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少年少女遊戯  作者: あーの
10/14

平常のような異常少年と強気のような弱気少女

相談があるんだけど、と突然腕を引かれ人気のない校舎裏の階段に連れ込まれた。

そう言った少女は僕の恋人――だなんて勿論そんなわけもなく、ましてや友達でも知人ですらない。

僕の記憶が正しければ彼女とは一応初対面のはずである。

とはいえ彼女が学校の有名人であることや若菜と仲が良いのは知っているので、認識程度はしているが。

しかしそんな彼女が僕に一体何の相談があるのか皆目見当もつくはずがなく、訝しげに相手の様子を窺った。



それで何の用かな、僕に相談だって言ってたよね

ていうか僕の記憶違いじゃなかったら君とは話したことなかったと思うんだけど

あ 申し訳ないけど僕は一方的に知ってるよ、有名人だからね君

でも僕のことなんてどこで知ったのかと思って疑問でさ


あれだけ目を引く人達と仲良くしといて自分が有名人の自覚がないなんて正気……?

大概あんたも……先輩も色んな人に知られてると思いますよ

あとは単純にあの若菜と仲良いんでしょ

話してるとよく先輩の名前出てきますよ、意外と不法侵入とかも楽しんでるとか


ああもうあいつ余計なことを……僕は品行方正な真面目な先輩だからね、覚えといて

ていうかわざわざ頑張って敬語使ってくれなくてもいいよ、苦手なんだろ?

斯く言う僕も敬語が苦手でね、不敬罪に問われたことがあるくらいなんだ

だから君もそんな僕相手に無理しなくていいよ


不敬罪って……ふふ なにそれ、あんた変な冗談言うね

でもそう言うなら遠慮なく敬語使うのやめさせてもらお

あー 普段しないことしようとすると疲れるわ

やっぱ慣れないことはするべきじゃないってことがわかったよね


君を遠目には見かけたことがあるけど、先生とかにもそんな感じだよね

それなのにわざわざ僕に気を使ってまで相談したいことって何?

よっぽど重要なことみたいだけど――ああ もしかして若菜のことだったりする?

ぼら 君と僕の共通点なんてそれくらいしかないだろ


なっ んっ ま、まあ そうなんだけど……

ほら さっきも言ったけどあいつと仲良いんでしょ

だからあたしの知らないことも知ってるんじゃないかって――あっ 別に深い意味はないんだから!

数少ないあたしに良くしてくれる人でっ 色々お礼とか!?そういうのもしたくって!


あーうん、はいはい、わかったわかった君が若菜のことを好きなことはよーくわかった

よくそんな分かり易くて本人にバレずここまでやってきたね?

おっと――無言で殴り掛かってこないでよ、危ないなあ

そんな顔赤くしてしどろもどろで……どう考えてもそうでしょ


ううう うるさい!そうだよああそうだよっ!

でもあの鈍感の極みみたいなやつが気付くわけないでしょ!

もう……早速あんたに相談しようと思ったことを後悔してるわ……

いっそこのままあんたの記憶を消してしまおうか……


拳を握るな握るな、ちゃんと若菜には黙っておいてやるから

それに見ず知らずの先輩にまでプライドかなぐり捨ててまで相談してきてくれたんだから手伝ってあげるよ

しかし協力するっても僕は何をすればいいの?

なにせ僕自身あんまり恋愛経験ないし、よくわかってないんだよね


こんな彼女いそうなのにいないわけ?

恋愛初心者と恋愛初心者が集まってもただのポンコツの集まりじゃん

くそ あんた経験豊富そうだから信頼できないけど仕方なく頼ったのに……

あ あーほらあんたってちょっと胡散臭い雰囲気あるじゃん?

そういうの苦手なんだよね、これ頼む相手に失礼だろうけど


ああ 別に大丈夫だよ、従兄に散々言われて慣れてるし

君みたいな正直な人のほうが若菜には印象良いと思うよ

だからそのままでいいんじゃないかな――どうも勘が良いみたいですしね

ああ なんでもないよ、大丈夫若菜の話の続きをしよう


そう?何にもないならいいけど

あたしってさ、ちょっと話したらわかると思うんだけど口も態度も悪いじゃん

だからかな、みんなから恋愛に興味なさそうって思われるんだよね

実際昔にそう言われたこともあるし


ああ それはわからなくもないかもね

完全な偏見だけど、男子とも友達感覚で関わってそうなイメージは確かにあるし

相手に関わらず物怖じしないし態度も変えないからそう見えるのかな

でもまあ若菜に限ってそんなイメージで相手のこと決めつけたりはしないと思うけどね


なんでそんなこと言いきれんのよ

確かになんかちょっと人とは違った感性で生きてんなあとは思うけど

あたしみたいののこともちゃんと女の子扱いしてくれるし……かっ 可愛いっ とか、そういうのも言ってくれる、けど……

でもあいつなら――誰に対してでも平等にそんなこと言いそうじゃん


まあ確かにあいつの言葉に特別感はないかもしれないな

でも君は好きっていうわりに若菜のことあんまり信用してないよね

だってそうだろ、まるで嘘でお世辞で褒めてくれてるみたいな言い方して

あいつは嘘を吐くような人間ではないから、少なくとも君のことは気に入ってるし可愛いとも思ってるんだよ


でも!でもあいつの周りにはもっと可愛くて完璧で仲良い人だっているじゃん!

ほら えーっと 例えば!あっ副会長とか!

あの人こそ若菜と仲良くてちっちゃくて女の子らしくて――ってなんで笑うのよ!


いやまさかそこで誠來の名前が出てくるとは思わなくて……あは 悪気はないんだ

でもそれすごい勘違いだよ

だって若菜、誠來のこと可愛いなんて言ったことないし何ならだいぶ鬱陶しいと思ってるだろうし

まああそこの場合それはお互い様だろうけど


~~ッ!そうじゃなくっても!

若菜って誰とも仲良くてッ その中に可愛い子なんてたくさんいるじゃん!

そんないろんな人の中の一人っていうだけでしょ――ってまた笑う!

もういい加減にして、こうやって悩んでるの馬鹿にしてんでしょ蹴るわよ!


怖いなあ、人の恋路に首を突っ込むのは間違いだったかな――って嘘だよ?

だからさっきも言ったけど若菜は無鉄砲だけど無責任な人間ではないんだよね

君って僕を使って体よく若菜を諦めようとしてない?――うん、図星の顔だ

流石にわかるよ、いくら若菜をフォローしても君全然聞く気ないから


そんなッ!……こと、ないって言ったら……嘘だけど……

別にそれは諦めたいとかじゃなくて、そう、変に期待したくないだけ

逃げ?――うん、そう そうかもね、自分が傷つきたくないだけなのかも

自分に自信があるわけじゃないし、振られたときにちゃんと諦める覚悟をしたいだけ

……なんか悪い?


いやあ 何一つ悪くなんてないさ、僕は良いと思うよ

人間誰しも好んで傷つきたいだなんて思っていないさ、素晴らしい感情だと思うよ

しかしそんな指摘されて痛いことに対しても正直に言ってしまえるその素直さは美徳と誇っていいんじゃないか?

……それにしても時間は大丈夫?もうすぐ予鈴だけど


うっそもうそんな時間!?あんたがだらだら話すから!

ていうかアドバイスを聞きに来たはずなのに、あたしが痛くもない腹探られただけじゃん

あんたが美徳だっていう素直さを盾にして言わせてもらうわ

あたしが傷つかないように若菜に意識してもらえるようなアドバイス、先輩として一つくらいしなさい


アドバイスをもらう側とは、更に言うと後輩とは思えないくらい上から目線だね

まあでも そうだなあ、今までの話を総合して僕が出来るアドバイスはひとつかな

告白しておいで、若菜は君のこときっと好きだと思うからさ



どこがさっきまでの話よ、全然嚙み合ってないじゃない!と、ヒステリックに叫ぶ彼女を見ながら肩をすくめる。

そのまま予鈴が鳴ったことを理由にして、逃げるように教室の方へ歩を進める。

追いかけてくることはないが後ろから聞こえる可愛らしい暴言を聞き流しながら、彼女と教室の方向が逆で良かったと少し思う。

ああ 折角ここまできたのに――煩わしいのはごめんだ。


真如理と翠雨静の会話。

「ラバーリーフレイン」

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