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結婚式

フォスター公爵家嫡男のスノウと侯爵令嬢のアイリス゠ハミルトンの結婚式が絢爛豪華に執り行われた。


両家とも高位貴族である挙式は格式でいえば非常に高いものだ。


侯爵令嬢アイリスは淑女の鑑として一目置かれる存在だった。

息をのむほどに美しいその姿は荘厳で、煌びやかな純白の衣装に身を包んだ彼女は誰の目にも完璧な淑女に映る。


夫となったスノウ゠フォスターは結婚と共に爵位を譲り受け、フォスター公爵となった。

濃い金色の髪に碧眼、鍛えられたスタイルの良い体躯、誰もが憧れる容姿に高い爵位。

彼もまた国王からの覚えもめでたい眉目秀麗の若き公爵だった。



司祭の前で、新郎新婦が結婚の宣誓を立てる。


祭壇は贅を尽くした豪華な作りで、窓から射しこむ光を集めキラキラと反射して神秘的な雰囲気を醸し出す。

参列者席から見上げるときっと神々しく見えるだろう。


披露の場も兼ねて両家の親類や周辺領の貴族、王族までもが参列していた。


本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わってしかりなのだが、そうはならなかった。


新郎は険しい表情で、いかにも不服そうに眉間にしわを寄せ祭壇を睨んでいる。


そんな絶望したって顔をしないでほしいと、アイリスは気づかれないようにベールの下でそっとため息をついた。







これは政略結婚だ。



貴族に生まれたからには家の為に結婚するのが当たり前。本人たちの意思は必要ない。

もの心つく前からアイリスはそう教えられてきた。

けれど夫となるスノウは同じ考えではないらしい。


豪華で絢爛な飾りつけの中、式の最中ずっとスノウの表情は硬く不機嫌で辛そうだ。


緊張や疲れがでているのか、よほど嫌な結婚だったのか、真意はわからない。

アイリスは彼のことをあまりにも知らな過ぎるのだ。


けれどスノウも貴族であるなら、状況を考えて愛想良く体裁を保ってほしいとアイリスは心の中で願った。



結婚式には国中の高位貴族たち両家の親族等、沢山の招待客が参加していた。

彼らの中でも若い女性を中心に、ひそひそと小声で悪口を言っているのが聞こえてくる。


「やはりスノウ様はこの結婚に乗り気じゃなかったのね」


「王命だからって婚約期間もなくアイリス様と結婚するなんて気の毒だわ」


アイリスは何も聞こえないふりをした。

この場で新郎新婦が不快な態度を示せば、他の来賓の皆様に対して示しがつかない。


せめて自分だけでもと完璧に幸せそうな微笑を顔に張り付けた。



本人たちの気持ちなどお構いなしに無責任に下された国王陛下の命による結婚。


決められた将来に従うしかない高位貴族として生まれてきた者たち。


祝福の鐘が大聖堂に大きく響きわたる。


アイリスはきっとこの日を忘れることはないだろう。

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