表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート10月〜5回目

ねこのぱん

作者: たかさば

私には、大好きなパンがある。


ふっくらしていて、丸っこく…、思わず指でつんつんしたくなるような、コッペパン。


それは、『ねこのぱん』。

……猫の前足である!!


猫が畏まって私を見上げる時、たまにパンが二つ現れる。

猫の前足はパンではないが…どう見てもパンにしか見えない瞬間があるのだ。


先端だけがちょこっと丸くなっていて、ぷっくり膨らんでいるのが…まさにパン。

毛に覆われた前足のホクホクとした見た目、それはさながら…焼きたてのパン。


美しく見せようとして巻いたり切ったり成型したりしない、素朴な丸みを帯びた…コッペパンのフォルム。

天然の丸みが心地いい、見ているだけで腹が膨らんで大満足するような…コッペパンの面影。


焼き立てパン屋に並んでいようものなら、値段を見ずにトングでトレイに移し替えにかかるであろう、魅惑の一品である。


猫の前足をパンと認識したその瞬間…、オートモードが発動する。


しゃがみこんで、パンとの距離を縮める。

覗き込んで、間近でパンに魅入る。

指先でパンをつついて、悶絶する。

ピュアな眼差しで私を見上げる猫を前に、へらへらとした笑みを浮かべる。

言葉にならないおかしな声を漏らし、猫の頭をひと撫でする。


猫が移動を始めてしまえば、パンは消えてしまう。

猫の前足は、ずっとパンに見えるわけではないのだ。


貴重な、貴重な…『ねこのぱん』。


連日で見かけることもあれば、しばらく見かけなくなることもある。

どのタイミングで『ねこのぱん』に出くわすかは、運次第なのだ。


……今週は何回くらい、お目にかかれるかな?


もふもふの腹毛を丸出しにして寝転ぶ猫を愛でながら…、焼き立てのコッペパンにバターとあんこを塗り付けつつ、豪快にかじる私なのであった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ