第1話 俗に言う鼻☆塩☆塩っていうやつ
元々、別のサイトで投稿していたものです。かなり改変が入っていますが、そもそも見てた人少ないし別サイトだし関係ないか。わっはっはっ。
「指示が有るまでそこで大人しくしておけ!!」
そんな暴言を耳に入れながら、自分は首根っこを掴まれ乱暴に監禁室─そう呼ぶことにした─に投げ込まれた。
ガシャンと扉を閉じる音が響き渡る。髭面の野郎はしっかり施錠をしてから何処かに行った
───大人しくしておけ!!」
訳ではなさうだ。恐らく自分以外の奴隷も監禁室に移動させているのだろう。防音性が高いのか上手く聞き取れなかったが、はっきりと怒鳴り声は聞こえた。
他の人も扱いは自分と同じようなものらしい。
───大人しくしておけ!!」
毎回叫んで疲れないのだろうか?
まあ、そんな事はどうでもよいだろう。まず状況を整理するために今日の出来事を振り返るとでもしよう。
あれは今から2時間前、いや3時間前か?
◇◇◇◇◇
自分はヒューマンマーケットの商品だった。首には首輪状の魔道具を嵌められていた。
これを嵌めたヤツ曰く、抵抗すると首と胴が生き別れになるとの事。実際に私が此処に来た初日に4人程お亡くなりになった。
それから檻の中にいた全員、およそ20人が食事の時間を除き、静かに暮らすようになった。
常に寝ている奴も居れば、爪や皮をかじり食べる奴もいたし、中には自慰行為を永遠とヤり続ける猛者も居た。正直、アイツの首は吹っ飛ばして良かったと思う。
そんな中、自分は何をしていたかと云うと神に祈り続けていた。尤も、─手を組んで正座をする等の─祈りの姿勢はしてないし、自分は神に助けられる様な徳を積んだ覚えも無い、寧ろ業を背負いし罪人なんだろう。
しかしここで死ぬわけにはいかない、死ぬならせめて地獄を味わってから地獄に……今は余計な考えだな。
閑話休題、そんな訳で毎日、毎日、ボーっとしていた自分に転機がやって来た。
「マドワフ君〜、このお店って安物ばっかのとこだよね〜。適正者はこの中にいるかな〜?別のお店の方がいいんじゃな〜い?」
今日も誰かが奴隷を買いにやって来た。ここはそれなりに人気なお店のようで、毎日2、3組のペースでやってくる。
大抵はどっかの貴族さまの使いか、意地悪そうな商人様が奴隷を買いに来るのだが、今回来た2人組はとてもそうとは思えかった。
まず、声を今さっき出した方。
顔は仮面に隠し、全身を厚手の布に覆っている。異様に横幅があり体形も禄に分からない。
目算だが身長は自分より高いだろうか?
唯一、布の隙間から伸ばした腕は白く細い。また、声は若々しく瑞々しいものであるから、辛うじて20代半ばの女性と考えられるが……容姿が分からない以上、何とも言えない。
少なくとも、肌の病気どうこうで隠している訳ではなさそうだ。
「今は金欠……ん゙っん゙ん゙ー、魔力が貧弱な者しか居ないとは限らんじゃろ。見逃したら勿体ないからちょっと待てい。」
必死に背伸びをしながらこちらを覗いているのは老人だ。身長はおそらく、女性の膝にも満たない。
白衣を着ており、ガチャガチャと色々くっついた片眼鏡をしていて何というか、胡散臭い研究者のオーラを感じる。
身長からしてドワーフだろうが、ドワーフが鍛冶師以外の職に就くイメージがないというのも拍車を懸けているのだろうか?
「早くしてよね〜。こんな人間臭い所さっさと出たいからね〜。残り10秒〜。過ぎたらマグナムドラゴン・ブレス100倍濃縮液一気飲みね〜。」
また、自分が気になったのは組み合わせだ。老人だけなら不思議ではない。大方、実験用のモルモットでも買いに来たと予想できる。
しかし、この女性は何のために来たのだろうか?
「なんじゃそのヒ…生物が食べるモノじゃなさそうな液体は?そもそもどこから……ん〜、お〜!?居ったわ。」
「えっマジ〜、どこどこ〜?」
色々考えていたら、女性が上半身をぐいっと寄せて檻の中をまじまじと見つめ始めた。フルフェイスで見えているのだろうか?
「ほれあそこの、両手に手袋をしていてギザギザなアホ毛が生えた翠髪の女子じゃ。」
「どれか分からないな〜。」
はっ?嘘だろ。
「他になんか特徴ないかな〜?」
「んんむ……。目つきが悪くて隈もあって、美形ではあるが美少女ではない感じの奴じゃ」
あ゙あ゙ん?
「あぁ〜、あの子ね〜。顔のパーツは良いけどなんか残念な。こう、なんというか、ショートケーキにスイカを使ってるみたいな感じの子ね。」
オデ、アイツラコロス
「おじさん〜、あの子、ちょ〜だい。」
憤怒を優に超え、怒髪天を衝くどころか怒髪界を壊すまで逝きそうな、自分の怒りなんて露知らず、女性は檻の側に立っていたゴツい男に話しかけていた。
「アイツか。アイツはそうだな、5万ビルファーでどうだ?」
「た、た、高いー!!儂の全財産は25万しかない。此処から実験体の餌と人件費と、儂の趣味じゃなくて…売り物の材料費が出るんじゃ、リリー、もっと安い店んぐっ!?」
老人の言葉が遮られた。満面の笑み?で女性が口を塞いだのだ。ついでに残った手で老人のハゲ頭をポンポン叩いている。いい音鳴りそう。
「んんっふ!!んんっふはは、へふはあは。」
「しょうがないな〜、ちゃんとこの娘は買ってよ。」
いや、それマッチポンプでは?というか、なんて言ってるのかよく分かったな?
「トホホ、ここ最近は財布の中で閑古鳥が鳴いとるわ。」
涙を堪えながら老人は財布の中を漁り始めた。買われた私が言う事ではないが大丈夫だろうか。
いや、アイツは自分を侮辱したんだ。むしろ、一文無しになっちまえ。
◇◇◇◇◇
その後、自分は馬車の荷台に載せられここまで運ばれてきたのだ。ついでに馬車の中には5人ほど先客が居た。
自分と同じ様な粗末な服装していたから、他のヒューマンマーケットで買ってきた人だろう。
「オイッ昼食だ!!食え!!」
っと、自分を牢屋に投げ込んだ野郎がトレーに乗せた食事を持ってきた。それにしてもコイツは一々叫ばないと◯ぬ病気か何かなのか?五月蝿いからやめてほしい。
ガシャッ!!
いや、えぇ〜…。器用に扉のトレーを入れる隙間から投げ込んできやがった。
その御蔭で自分のお昼?は床にぶちまけられた。
クソがッ。
〜少女食事中〜
どうにか私は食事を食べ終えた。抵抗は無いのか?んなもんある訳ない。
あのヒューマンマーケットは酷かった。50人を同じ檻に入れているうえに、個別の食事は出ない。
檻の天井が開き、まるで魚への餌やりの様に臓物や腐った野菜がぶち撒けられる。それを求めて檻の中の人々は群がる光景はさながら、池の中の鯉だ。
中には餌の山に全身を潜り込ませる奴や、糞尿をかけマーキングをする奴も居た。
それに比べてこの飯はどうだ。ただ清潔な石製の床にぶち撒けられただけだ。比べてみるまでもない。好待遇にも程がある。
……やはり気になるな、あのフルフェイスウーマンとハゲ頭の老人が話していた"適正者"の事が、まさか……。エッ!!な事でもされてしまうのだろうか?今着ているのは襤褸切れ同然の白ワンピース1枚で、両腕にはこれまた真っ白で肘まである手袋を着けている。
今更だが私の見た目に癖を感じる……。
「食べ終わったか!!さっさと食器をトレーに乗せてこっちに来い!!」
また、ノイジー野郎が来たか。食器が散らばってんのはテメーのせいだろうが。
そんな暴言を飲み込んで食器をトレーに乗せ扉に近づくと、なんと野郎が扉を開けたのだ。
んな馬鹿な、という言葉が喉から出る前に、私の意識は唐突に落ちた。
◇◇◇◇◇
「はぁ、全くヘタクレスの奴め、希少な適正者を雑に扱いよって。あいつは看守から実験体に格下げじゃな。」
ん、嗄れた声がする。あの、ハゲ頭の老人か。
「お〜、目を覚ましおったか。今から、ちと腹を掻っ捌くからの。」
はっ?
「えっ、いや、はっ?」
「その後はこの黒いのお主の腹に入れさせて貰う。麻酔は儂の金がないので無しじゃ。時間は10分にも満たないし、回復魔法は無いが縫う糸なら有るから我慢せえ。」
瓶詰めにされて真っ黒な臓器?肉塊?を片手に老人が宣う。
Oh、爺さん今からエッ!!な事しませんか。だからお願いします、その黒いの入れるのだけはやめてください。
初回だからちょい長め。作り溜めが無くなるまで毎日投稿でいきます。