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初めての悪魔退治

 とりあえず言われた通りここから見える街に行く為に山道を下ることにする。

 見える街と言ってもそこそこ遠い場所にある。

 急に荷物も増えたし剣を収める鞘もない。

 ダラダラと歩いていると周りの草むらからゴソゴソと音がしてきた。

 

 動物かなにかだろう。と気にせず行こうとした瞬間、見るからに賊のような人間が数名俺の目の前に飛び出てきた。


 「おい! 殺されたくなければ食糧と金目の物置いていけ! 大人しく従えば命だけは助けてやる!」


 山賊お約束のようなセリフをこちらにぶつけてくる。

 が、残念ながら食糧もなければ金目の物も持ち合わせていない。

 可哀想な奴だな。とか言って逆に食糧わけてくれたりしないかな……


 「すいません、僕も今ここに来たばかりで食糧も金目の物もないんです」

 

 なんとか許してもらおうと素直に伝えた。


 「嘘つけ! 食糧はなさそうだが手に立派な剣を持っているじゃないか! それを置いていけ。あと、そのキラキラ光ってるアクセサリーと鏡も!」


 えー、実質全部やん……

 これしか所持品ないのに奪われたら洒落にならん。

 どうにか許してもらいたい……

 ん?


 俺の前に立つ5人に目をやるとリーダー格の1人の後ろにぼんやりと重なるよう黒い人影がみえる。

 

 これが左眼の力か。

 それであいつが悪魔に取り憑かれてるって事なのか。

 殺人はしたくないし、どうにかして鏡に写して悪魔だけ取り除かないといけないな。


 「じゃぁとりあえずこの鏡でいいですか?」

 

 鏡を上向きにして手下の男に差し出した。

 鏡が手下の男からリーダー格の男の手に渡り、覗き込んだ。

 その瞬間


 「ぐあぁぁぁぁぁ!!!!」


 リーダー格の男が苦しみ出し、首元から黒い煙が上がり徐々に化け物の形を形取る。

 恐らく頭だろうと思われる所に2つ光る目のようなものができた。


 「グルルルル……」


 人なのか動物なのかもわからないような形の黒いモヤが唸っている。

 隣にいる賊たちは悲鳴を上げながらも黒いモヤを持っている武器で攻撃し始めた。


 「うわぁぁぁ!!」

 「斬れない!!斬れない!!」

 「なんだこいつ!!」


 剣などで応戦しているが全ての攻撃は化け物をすり抜けていた。

 俺はというとビビって地面にへたり込んでいた。

 黒いモヤが賊の1人を包み込む。

 

 「ぎゃぁぁぁ……」


 中に取り込まれた賊が大声で叫んでいたが、しばらくすると声が聞こえなくなり骨が吐き出された。

 さっき取り込まれた賊の骨で間違いないだろう。

 周りの賊たちは悲鳴を上げながらその場から走って立ち去っていき、その場には意識を失ったリーダー格の男・地面にへたり込んでいる俺・骨。


 街に行けって言われて早速これって無理ゲーじゃね!?

 取り込まれた骨になるってなんなんだこれ!?

 骨になっても俺なら生き返れるとかあんのかな?

 死ぬまでに結婚とかしたかったなぁ。

 そうだな、子供は3人がいいかな。

 海沿いの白い家に住んで休日は大型犬を連れて海辺を散歩するんだ。

 子供が海に入ってしまって濡れたまま家に帰ると奥さんが怒りながらも笑ってて……


 「はっ!!」


 激しめの現実逃避をしていて気付けば目の前に黒いモヤの化け物がきていた。

 足が震えて動けない。

 しかし手を伸ばせば触れるぐらいまで来ている。

 咄嗟に手に持っている剣を振り回す。


 「グォォォォォ!!」


 ふぁ?

 

 どうやら剣先が当たったようだが化け物を見ると切り傷のようなものが付いていた。

 

 賊の剣はすり抜けていたのにこの剣は当たるのか。

 確かお姉さんは

 『人間ごと斬りたい時は剣で斬り倒してください』

 って言っただけで悪魔だけ斬りたい時の説明してなかったよな……

 説明不足!!!!


 こうなったらやる事はひとつ。

 この剣で斬り倒してやる。


 傷がつき苦しむ化け物に向かい無我夢中で剣を叩き込み頭から真っ二つに斬った。


 「ギャァァァァァァ!!!!」


 酷い叫び声と共に黒いモヤの化け物は蒸発するように消えてしまった。

 

 はぁはぁはぁ……

 これで倒せたのか?

 倒せたっぽいよな。

 消えてったし。


 そんなことを考えていると首元のアクセサリーが光り目の前に銀貨が数枚落ちてきた。


 なにこれ?

 この世界のお金か?

 とりあえず取っとこ。


 一息ついていると気を失っていたリーダー格の男が意識を取り戻した。


 「ん…… ここはどこだ……? オマエは?」

 「ここはどこかわからないけど、アンタが部下を引き連れて俺を追い剥ぎしようとしてーー」


 俺はここであったことを全て説明した。

 

 「確かに話しを聞くとうっすらとだが記憶はある。夢で見た程度の記憶だが。オマエには悪いことをした。元々俺たちは賊じゃなくて山の狩人だったんだ。だがある日から急に人間を襲うようになったんだ。それは俺の命令だが自分でもなんでそんな命令をしたのかはわからない……」


 どうやら悪魔に取り憑かれると本人の意思とは関係なく人間を襲いたく衝動に駆られるようだな。

 それに意識もほとんど悪魔にもっていかれてる様子だ。

 

 「アンタは悪魔に取り憑かれてた。アンタから出てきてそこの仲間を骨にしたのは黒いモヤだが目があり俺が人から聞いたことがある悪魔そのものだったよ。ここからは俺の予想だけど悪魔に取り憑かれると人間を襲いたくなるみたいだ。それで部下たちにもアンタを操って命令したんだと思う」


 予想も含め説明したが、聞いていた話しと実際に見たことからほぼ間違いなく事実だろう。


 「悪魔か…… にわかには信じがたい話しだが俺が気を失ったあとの話しがオマエの言う通りならそうかもしれんな」


 どうやら気を失った後の事は記憶にないようだ。

 そんな話しをしていると、さっき逃げた部下たちが戻ってきた。


 「カシラー! 大丈夫ですか!?」

 「おう、オマエら。大丈夫だ。しかし1人は死んでしまった……」

 「あっしらもそれは見てました…… 仲間を守りきれずすいませんでした!」

 「俺が気を失ったあとに、何があった?」


 部下も俺と同じ話しを説明していた。

 

 「なるほどな。てことはやっぱりコイツの言う事に間違いなさそうだな」

 

 信用のある部下の話しもあり説明を受け入れてくれた。


 「俺はこの狩人の頭目ゼントだ。アンタ名前は?」

 「俺は真島大樹。ダイキでいい」

 「ダイキはなんだってそんな変な格好をしてるんだ? それにコイツらが戦えなかった悪魔とやらを斬り倒したのはどういう事だ?」

 

 当然ながら服装は俺とここの世界の人間とは全然違う。

 話しを聞くと、この世界の人間は騎士なら鎧を着ていたり村人や商人の一般人はもっと単調な布や毛皮の服を着ているそう。

 実際この狩人たちも毛皮の服を着ている。


 ゼントが信用できる人間かはわからないが俺自身誰かに知ってほしいという気持ちもあり、ゼントだけを呼んで現行世界の話しから全て話した。


 「おいおい、その話しを俺に信じろってか……」

 

 当然の反応だと思う。

 俺でも現状信じきれていない部分もあるくらいだ。


 「しかし普通なら信じられん悪魔の話しを聞いたあとだからな。信じてやるよ。それで、今からどうすんだ?」

 「とりあえずはあの街の教会に行ってアリアという人に会うよう言われているから街まで向かうよ。早く行ける道とかあれば教えてほしい」

 「ジャンスの下町か。それなら俺が一緒に連れてってやるよ。ダイキには迷惑かけたした」

 

 ゼントが信用できるかどうかは別として良い奴である事は認識した。

 俺が女性でここにいたら身体を捧げる自信もあるほどにイケメン発言してきた。


 「まじで!? それは助かる! どうやって山を下っていくのかもわからなかったから」

 「おいおい、現行世界ってのは山もねえのか?はははは」


 いえ、ワタクシが無知で非力な単なる大学生が故に山の歩き方も知らない愚鈍な男なのです……

 しかしここで自分の価値を落とす必要はない。


 「うん、山、ないよ」


 軽く嘘をついた。


 ゼントはそのまま部下に自分たちの家に帰るよう伝える。


 「これ、使いな」


 皮でできた袋のような物を投げてきた。


 「これは?」

 「いくらなんでも街中で剣を抜いた状態で歩くのは攻撃的すぎんだろ。それにしまって腰に着けておきな」

 「鞘か、ありがとう」


 剣をしまうとゼントは笑いながら山道を街につくまで案内してくれた。


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