き始める。
彼の身体の動きがヨロヨロになっていて、ダメージも深刻になっている。これでは何時倒れてもおかしくはないだろう。
「もしかすると……チャンスあるかもね」
「エヴァ?」
この様子を見たエヴァはニヤリと笑い、マツリとアイリンは首を傾げていたのだった。
オズロフ戦、次回で決着です!




