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ジャンスの教会2


 翌朝になり目覚ましもなく目を覚ます。

 隣の部屋の悪魔2匹を退治した後はグッスリと眠れてよかった。

 部屋にはこちらの世界の服が用意されていてそれに着替える。

 しばらくすると部屋のドアをノックされ朝食の準備が整ったとの事で食堂へ向かい昨日と同じ席につく。

 テーブルの上にはスクランブルエッグのようなものとパンとバターが用意されていた。

 少し遅れてゼントが隣の席についたので顔を見るとボッコボコなのにテッカテカだった。


 コイツ昨日あのあと続きしやがったな……

 どんな根性、いや性欲してやがんだ……


 昨日と同じように祈りを捧げてから食事が始まる。

 隣の年配のシスターがゼントの顔を見て質問する。


 「あら? ゼントさんのお顔がボコボコのテカテカですが何かあったんですか?」


 普通なら困惑するどストレートな質問に笑いながらゼントは答える。


 「いえいえ! 特になにもなかったですよ! ぐっすり眠れました!」


 この上ない嘘つきだ。

 悪魔に取り憑かれたのも深く頷ける。


 ◇◆◇◆


 食事が終わり部屋に戻り少し考え事をする。


 ゼントはともかく俺はずっとここにいる訳にはいかないが、これから何をすればいいのかもわからない。

 ハルカさんにはアリアを訪ねるよう言われたからアリアに聞けばいいか。

 

 食堂に戻りそこにいるシスターにアリアの部屋を聞きアリアの部屋を訪れる。


 コンコンーー


 「どうぞ」

 

 ガチャーー


 ドアを開け部屋を見渡すと、木のベッドに木の机だけがある俺やゼントがいる部屋となんら変わり映えのない部屋だった。

 

 「すいません、ちょっと伺いたいことがあって」

 「昨晩のことですか? あれはゼントさんから……」


 頬に手を当て照れるような仕草で言った。


 「ち・が・い・ま・す! 今後のことです!」

 「あ、そちらでしたか。未経験の方からしたら興味が湧いたのかと思いました。くすくす」

 「け、経験ぐらいあるし! 超ある! ってそんな事じゃないんですよ! ずっとこの教会にいるわけにもいかないのでこれから何をすればいいか聞きたくて。ハルカさんにはアリアさんを訪ねるようにしか言われてないので何か知ってますか?」

 

 今後のことをたずねると空気を一変させアリアさんは真面目な顔で色々と説明してくれた。

 今のこの世界の不安定な情勢のこと。

 その原因として有力者に悪魔が憑いている恐れがあるということ。

 

 「あと、そのネックレスですがあちらの世界からお金を運んでくれて貯まってますね。ネックレスを握りしめて【パウンド】と心の中で唱えてみてください」


 言われるがままにネックレスを握りしめて心の中で唱えた。


 『パウンド』


 ネックレスが光り目の前に金貨と銀貨が数枚落ちてきた。


 「おお! これは?」

 「これはあなたの給金ですね」


 要するに時給¥2000は支払われてるということか。

 でもなぜ金貨?


 「通貨はこちらの世界に両替されて出てきてますね。あとは出来高もありますので悪魔を祓った時にも貯まります」


 あ、それでゼントの悪魔を退治した時に銀貨がでてきたのか。

 どうやら価値的には銀貨が一枚千円程度で金貨は一枚一万円程度の価値があるらしい。


 「そのネックレスは今のように魔法を使うサポートをする道具です。ハルカの方からは説明なかったですか?」

 「ええ。一切説明なんてせず帰っていきましたね。」

 「あらあら、ハルカは抜けてる所がありますからね」

 「抜けてるとこしか見てないですけどね」


 どうやら他にも魔法が使えるらしく、いくつか簡単な魔法をアリアさんに教えてもらった。

 


 ◇◆◇◆◇◆


 どうやらこの世界は7つの国から成り立っているが、今は各国同士が同盟を結んだり攻撃をしたりして戦争を仕掛け合っている。

 戦争の末、敵国を征服して世界を1つの国が治める動きをしているようだ。

 ただ、今俺がいるジャンス国は永世中立国を称しているため他国と休戦協定こそ結ぶが、どこの国とも同盟は組まず攻撃も仕掛けないらしい。

 それでも仕掛けられる攻撃から国を守るため、国直轄の自衛団が存在するという。

 その自衛団が最近おかしな動きをしており、陰で他国に協力し敵国に対しての侵略行為を侵していたり、国を守る立場にも関わらずジャンス国の要人の暗殺を軽々と許したりしているらしい。

 そしてその自衛団を管理したり他国との交渉を担っているのが、王族付き貴族の1人であるガザフ公爵。

 アリアはガザフ公爵の周囲に悪魔憑きの存在を疑っていて俺にガザフ公爵の部下として働く推薦状を持たせるという。



 「アリアはなんで王族や貴族とも繋がりがあってそんな推薦状を書けるんだ?」

 「私は元々王族の出身でしたので」

 「ふぁ!?元王族がなんでこんな教会でシスターしてんの!?」

 「それは教えられませんが理由のひとつとしては……」

 「う、うん……」

 「自由にいろんな男性とーー」

 「あ、やっぱその理由いらない」



 ◇◆◇◆◇◆



 すぐにでも出発したいがガザフ公爵の部下として働くにはそこそこの剣か魔法の腕が必要らしく、しばらくは街にある修練場で腕を磨くよう提案された。

 それまでは教会で世話をしてくれるという。

 俺は早速、アリアと修練場へ向かうが何故かゼントもついてきた。

 

 「ずっと教会にいても暇だしな。修練場なら付き合ってやるよ。オマエがやられてたら助けてやる」

 

 アリアがいるからついてきただけだろう。

 だが確かにゼントは腐っても狩人のお頭という立場だ。

 そこそこ腕は立つんだろう。

 


 修練場に到着して中を見回していると筋肉質で俺やゼントよりも大きな身体の男に話しかけられた。


 「こんなひょろひょろした奴らが何の用だ! ここは剣の腕を磨く場所だとわかって来たのか!?」

 

 あまりの勢いと威圧に圧倒されて口をパクパクさせていると横からアリアがスッとその男の腕に胸を押し付けながら奥にあるドアの方へ向かって歩いていった。

 まさかとは思っていたが、しばらくすると先程の男がテカテカしながら笑顔で戻ってきた。


 「剣の修練を積みたいとは見所のある若者たちだ! 俺たちでよければ練習に付き合おう!」



 あ、ヤッたな。これ。

 アリアもすっげぇテカテカしてるし満足そうな顔してやがる。

 実はサキュバスか、この女。



 「では早速だが俺から剣を交えさせてもらおう。練習だと思って甘くみないことだな……」


 ゼントが壁にかけてある木剣に手をかけながら言った。

 どうやらゼント氏はアリアを目の前で寝取られてキレてるだけのようだ。

 昨晩自分と楽しんでいた相手が目の前で別の男とテカテカしてるんだから無理もない。


 『はじめ!!』

 「ウォラアアアアアア!!!!」


 勢いよく発せられた開戦の合図と共にゼントは全力で先程兄弟になった弟目掛けて飛び込んでいった。

 練習とは思えないほどの凄い殺気だ。

 

 『やめ!!』


 終戦の合図が聞こえた頃、俺の足元には飛んできてボコボコになったゼントが転がっていた。

 コレは個人的な理由があったとはいえ同じようにはなりたくない。

 

 次は俺の番か……

 練習しないとガザフの部下に推薦もしてもらえないみたいだが組み手以外の練習をさせてほしい……


 弱腰になっていると見られたのかゼントをボコった筋肉質な男が笑いながら問いかけてきた。


 「おい、準備はいいか? そこで転がってる男よりはましなんだろうな?」


 俺も男だ。

 ここまで挑発されて黙ってるわけにはいかない。


 「あの、できればもう少し弱い人からやりたいです」


 俺は恥を忍んでお願いした。

 

 「えぇぇ…… 俺より弱い奴なら山ほどいるが…… 男としてそれでいいのか?」

 「はい、構いません。コイツみたいになりたくないので」


 足元に転がるゼントを指差しながら言った。

 男としてどうかより負け戦に立ち向かうバカにはなりたくない。

 その為ならどんな罵倒も甘んじて受けようじゃないか。


 「さぁ! 弱そうな順番からかかってこい!」

 

 俺は倒れているゼントから木剣を取り構えた。

 目の前には俺と同じぐらいの体型の男が木剣を持ち構えたが周りからの目線は冷たくアリアですら相手を応援しているようにも思えた。



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