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第玖話 急転

前回のあらすじ

切り裂き魔と交戦した

 

 あの後、夜に出歩いても切り裂き魔と遭遇することはなかった。

 あの日は偶々運悪く遭遇してしまったらしい。


 そして初遭遇から半月が経った今日。

 やることもあらかた終わり、ミオと居間でのんびりとしていると、呼び鈴が鳴らされた。


「わたしが出るよ」


 立ち上がりかけたけど、ミオがそう言うのであたしは腰を降ろす。

 そしてミオはぱたぱたと、玄関へと向かう。


「は〜い、どちら様……」


 ミオの声が不自然に途切れ、あたしは気になって玄関へと向かう。

 すると―――。


 ミオを肩に担ぐ、切り裂き魔の姿があった。


「……っ! あなた!」

「《ウインドバースト》!!」


 切り裂き魔から風属性超級魔法が放たれ、家の一部が吹き飛ばされる。

 その突風に煽られ、あたしは廊下をゴロゴロと転がっていく。


「なんだいなんだい!? いったいどうし……ええっ!?!!」


 自室から出てきたアサギさんが、目の前の惨状を目の当たりにして驚きの声を上げる。

 あたしは身体を起こすと、近くにクナイで縫い止められた紙があることに気付く。


 それを手に取り、書かれている内容を読む。

 まあ、予想はしてたことだけど、「ミオは預かった。返して欲しくば目的の場所までやって来い」といったような内容だった。


 その紙をくしゃっと握り潰し、あたしは立ち上がる。


「……アサギさん。誘拐されたミオを取り戻して来ます。あと、家の弁償もします」

「あ、ちょっと!」


 アサギさんの引き留める声が聞こえるけど、それを無視してあたしは目的地へと全速力で向かった―――。




 ◇◇◇◇◇




「う〜ん? マヤちゃんは妖族って言ってなかったっけ?」


 ぼくの目の前から立ち去ったマヤちゃんの姿を見て、腕を組み首を傾げる。

 あの種族は、確か……。


 マヤちゃんの本当の種族を明かすのは後にしよう。

 それよりも今は……。


「……弁償するって言ってたけど、コレは……」


 玄関と居間、それと台所の一部が竜巻にでも遭遇したのかってくらいに、見るも無惨に崩壊していた。

 不幸中の幸いなのは、ぼくの研究成果が保管されている部屋が被害に逢わなかったことくらいか。


「……まあ、出来ることはやっておこうか」


 そう呟き、片付けられそうな廃材を一ヶ所に集め始めた―――。




 ◇◇◇◇◇




 ガシャンと、ミオが檻の中へと入れられる。

 彼女を誘拐した張本人である切り裂き魔は、自らの主の方へと向き直る。


 切り裂き魔の主は、長く伸ばした薄い茶色の髪を無造作に纏め上げ、サクラ皇国では珍しいワイシャツとスラックスを身に着けていた。

 そしてその上から白衣を羽織り、赤縁の眼鏡を掛けていた。


「言われた通り、連れてきましたよ」

「ご苦労だったね、レイ」


 主に労われ、切り裂き魔―レイは顔をほころばせる。

 すると意識を失っていたミオが、目を覚ます。


「う、ん……」

「おや、お目覚めのようだね」


 主がミオの方に目を向けると、ミオは怯えたように身を竦める。


「あ……あなた達はいったい誰何ですか!? それにここは何処!?」

「ふむ……そうだね。まずは自己紹介といこうか」


 そう言うと、つかつかとミオのいる檻の方へと近付く。

 そしてミオを見下ろす形で、主は取って付けたような笑みを浮かべながら自己紹介をする。


「私の名はアラハバキ。ここである研究をしている外道だよ。そしてここは私の数ある研究所の一つだ」

「ある、研究……?」

「ああ。私がしているのは、人類や魔族……『勇者』や『魔王』すらも凌駕する人造人間の研究・製造。ここにいるレイは、そのプロトタイプ……試作品だ。そして……」


 アラハバキは腰を折り曲げ、ミオと視線を合わせる。


「それはキミも同じだ。製造番号三十番。ワイバーンエンプレスの持つ魔物誘引能力と、ナイトメアの持つ魔物変状能力、それと素体となるエルフ族の血が完璧に交ざり合った、私の研究所から逃げ出した、私の最高傑作」






まさかのミオの正体です。




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