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監禁

突然の事でまだ頭の中の整理ができていない。

何度抗議しようが取り合ってもらえず『旦那様の言いつけですので』と言われてしまう。

自由に外出できない状態で、馬車も護衛も用意してもらえなかった。勝手にすればいいと言ったのは執事だ。

スノウと話がしたいが彼が宮殿から帰ってくる様子はない。


今日は一度にいろんな事がありすぎた。

自室に戻り苦慮する。


マリーは無事にアパルトマンにたどり着いたかしら。

きっと私を心配してるわね。



部屋の外には護衛という名の見張りが二人ついていた。

室内にも侍女がいて私を監視するらしい。


「マリーの代わりに奥様のお世話するように言われました」


彼女はそう挨拶した。


「……そう。身のまわりの事は自分でできるから、貴方は下がりなさい」


侍女は私の言葉を無視した。


屋敷を出るマリーの様子が見えるかもしれないと、バルコニーに近づいた。

ドアの取っ手部分が鎖で固定されている。



自分の部屋なのにまるで牢獄だわ。


「バルコニーにも出られないのかしら?」


侍女に話しかける。


「勝手に外出されないようにとの事です」


二階から飛び降りるとでも思っているのかしら、馬鹿々々しい。


腹が立ったが、侍女に悔しそうな表情を見せたくないと思い堪える。


この状況に対し、屋敷の家令達が私に同情したり、助けの手を差し伸べる事はない。

そこまで嫌われることを何かしたのか考えるが答えは出ない。


肩を落とす代わりに、気持ちとは裏腹に精一杯姿勢を正して胸を張った。


マリーの部屋同様、、私の部屋もいろいろ調べられているだろう。私は、クローゼットの中、本棚ドレッサーの引き出しが荒らされていないかを確認する。



「誰か私の部屋へ入ったの?少しずつ物が移動しているようだわ」


部屋の隅で私の一挙手一投足に目を光らせている侍女に質問してみる。


「私には分かりかねます」


本棚の聖書の中に貴重品を隠している。

それはページの中心をくり抜き細工した小物入れだった。

中身が無事か確かめたかったかったが、今はやめておこうとベッドに腰を下ろした。




「何度考えてもおかしいのよね」


誰に話しかけるわけでもなく小さく声に出した。


おかしい。


そもそも私をどうしたいのかが不明だった。離婚するなら応じるし、お金もいらない。


公爵家の面々はそれが望みじゃないの?

なら、私をどうしたいのか使用人たちに問うても返事は返ってこなかった。


王命だから離婚できない。白い結婚を成立させるまで三年間監禁する?


そうなれば社交の場に顔を見せない夫人の事を、他の貴族たちや王室がおかしいと思うだろう。

少なくとも社交界の面々は結婚した王太子の元婚約者の動向が気になるはずだ。

スノウたちは私が病気か何かだと理由付けし、出席させないつもり?

まさか私の命を奪うつもりはないわよね。



そもそも酷い扱いだとは思うけど、食事を与えなかったり暴力を振るわれたりするわけではない。


公爵家の使用人に罵詈雑言を浴びせかけられたとは思う。けれど、それって証拠に残らないのよね。

言った言わないの問題は人数が多い方が有利になる。「そんな事は申しておりません」と多くの者が言えば証拠が残っていない以上そちらが是となる。


体に傷がついたり、痩せ細ったり病気になったりすれば確かな証拠が残るんだけど。

何度考えても彼らの行動が腑に落ちない。



もう休みますと室内の侍女に言って私は本棚から分厚い本を枕元に持って行った。


夜、眠る時に読書をする事に違和感はないだろう。


侍女に見られないよう本の表紙をそっと開けた。


一番上に手紙が入っている。マリーが王宮に来る前に私あてに届いたのだろう。

ジョンからの物で誰にも見られないようマリーがここに隠したらしかった。


彼からの手紙は読んだ後に必ず処分している。これはまだ未開封のもの。


室内が暗くなり、侍女の気配が無くなるまでじっと我慢してそっとその手紙を開封した。





キャサリンの生家、伯爵家の事が書かれている。

私は息を殺して月明かりで何とか文字を拾い、それを読み始めた。






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