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買い物×厄介事


 教会に戻った俺はこの一ヶ月の疲れがドッと押し寄せ死んだように寝ていた。

 

 目が覚めると外は真っ暗だった。

 何時間寝ていたのだろうか。

 腹が減ったので食堂に残り物でもないか探しにいこうとベッドから降りて部屋を出た。

 部屋をでると聞き覚えのある異音が隣の部屋から聞こえてきた。

 異音を聞いた瞬間に全てを理解したが腹が減りすぎて相手をしている場合ではないのでそのまま食堂へ向かった。


 食堂に着くと大きなテーブルの上に一人分の料理にナフキンがかけられていた。

 ナフキンをめくるとスープとパンがあったので冷めていることも気にせず腹に入れる。

 満腹とまでは言えないが空腹は満たされ、椅子の背もたれによりかかりながら天井を見上げていた。

 しばらくそのまま動かずに同じ体勢でいると食堂のドアが開き誰かが入ってきた。


 「あら、部屋を出られてどこに行ったのかと思ったらお食事されてたんですね。よく寝られてましたね」


 そこにはさっきの異音の主でもあるアリアが立っていた。


 「俺どれくらい寝てたの? 昼頃に帰ってきたから6時間ぐらい?」

 

 異音の話しには触れずに質問した。


 「丸一日と6時間ほどですね。死んだように寝られてましたよ」


 なんと30時間ほど寝続けていたらしい。

 道理で腹が減るわけだ。


 「そんなに!? 相当疲れが溜まってたんだな……」

 「一ヶ月間ずっと力を使ってましたからね。これだけで回復できるのは凄いですよ」

 

 アリアが言うには俺はこっちの世界の人間より力が倍増している分、負荷も倍増しているらしい。

 それと左目の力をずっと使ったままだったようだ。

 瞳力どうりょくは使う時には開き、使いたくない時は閉めるようなコントロールが必要らしく、水道の蛇口のように力を消費し続けていたという。


 「いや…… 力のこと先に教えてくれよ……」

 「ハルカからは?」

 「聞いてねえよ!」


 あのお姉さんは一体どこまで説明もなく俺をこの世界に放り込んだんだ。

 他人ひとに仕事頼む前に自分の仕事もできてないじゃないのか?

 瞳力のコントロールをアリアに教えてもらったからオフにしておくか。


 「そういえば、この一ヶ月でお金も結構貯まったと思うので武器など買いに行かれてはいかがですか?」


 ネックレスに触り俺の所持金を確認すると、金貨が沢山貯まっていた。


 「おお! こんなにあれば結構な武器や防具買えそうだな! 朝になったら商店に行ってみるよ!」


 そのままアリアと別れて部屋に戻り朝まで寝る事にした。

 これは余談だが昨晩のお隣のせいか、翌朝パンツがカピカピになっていた。



 ◇◆◇◆



 ーー翌朝


 「ダイキ! おはよう!」


 部屋を出ると、テッカテカのゼントが朝から元気に体操していた。


 「あぁ、おはよう。朝から元気だな」

 

 低血圧の俺にとって朝から元気な奴の相手は辛い。

 寝起きの朝食に揚げ物を食べさせられる気分になる。

 それは置いといて丁度いい所でゼントに会ったので町の案内を頼む事にした。


 「そういや今日買い物に行きたいんだけど案内してくれるか?」

 

 ゼントは体操を続けながら答える。


 「買い物? いいぜ! 何買うんだ?」

 「武器とか防具かな。ブライに色んな戦い方教わったから、色んな武器見たくて」


 ブライという名前を聞くとゼントはまだ良い気分がしないらしい。

 いつまで引きずってんだ、このメンヘラは。

 案内してくれると決まればさっさと朝食を済ませて出掛けることにした。


 「じゃぁまずは中央広場に行くか! 結構あのあたりはなんでも揃ってるからな!」


 案内はゼントに任せて俺は後ろについて行くことにした。


 「しかしたったの一ヶ月で流派の師範代になるとはな。ダイキには驚かされる」

 

 ゼントは俺と同じ期間、修練場にいたが俺の三分の一も課題が進んでなかった。

 俺にはこのチート級の力があるから仕方ないのだが、それを差し引きしても筋はいいと褒められていた。


 「ゼントはまだあの修練場に通うのか?」

 「まぁ俺は目的もないから一応通うけど師範代なんて目指さないな! それを理由に教会にいたいだけだ!」


 コイツはたまに尊敬すらできるほどに正直で男らしいな。

 

 「お! まずはここが武器屋だ!」


 中央広場近くの武器屋に着いた。

 そこはいかにもという感じの木造の家屋のような店で、ドアを開けるとドアに付いている鈴が鳴った。


 チリンチリンーー


 「いらっしゃーい」


 カウンター越しに棚を整理していた店主であろう中年のおじさんがいた。

 店内は10畳ほどの広さで壁には長剣・短剣・槍・弓矢など、主要の武器が種類に分けて飾られている。

 ゼントが飾ってある長剣を手にしながら問いかけてくる。


 「どの種類の武器にするんだ?」


 俺はここにある武器の戦術は一通りブライに習い習得はしていたので、これと言ってまだ決めているわけではなかった。


 「んー、まだ何も決めてないんだよな。やっぱり自衛団に志望するから長剣はあった方がいいのかな」

 「そうだな。自衛団の基本的な戦術は長剣が多いな。ただ他の武器を使いこなしている奴らもいるがな。でも長剣ならその腰の剣があるからいらないんじゃないか?」


 腰の剣とはハルカさんに貰った対悪魔用の剣のことだ。

 しかしこの対悪魔用の剣は悪魔の憑いていない対人用としては耐久性も威力も激減するとアリアから説明を受けていたのだ。


 「これとは別に欲しいんだ。店主さん、なんかお勧めってあります?」


 カウンターに肩肘をつきこちらを見ていた店主に問いかけた。

 店主は立ち上がりカウンターから出てきて1つの剣を手にした。


 「これなんでどうでしょう。うちの店一番の長剣でレアメタルを使用しているので耐久性も強い上、軽量ですよ」


 店主はそう言って俺にその剣を手渡してきた。

 手に持つと店主が言っている意味がわかる。

 これは軽く、とても長剣とは思えないほどだ。

 

 「これ、いいな。長剣以外にもお勧めあれば教えてくれませんか?」


 即断即決でこの長剣を買う事に決めた。

 他にも欲しいというと店主は心配そうな顔をした。


 「そりゃお勧めはありますがお客さん…… 財布は大丈夫ですか?」


 長剣の値段をみると金貨8枚もしていた。

 一応残金にはまだ余裕はあるが結構するものだな。

 まだ防具や道具も見たいから一先ず長剣だけにしておくことにした。


 「ありがとうございました!」


 武器屋をあとにして次の店へ向かうことにした。


 「次に近いのは道具屋だが防具を先にみておくか」

 

 値段の高そうな方から見たかったのでありがたい。

 防具屋へ向かうため大通りを歩いていると細い脇道から小さい声ではあるが悲鳴が聞こえてきた。

 俺は気になりゼントの案内を無視して声が聞こえた路地に入って行った。

 

 「ダイキ! そっちじゃないぞ!」


 路地に入って行った俺に気付いたゼントが呼び止めてきた。


 「今、こっちの方から悲鳴のような声が聞こえたんだ」

 「悲鳴? なにも聞こえなかったけどな。こっちはなにもないぞ?」


 そのまま一本道の路地を進んでいくと、その先に2人の人影が見えた。

 不思議に思ったゼントが2人に声をかける。


 「こんな何もない路地裏に人? おい、お前らこんな所でなにしてるんだ? 迷ったのか?」


 すると、こちらに気付いたそのうちの1人が助けを求めてきた。


 「違います! この人に襲われてるんです! 助けてください!」


 薄暗くてわからなかったが、声の主は女性だった。

 俺はもしやと思い瞳力をオンにしてもう1人を見ると、思った通り黒いモヤのようなものが見えた。

 その瞬間女性に大きな声で逃げるよう促した。


 「そのままこっちに向かって走って!」


 女性はこちらに向かって全力で走り出したが、悪魔憑き(デーマー)はその女性を捕らえようとしていた。

 俺は思いっきり地面を蹴り、こちらに向かって走ってくる女性の横を一瞬で通り過ぎて悪魔憑き(デーマー)を蹴り飛ばした。

 思いっきり蹴り飛ばしたので相手は突き当たりの壁にめり込むようにぶつかった。


 「ゼント! その女性守れ!」


 これで終わらないと判断した俺はゼントに駆け寄った女性を守るよう指示した。

 崩れた壁から出てきたのは短剣を持った男だった。

 武器を持った男と対峙した瞬間、俺の頭の中に考えたくなかったことが浮かんできた。


 


 

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