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第2話


◆廊下の3人。


 私立絵空学園高等部。

 それが今日から俺が通う高校の名前。


 俺の名前は結城(ユウキ)勇気(ユウキ)。この国に転生してきた勇者だ。

 勿論これは、この世界での名前である。前世では、オルガン王国の王子である。


 そんな俺達は今、高校の廊下で、バケツを持って立たされていた。


「どうして高校初日からこんな目に遭わなきゃ行けねーんだよ!」と俺。


「仕方ないでしょ。入学式に遅刻したバツなんだから!」と同じくバケツを持っている女の名は福祉柊木ふくしひいらぎ。俺の仲間で回復役(ヒーラー)だ。同じく、遅刻したので立たされている。


 そして、罰を受けている人間がもうひとり。


「入学早々、目立っちゃったねぇ!」とベロをペロッと出している巨乳のギャル。彼女もまた入学式に遅刻した生徒である。皆、同じクラスの一年生だ。


 巨乳ギャルの名前は破手真央はでまお

である。


「まおちゃんはどうして遅刻したの?」

 柊木と真央は、もう既に仲の良い雰囲気が出ている。


「ぼーっとしてたら、遅刻しちゃった感じぃ!」

「ぼーっと?」

「うん。なんかね、内に秘めたパワーみたいなのが解放される感じぃ?それを感じていたら、時間が過ぎちゃってぇ!」

「まおちゃんって、もしかしてちょっと不思議ちゃんって感じ?」

「そうかもぉ!」

「ワハハ」「はははっ!」笑い合う2人。俺も、笑ってみせた。あはは。うふふ。ふふふ。


 って・・・。


 笑ってる場合じゃねぇーっ!!!



 俺は・・・俺だけは知っている。



 今朝、この女、巨乳のギャルと衝突した時、間違いない。魔王の魔力を感じた。あの、禍々しいオーラを。

 王家の血を引く俺だけが感じることの出来る、魔王の魔力。


 このギャルの中には、それがある。


 俺が転生してきた理由はひとつ。

 魔王討伐。


 俺は、この世界に逃げ込むように転生してきた魔王を討伐する為にこの世界に来たのだ。


 17年近く、普通の人間として、この世界の人間として生活してきた。俺は魔王を倒すために・・・。


 今すぐに聖剣を召喚し、女の心臓を一突きすれば・・・俺の任務は終わる。


「ねぇ、ユウキくんたちは、どうして遅刻したのぉ?」

 真央が胸を揺らしながら、俺たちに問いかけてきた。

「ユウキが寝坊したの」

「えっ?ユウキくんが寝坊すると、ひいらぎちゃんも寝坊するの?」

「なっ!それは・・・」


 あ、あのおっぱいに聖剣を突き刺す、だと!?

 で、出来ない・・・!

 出来ねぇ!



◆生真面目な奴。



 俺たちの罰が解かれ、教室に戻る。自分の席に座ると、隣の席に賢人(ケント)がいた。


「よぉ、賢人」

「初日から遅刻か」コイツの表情は変わらない。賢人も柊木と同じく、魔王討伐のメンバーとしてこの世界に転生してきた仲間である。魔法使いだ。


「お前も起こしてくれりゃよかったのによ」

「ふん。それは柊木の役目だろう」

「冷てぇ奴」

「そもそも。自己管理がなってないんじゃないのか」

「いやまぁおっしゃる通りで」

 ため息をつきながら、厚めの本をパタンと閉じる賢人。風圧でその長い髪が揺れた。


「俺たちの目的を。忘れるなよ」

「あ、ああ・・・」


 そう言って、彼はトイレに向かった。

 ・・・そういえばアイツは、元の世界では貧民街出身だったな。俺と違って、実力でのし上がって魔法使いになった真面目な男だ。アイツがなんであそこまでのし上がれたかと言えば、憎しみが原動力なんだ。


 魔王襲来の日。


 あの日、賢人の家族は全員死んだ。


 その憎しみの原動力が彼を動かし、そして彼もまた転生して、魔王討伐に命を賭している。


 そうだ。

 魔王は俺たちの世界を脅かす恐怖。

 倒さなくてはならない。


 ふと、教室の前方、教壇の方を見る。既に女子たちの仲良しグループが出来ていた。

 柊木も上手く溶け込めているようだ。派手真央もいる。真央と俺の目がふとあった。


 その閉じた目尻から星が飛びそうなウインク。


 真央が俺の顔を見て、ウインクをしてきた。俺はちょっと照れながら、見て見ぬふりをした。


 ・・・俺たちの目的を忘れるなよ。


 賢人・・・。

 すまん、忘れそうだ。

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