第弐拾陸話 再会
前回のあらすじ
ニコとニナがアラハバキの毒牙に掛かった
いくつか情報を共有した後、ミアンちゃんに紹介された宿屋へと向かう。
その宿屋はゲンブ島のみならず、サクラ皇国内でも五指に入るほど有名な温泉宿だった。
そんな所、あたしみたいな庶民には手が出せそうもないけど、宿泊費等はあちらが持ってくれるらしい。至れり尽くせりとはこの事だろう。
だからあたしは、遠慮することなくその温泉宿の敷居を跨いだ―――。
◇◇◇◇◇
あたし達に宛がわれた客室はそれなりに広く、部屋の窓からは手入れの行き届いた庭園を眺める事が出来た。
レイとミオも、初めての場所で興奮しているようだった。
「ちょっと出掛けてくるけど、大人しく留守番しててね?」
「「は〜い」」
二人の元気な返事を聞き、あたしは部屋を出た―――。
◇◇◇◇◇
宿の中を、フラフラとさまよい歩く。
別に徘徊してるわけじゃなく、宿の間取りを確認してるだけだった。
すると土産物屋で、懐かしい顔を見つけた。
「あれ……? ユキナ?」
「うん?」
名前を呼ぶと、その女性はあたしの方を振り向く。
ユキナは新雪のような真っ白な長い髪をしていて、瞳は蒼穹を思わせる綺麗な青色だった。
そして肌も色白ではあるけれど、病的なまでに白いわけじゃなかった。
それと、ユキナは見た目通り(?)雪女が基となっている妖族で、だからなのか得意属性が氷属性で、今では珍しい氷属性超級魔法の使い手でもあった。
ユキナはあたしと同じ時期に冒険者になった少女で、同期と言っても過言じゃない間柄だった。
一時期は、パーティーを組んでいた事もあった。
「あれ? マヤじゃない、久しぶり! 元気にしてた?」
「うん、それなりに。そっちは?」
「わたし? わたしは……ちょっと、ね……」
何とも歯切れの悪い言い方だった。
ユキナにもユキナなりの事情はあるだろうから、これ以上の詮索はしなかった。
「それで……何でここにいるの?」
「ソロモニアのお姫様から依頼を受けてね。ビャッコ島からわざわざゲンブ島まで出向いたってわけ」
「半分引退してるようなモノなのに、一国のお姫様から依頼が来るなんて……流石は『剣聖』様って言った所かしら?」
「……サクラ皇国の幼い皇族方の教育係を任命されるまでに至った『氷姫』様に言われてもね」
「むっ……今は仕事の事を忘れようとしたのに……」
そう言うと、ユキナは暗い表情を浮かべる。
皇族方のおわす御所……と言うか宮内は、権謀術数渦巻く魔の巣窟とも言われているから、一冒険者に過ぎないユキナも心労が溜まっているのだろう。
なら、ここにいるのは……慰安旅行か何かかな?
そんな事を考えていると、ユキナがあたしの方に一歩近付く。
「こんな所で立ち話も何だし、マヤが泊まってる部屋まで行ってもいい?」
「……まあ、いいけど……」
土産物屋でいくつかつまめる物を見繕い、それらを買ってからあたしの部屋へと向かった―――。
◇◇◇◇◇
部屋に戻ると、レイとミオは手を繋ぎながら仲良くお昼寝をしていた。
船の中じゃ満足に眠れていないようだったから、このままにしておこう。
そう思いながらツマミを机の上に置いて、押し入れの中から毛布を取り出して二人に掛けてあげる。
すると、ユキナが声を掛けてくる。
「その二人は?」
「この娘達はあたしの……」
「え? もしかして娘? しかも二人も? おめでとうございます」
「違う違う! この二人はあたしの妹よ! 血は繋がってないけど……」
ユキナの言葉を慌てて否定しながらそう答えると、ユキナは少し引いたような顔をする。
「え……? あまりの可愛さにさらってきたの? それはちょっと……人としてどうかと思うわよ?」
「さらってきたわけでもないわよ! どちらかと言うと、保護みたいな形よ!」
「でしょうね。ミオにそんな度胸があるとは思えないもの」
しれっとそう答えると、ユキナはさっさと座布団の上に腰掛けた。
昔と変わらぬやり取りに内心安堵感を感じながら、あたしもユキナの向かいに腰を下ろした―――。
ちなみに現時点では、マヤは超級魔法は使えません。
人魔シリーズの主人公ズの中でも、珍しい部類かと。
評価、ブックマークをしていただけると嬉しいです。




